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世界は、新型コロナウイルス感染でどん底へ突き落とされている。WHO(世界保健機関)は、なぜか震源地である中国を庇ってきた。中立であるべき国際機関が、中国の利益を代弁するようなことでは、世界の結束を守ることが困難になろう。米国トランプ大統領が7日、新型コロナウイルス感染拡大を巡り、WHOが「中国中心主義」で、世界に不適切な提言を行っていると批判し、WHOへの拠出金を停止する考えを示した。

 

『ロイター』(4月8日付)は、「トランプ氏、WHOは中国寄り、新型コロナ対応で批判、拠出金停止も」と題する記事を掲載した。

 

(1)「トランプ大統領はツイッターへの投稿で「WHOは大きく失敗した」と言明。「米国による大規模な出資にもかかわらず、どういう訳かWHOは中国中心主義となっている。われわれはこうした点を精査する」と述べた。さらに、新型コロナ流行にもかかわらず、WHOが1月31日に世界各国に渡航や貿易制限を勧めないと提言したことについて、「米政府は幸運なことにWHOの提言に従わなかった。なぜあのような誤った提言をしたのか」と批判した。米政府は1月31日に中国に対する渡航制限措置を発表した」

 

WHOが、中国擁護の姿勢では国際機関としてふさわしくない。本欄でも、これまで複数回、テドロス事務局長の言動を批判してきた。感染源である中国を庇うことは、WHO加盟国にとって不愉快きわまりない話だ。テドロス事務局長は、中国で習近平氏と会談したが、武漢市には行かなかった。こんなWHO事務局長では、新型コロナウイルスの感染源究明は不可能であろう。

 

WHOが、1月31日に世界各国に渡航や貿易制限を勧めないと提言したことは、最大の失敗である。これが、世界中へ感染を拡大させる要因になっている。中国のメンツを守る立場の決定であることは疑いない。

 


(2)「トランプ氏はその後、ホワイトハウスの会見でもWHO批判を繰り返した。「彼らは誤った判断をした」とし、「WHOへの資金拠出を停止する」と述べた。トランプ氏に近い共和党のグラム上院議員は、上院の次期予算法案にはWHO向け資金を盛り込まない方針を示した。同議員は、FOXニュースチャンネルのインタビューで「私は予算に関する小委員会の責任者だ。現在のリーダーシップ下でのWHOへの資金拠出を支持するつもりはない。彼らはあてにならず、対応が遅く、中国の擁護者となってきた」と語った。共和党のルビオ上院議員も先週、WHOのテドロス事務局長について「中国政府がWHOを通じ世界を欺くことを容認した」と批判し、辞任を要求した」

 

米国下院では、中国非難決議の中にWHOを調査する項目を入れている。米国の怒りは大きく、特に中国を擁護したことが許しがたい行為と見えるのであろう。米国が、WHOへの拠出金支払いを拒否することになれば、WHO活動は半身不随に陥る。WHOは、自己批判を迫られよう。

 

WHOは、中国の指示で台湾を追放している。今回のようなパンデミックでは、中国の思惑を排して、台湾を復帰させるのがWHO精神から言って当然だ。それすらできず、中国の支配に屈しているWHOであれば、存在意義が問われよう。WHOが、中国の支配下にある理由は、次の記事がこの間の事情を説明している。

 


『中央日報』(3月26日付)は、「習近平主席はなぜWHOに行ったのか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイェ・ヨンジュン論説委員である。

 

(3)「新型コロナの出現は誰も予測できない「ブラックスワン」だったとしても、今のように全世界に広がる事態は防ぐことができた。防げなかった原因は油断だ。その油断をあおったのがWHOという事実にはあきれる。先制的な警報はおろか、非常事態宣言も、パンデミック宣言もかなり遅かった。中国の感染者が爆発的に急増していた時期にテドロス事務局長は「よく防いでいる中国に感謝しなければいけない」とし「人的移動制限を勧告しない」と繰り返した。韓国政府が、医師協会や感染学会の進言を一蹴した名分もWHOの勧告だった。今ではWHOの勧告に従う国はない」

 

下線部分のように、WHOは判断ミスを繰返した。中国の強い圧力を受けていたのだろう。

 

(4)「WHO事務局長はなぜそのような勧告を繰り返したのだろうか。中国の影響以外には説明できない。テドロス事務局長はエチオピアの保健相と外相を務めた。彼が外相だった2012-16年は、中国が一帯一路の橋頭堡であるエチオピアの鉄道・港湾に莫大な投資をした時期と重なる。エチオピアはアフリカで中国の3番目の投資国だ。テドロス事務局長の前任者である香港のマーガレット・チャン氏は中国の推薦と支援でWHO事務局長になった」

テドロス事務局長が、エチオピア外相だった2012-16年は、中国が一帯一路の橋頭堡であるエチオピアの鉄道・港湾に莫大な投資をした時期と重なる。エチオピアは、アフリカで中国の3番目の投資国という事情が、全てを物語っているのだ。エチオピアが、国家として中国の世話になった恩義を、テドロス氏はWHO事務局長としてお返ししている倒錯した関係である。

 

(5)「中国の影響が強まったWHO体制で最も大きな被害者は台湾だ。国際機関のうち最後までオブザーバー資格を維持して総会出席権を保有していたWHOから2016年に追放された。台湾の外交孤立に動き出した中国の圧力というのは公然の秘密だ。WHOで屈辱を受けた台湾がコロナ防疫でWHOの勧告と正反対の道を歩んで成功している。WHOの勧告を信じて従った国ではウイルスが広がり、台湾やシンガポールなどWHOの勧告と反対の道を選択した国は防疫の模範になった。防疫と政治の錯綜こそが防疫を亡ぼす主犯だ。WHOが自ら反面教師になって知らせた真実だ。その裏には国際社会の覇権を握ろうとする中国の力がちらつく。いま我々が生きている世の中はこのように動いている」

台湾は2016年、中国の差し金でWHOから追放された。しかし、これを阻止しなかった自由主義国の責任も大きい。ただ、一つ「エクスキューズ」があるとすれば、「中国は一つ」という原則論である。当時はまだ、中国のこの主張が通る国際情勢であったということを知る必要があろう。現在では、あり得ない決定である。わずか4年で、中国を取り巻く国際情勢がこれだけ変わったと言うことである。中国の落勢がめだつのだ。