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FRB(米連邦準備制度理事会)は、各国中央銀行に対して米国債を担保にドルを貸出す制度を始めると発表した。世界的なドル資金不足に対応する措置である。米国債を売却せずとも、一時的にドルを調達できる便宜さが、新興国や発展途上国に安心感を与えそうだ。

 

韓国は安堵感を持って、このニュースに接した国の一つである。現在、米国債保有高が1211億ドル(1月末)であるから、半分程度の貸出を受けられると計算している。先に、米国との為替スワップで600億ドルの資金調達が可能になっている。これで、当面のドル資金対応は出来上がった印象を与える。

 

「セルコリア」の危険性が存在する以上、油断できない状況がつづくと指摘する外国人投資家発言が出てきた。世界的な混乱において、最初に売られるのが韓国の株式や債券であるというのだ。

 

『中央日報』(4月1日付)は、「外国人投資家の韓国売りは続くだろう、押し寄せる2次衝撃に備えを」と題する記事を掲載した。

 

TCKインベストメントのオハド・トポー会長が、本当の危機はまだ始まっていないと警告した。先月30日の中央日報とのメールインタビューでだ。トポー会長は新型コロナウイルスによる影響が前方産業を超え後方産業にも伝わる2次衝撃が近く押し寄せるものと予想した。トポー会長はイスラエル出身の投資家であり企業家だ。世界的投資家であるオークツリーキャピタルのハワード・マークス会長と共同で2012年にTCKインベストメントを設立した。以下は一問一答。



(1)「(質問)
欧米など主要国で超大型景気浮揚策とゼロ金利政策を展開し市場はしばし安定を取り戻したようだ。

(答え)韓国は2カ月以上にわたり新型肺炎と戦った。米国と欧州はこれからが始まりだ。現在、新型肺炎による企業の影響は前方産業(完成品産業)で主に現れている。前方産業を超えて部品や素材を提供する後方産業にまで影響が伝えられるのを『2次的影響』と呼ぶ。ほとんどの国が即時的な影響を防ぐことにだけ集中しているためまだ2次的影響にまで気を遣えずにいる。実体経済の不況がまだ表面化していないため市場もまだこの部分を反映していない。2次的影響がくれば多くの企業が倒産したり流動性危機に陥ることになるだろう。解雇と失業に関するニュースが出始めたのを見ると2次的影響が近く始まるのではないのか心配だ。きょうにでも世界的に良く知られた企業が不渡りを出したというニュースが伝えられるかも知れない。金融市場は大きな衝撃を受けるだろう」。

現状は、世界不況の第一波が現れたに過ぎない。前方産業(完成品)に影響が出ているだけだ。これから、後方産業(部品や素材産業)に影響が出る。これは、2次的な影響である。この段階では、多くの産業で流動性危機が表面化する。ピラミッドに喩えれば、頂点が前方産業である。それ以下は、後方産業でありサービス産業も含まれる。FRBが、米国債を担保にドル貸出に応じるという緊急体制を取ったことの背景を忘れてはいけない。

 

(2)「(質問)2008年の金融危機と比較するなら。
(答え)新型肺炎を迎えた各国政府は実体経済を『シャットダウン』するという措置を断行した。にぎわっていた通りは人の姿がまばらになり工場稼動も中断された。戦時状況と似ている。コロナ問題はこれまでの危機とは明らかに違ったスタイルを帯びている。経済に及ぼす悪影響ははるかに深刻かもしれない。現在のような状況がさらに数カ月持続するなら米国の国内総生産(GDP)は歴史上最も急激な下落を経験することになるだろう。現在の市場の資産価格は今後約6カ月程度の経済活動予測値だけを反映している。最悪の状況にまで備える姿勢が必要に思われる」

これから訪れると予想されている世界不況は、従来型の経済危機や金融危機と状況が異なる。人間が街から消えたという都市封鎖である。戦時中と同じ感覚で捉えるべきだろう。この見解は、私も同じである。戦争は人命を損ねる。新型コロナウイルスも、人命を奪う点で全く同じである。経済活動のストップは、従来型の不況と完全に異なる危機である。

 

(3)「(質問)韓国経済と金融市場は今後どのように動くだろうか。
(答え)2008年の金融危機当時に韓国の株式市場から500億ドル以上の外国人投資資金が離脱した。その時と3点が似ている。第1に、世界的な消費萎縮で特に輸出国の大きな影響が予想される。第2に、サプライチェーン崩壊で韓国のような国が特に大きな打撃を受けかねない。第3に、海外年金基金などグローバル投資家が韓国市場を離脱し韓国株と債券の価格は下方圧力を大きく受けるだろう。外国人は世界的経済危機の中で相対的にリスクが高い資産を先に売ろうとし、韓国株と債券がまさにその対象になる恐れがある。実際に最近、韓国金融市場の変動性はとても高かった。外国人のウォン建て資産売りは続く可能性が大きいようにみられる」

2008年に韓国で起こった点が今後、起こると見られるのは、次の3点である。

第1に、世界的な消費萎縮で特に輸出国の大きな影響が予想される。

第2に、サプライチェーン崩壊で韓国のような国が特に大きな打撃を受けかねない。

第3に、海外年金基金などグローバル投資家が韓国市場を離脱し韓国株と債券の価格は下方圧力を大きく受けるだろう。

 

以上3点についてコメントをつけたい。

第1;韓国の輸出依存度は、工業国では台湾に続いて2位の高さである。

第2:輸出依存度が高いことは、世界のサプライチェーンと深く関わっている。部品や素材の供給を受けるためだ。

第3:世界不況=輸出減少という構図下では、韓国経済のダメージが最も大きい。それゆえ、韓国株式や債券の売却は当然の現象である。

 

韓国経済は、「限界経済」というイメージだ。グローバル経済と言えば、華々しく聞える。だが、国内市場は5000万人という状況で輸出をテコに成長してきた経済である。世界の風向きが台風に変われば、最初にして最大の影響を受ける宿命である。その点の認識がなく、「晴天」を前提に経済運営をしてきた咎めが、一気に表面化する脆弱構造である。その上、反日が専売特許となっている。日本との関係悪化が、従来にない「悪条件」として加わる。