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米国政府がが、国威をかけ「飛び火」してきた新型コロナウイルスへの研究体制を整えた。世界大戦並みの「挙国体制」をつくって、早期の成果を目指している。「世界各国政府は、新型コロナウイルスと戦い、流行を抑制しようと奮闘している。こうした努力は重要だが、世界が最も期待しているのは、民間のイノベーションだ。最先端の診断検査と治療方法の開発が進んでおり、政府はこうした流れを支援すべきだ」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月30日付社説)という主張に答えるものだ。

 

『大紀元』(3月31日付)は、「米政府、新型ウイルス対策のためにスパコン共同企業体を立ち上げ」と題する記事を掲載した。

 

米国政府は3月23日、「COVID-19ハイパフォーマンス・コンピューティング・コンソーシアム」の発足を発表した。これにより、研究者は米国内のスーパーコンピュータへアクセスし、新型ウイルスとの戦いにおいて科学的発見のペースを大幅に上げることができるようになった。

 

声明によると、この新しいコンソーシアム(共同企業体)は、ホワイトハウス、米エネルギー省、IBMが主導しており、マイクロソフトやグーグルなどのほか、NASAや国立科学財団などの連邦機関も参加している。新型ウイルス研究のため、無料のコンピューティング時間と機器を提供しているという。

 

(1)「米国の最高技術責任者 (US CTO)であるマイケル・クラツィオス氏は、「アメリカはCOVID-19(新型コロナウイルス)と戦うために団結しています。つまり、治療とワクチン開発の科学的研究を迅速に進めるために、世界レベルのスーパーコンピュータをフルに活用するということです。我々は、トランプ政権の全米対応の一環として連邦政府に参加している民間部門及び学術界のリーダーに感謝します」と述べた。研究者は、COVID-19関連の研究提案書をオンラインポータルによってコンソーシアムに提出することができる。その後、パートナー機関のコンピューティング機器が割り当てられる。最高レベルの科学者とコンピュータ研究者で構成される専門委員会が提案者と協力して、最も即効性があるプロジェクトを迅速に評価し、強力なコンピュータが割り当てられる」

 

この方式は、かねてから最も効果的な研究方式として推奨されている。研究者が、単独で研究を進めるより、コラボすることで数倍の成果が得られるとされている。「最高レベルの科学者とコンピュータ研究者で構成される専門委員会が提案者と協力」という形で、研究を促進する。不幸にも、新型コロナ感染者が増加したことで研究対象が増えているので、これが新薬開発のテコになる。かつて、WHO(世界保健機関)事務局長が、「世界に蔓延すれば新薬などが開発される」と発言していた。今、そういう状況が生まれてきた。

 

(2)「コンソーシアムを通じて利用できる洗練されたコンピューティングシステムは、バイオインフォマティクス、疫学、分子モデリングに関連する膨大な計算を処理し、ウイルスがどのように動き、どのような脆弱性を有するかを正確にシミュレーションすることができる。これにより、それほど強力でないコンピュータや手作業で計算するのに数週間から数ヶ月かかっていた新型ウイルスに関する複雑な問題を、数時間から数日で理解できるようになる。合計16台のスーパーコンピュータが使用され、プログラム命令を読み込んで実行する77万5000個のCPU(中央処理装置)コアと、CPUと連携して大量のデータを含む計算を高速化する3万4000個のGPU(グラフィックス処理装置)を備えている」

 

このパラグラフを読めば、米国が文字通り、「世界大戦」同様の総力戦で取り組む姿勢が浮かび上がってきた。スパンコンを利用するので、コンピュータや手作業で計算するのに数週間から数ヶ月かかっていた新型ウイルスに関する複雑な問題を、数時間から数日で理解できるようになる。これは、時間との勝負を強いられている新型ウイルス対策の決め手になろう。

 


(3)「IBMによると、テネシー大学とオークリッジ国立研究所の医学研究者たちは、すでに世界最強のSummitスーパーコンピュータを使って8000種類の化合物をスクリーニングし、新型ウイルスの主要な「スパイク」タンパク質に結合する可能性が最も高い化合物を見つけ出したという。その結果、新型ウイルスのヒト細胞への感染能力を弱める可能性のある77種類の有望な化合物を特定することができた

 

スパンコンを使って、8000種の化合物から新型ウイルスに効果がある有望化合物77種類の絞り込みに成功したという。この調子で行けば、成果が期待できるだろうか。

 

喫緊の課題は、無症候キャリア(感染しているが陽性でない者)を早く探し出して隔離することである。これに成功すれば、ひとまず感染者の増加に歯止めをかけられる。そこで、次のような提案が出ている。

 


(4)「
FDA(米食品医薬品局)は、バイオ技術企業バイオメリカの指先採血型血液検査のファストトラック(優先承認)審査をすべきだ。この検査はわずか10分で結果が判明するほか、感染したばかりで無症状であっても感染の有無が分かる。これにより、空港や職場、学校などで、せきや発熱がなくても感染を広げる可能性のあるコロナウイルスのキャリアを特定できる」(ウォール・ストリート・ジャーナル)(3月30日社説)

 

これは、血液抗体を検査する作業である。日本では、横浜市大が開発したので早ければ、今夏にも試薬が登場する予定だ。コロナウイルス感染の検査では、決定版とされている。早く感染拡大を止めないと、新型コロナウイルスの変種出現の機会を増やすリスクが増える。その危険性が現実になってきた。

 

『大紀元』(3月31日付)は、「新型ウイルス、アイスランドで二重感染者が確認 ウイルスが突然変異」と題する記事を掲載した。

 

アイスランドのメディアによると、このほど同国で新型肺炎(COVID-19、新型コロナウイルス)の陽性反応が出た患者が、2つのウイルスに同時に感染したことが確認された。2つ目の菌株は、新型ウイルスが突然変異したものだという。

 

(5)「アイスランド誌『レイキャビク・グレープバイン』電子版は3月24日、レイキャビクに本社を置くバイオ医療品会社、deCODE Geneticsの創設者で最高経営責任者(CEO)のカリ・ステファンソン氏の話を引用して報道した。同社は、アイランドで発見された新型コロナウイルス40株の遺伝子配列を分析した。ステファンソン氏は3月23日、アイスランド国営放送(RÚV)の取材に対して、遺伝子配列の分析から突然変異が見つかったと述べた」

 

新型コロナウイルスで、変種が出てきたのは脅威である。前記の同誌は、「時間が経つにつれ、ウイルスは変異して、感染力を増していく可能性がある」との見方を示した。しかし、神経学者でもあるステファンソン氏は、偶然性を示唆しながら、「変異したウイルスがより致命的であるかもしれない」として研究を続ける必要があるとの見方を示した。ステファンソン氏は、国際データベースにおいて、二重に感染した患者者から採取した検体で突然変異を発見したのは、世界で初めてだとしている。まさに、時間との勝負になってきた。