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米中貿易戦争で、中国のファーウェイ(華為)は、米国からの輸出禁止措置を受けている。だが、1月発売のスマホ新製品は、相変わらず米国製品に依存していることが分かった。中国側は、口では「自主独立」を標榜するが、実態はきわめて困難なことを示している。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(4月1日付)は、「ファーウェイ、禁輸後も米社製部品を使用」と題する記事を掲載した。

 

米政府から事実上の輸出禁止措置を課されている中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が、1月に発表したスマートフォンの最新モデルに米国製品を使用していることが、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙の分解調査で明らかになった。

 

(1)「米政府は20195月にファーウェイに禁輸措置を発動しており、米国企業は商務省から個別に許可を得ない限り同社とは取引できない。126日に公表したスマホの最新シリーズ「P40」は同社が禁輸発動後初めて発売した主力製品となる。ファーウェイはトランプ米大統領から中国政府のスパイと名指しされており、禁輸発動後は米国以外の企業から部品を確保しなければならなかった。特に致命的なのは、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」上で動作するアプリ開発・配信プラットフォームを使用できなくなったことだ」

 

米政府が禁輸相手としたファーウェイが、新製品で米国部品を組み込んでいることが判明した。FTが、スマホの最新シリーズ「P40」の部品分析を依頼した結果である。そのカラクリは、最後のパラグラフで分かるように、世界中の流通網から仕入れた模様だ。この事実が分かった以上、米国政府はそこまで追及の手を広げて、「ファーウェイ退治」に乗出すのか注目される。

 


(2)「FTは最新モデルの「P40プロ」だけでなく、制裁の直前にファーウェイが発売した19年モデル「P30」も分解して両モデルを比較した。分解作業は深圳に拠点を置くXYZoneが担当した。同社はスマホを分解して部品の供給元を割り出すサービスを提供している。
携帯電話は同じモデルでも製造時期によって異なる部品を搭載することがある。FTが分解したのは発売直後に入手したP40だ。最も意外だったのは、ファーウェイが米政府から事実上の禁輸措置を課されているにもかかわらず、最新機種に米国部品を搭載していたことだ

 

ファーウェイが、米国から禁輸措置を受けている部品を組入れている理由は何か。ビジネス上、不可欠であるので採用しているのだが、米国政府と新たな摩擦になることを予測していないのかどうかである。米国が、新たな制裁を加えれば、「それもやむなし」という捨て身の戦法なのか、だ。

 

(3)「XYZoneの分解調査によると、P40では米半導体メーカー3社(クアルコム、スカイワークス・ソリューションズ、コルボ)の高周波フロントエンドモジュール(FEM)が搭載されていた。FEMはアンテナに接続し、通話やインターネット接続に欠かせない通信用の基幹部品だ。クアルコムの事情に詳しい消息筋によると、最新機種に搭載されている同社製品は米商務省の輸出許可を受けているという。コルボとスカイワークスはコメントの要請に応じなかった。「ファーウェイは1回の製品開発サイクルで多くの米国部品を代替生産し、米政府の制裁への高い対応力を示した。とはいえ、コルボとスカイワークスの半導体が引き続き搭載されているのを見る限り、米国技術への依存から脱却するのは至難の業のようだ」と、中国の調査会社、龍洲経訊(ガベカル・ドラゴノミクス)のテクノロジーアナリスト、王丹(ダン・ワン)氏は分析する」

 

クアルコムの消息筋によると、最新機種に搭載されている同社製品は米商務省の輸出許可を受けているという。これが事実とすれば、米商務省が「弾力的運用」で認めたのであろう。コルボとスカイワークスは「ノーコメント」だ。これは、ファーウェイが迂回輸入したことを暗に認めたのだろう。いずれにしても、ファーウェイが、次世代ネットワーク「5G」で世界支配を目指していても、技術的には米国依存姿勢を暗示している。米国政府は、新たな「攻め所」が浮上したので、その対策に乗出すに違いない。

 

(4)「米政府が安全保障上の脅威となる外国企業を列挙した「エンティティー・リスト」にファーウェイを指定したため、米企業は商務省の承認を得ない限り、同社に米国製の技術を輸出できない。一方、ファーウェイ製の無線設備の更新を迫られた米通信事業者の要請に応じ、米政府は米国外でも手に入る汎用部品に限定して輸出を一部認めた。しかし、P40のような最新のハイテク製品に使う部品の輸出は認可していない。米国製品を採用するには商務省に個別に申請する必要があるが、商務省はどの製品を認めたのかまで明らかにしていない。ファーウェイの広報担当者は「米国をはじめ各国の輸出管理規則を常に順守している」としたうえで、「搭載部品はすべて世界中のパートナー企業から合法的に調達している。今後もパートナー企業と連携し、消費者に高品質な製品やサービスを提供していく」と強調した」

 

ファーウェイは、下線のように答えている。世界中のパートナー企業(提携企業)から合法的に仕入れていると胸を張っている。米司法省は、これまでファーウェイを「イラン禁輸措置違反容疑」で摘発してきた。今回の一件には、どう対応するのか、である。その法的な裁きが注目される。