韓国経済を左右する輸出動向に、再び注目が集っている。ウォン相場へ大きく影響するからだ。韓国全経連(日本経団連に相当)は、今年の輸出動向を各業界団体に問い合わせて集計した。それによると、昨年よりも約7%減に止まると言うが、率直に言って「大甘」予想というほかない。
リーマンショック(2008年)の影響が、全面的に出てきた2009年に輸出額は、15.93%も減少した。今年の世界経済は、リーマンショックを上回るというのが定説である。となれば、当時の約16%減をさらに上回る減少率を見込むほかない。SARS(2003年)の時は2004年に30.3%もの増加になっている。MERS(2013年)では、2014年に0.8%減に止まった。この両方の感染症は参考にならない。
韓国の輸出規模は2018年、世界5位である。GDP規模(同11位)に比べて、はるか上位にある。このことは、輸出がさらに増える要素が少ないことを暗示している。2013年以降の輸出総額を見ておきたい。
2013年 6183億ドル
14年 6133億ドル
15年 5430億ドル
16年 5119億ドル
17年 5803億ドル
18年 6254億ドル
以上の推移を見れば、6200億ドル近辺が限界になっている。18年に過去最高の輸出高を記録したのは半導体好況の結果である。半導体市況は、好不況が激しい特色があるので、韓国輸出はほぼ限界に来ていることは間違いない。となれば、輸出が減少するのは不可避であり、韓国全経連の予測は、かなり甘いという印象を拭えない。
『ハンギョレ新聞』(4月5日付)は、「韓国全経連、韓国の15大輸出品目、今年の輸出はマイナス7.8%展望」と題する記事を掲載した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにともなうグローバル経済危機により、今年の韓国の主力輸出品目の輸出が前年比で7.8%減少するとの見通しが出た。
(1)「全国経済人連合会(全経連)は5日、新型コロナ事態が米国・欧州などに広がり、2020年の韓国15大輸出品目の輸出が前年比7.8%減少すると展望されると明らかにした。15大主力輸出品目は、機械・船舶・ディスプレイ・繊維・自動車など輸出上位15業種(2019年全輸出の78.5%)を意味する。今回の調査は、3月25日から3月31日まで15の業種団体別アンケート調査を通じて進行された」
15大主力輸出品目は、機械・船舶・ディスプレイ・繊維・自動車など輸出上位15業種(2019年全輸出の78.5%)である。韓国輸出の約8割のカバーである。各業界は、希望を含めた輸出金額を回答したのであろう。
(2)「業種別に見れば、一般機械の輸出減少が22.5%と予想され最も大きな打撃を受けることが明らかになった。続いて、ディスプレイ(-17.5%)、船舶類(-17.5%)、自動車(-12.5%)、繊維(-12.5%)、家電(-12.0%)、無線通信機器(-11.0%)の順で輸出不振が予想された」
雇用の受け皿になる業種が、いずれも大きな落込みである。解雇者が増えるであろう。
(3)「反面、バイオヘルス分野は、新型コロナウイルスの拡散にともなう医療・健康関連需要の増加で、前年対比輸出が25.8%急増すると展望された。また「社会的距離保ち」により、IT製品の需要増加が予想され、コンピュータと半導体分野の輸出もそれぞれ5%、0.6%増加すると展望された」
下線部分は、コロナ特需であり「在宅勤務」増加が寄与している。
(4)「全経連は、今年韓国主力品目の輸出減少にともなう危機を克服するために、貿易・通商分野における10個の政策課題を政府に建議した。主な建議事項は、韓国政府が各貿易国に対し韓国の企業家に対する入国禁止および制限措置の撤回を要請することと、多者・二者間の自由貿易協定(FTA)推進、日本・欧州・英国など通貨スワップ契約締結地域の拡大などだ」
下線のように、日本・欧州・英国など通貨スワップ契約締結を要請している。いずれも「他人の褌で相撲を取りたい」という他力願望である。なかでも、日本との通貨スワップ協定を望んでいるだろうが、日韓の政治情勢から見て不可能であろう。
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