テイカカズラ
   

新型コロナウイルスが、パンデミックとなって世界中を襲っている発端は、WHO(世界保健機関)の初動ミスにある。その原因は、WHO事務局長が習近平国家主席と面会し、その発言を鵜呑みにしてしまった結果であろう。テドロス氏の側近は、「中国礼賛を抑制するように」と進言したが、それを退け暴走した。今、その舞台裏が明らかにされた。

 

『ロイター』(5月15日付)は、「批判覚悟で中国称賛、WHOテドロス氏の苦悩と思惑」と題する記事を掲載した。

 

1月末、慌ただしい北京訪問からスイスのジュネーブに戻った世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長は、中国指導部による新型コロナウイルスへの初期対応をはっきり称賛したいと考えていた。だが、当時の状況を知る関係者によると、テドロス氏は複数の側近からトーンを落とすべきだと進言された。

 

(1)「習近平国家主席らと会談したテドロス氏は、インフルエンザに似た感染症に関する彼らの知識や、封じ込めに向けた取り組みに感銘を受けた。だがこの時点で、すでに中国では新型コロナウイルスで多数の死者が発生し、国外へも拡散し始めていた。関係者によると、側近らはテドロス事務局長に対し、対外的な印象を考慮して、あまり大仰でない文言を使うほうがいいとアドバイスしたという。しかし、事務局長は譲らなかった。1つには、感染拡大への対処において中国側の協力を確保したいとの思惑があった。「メッセージがどのように受け取られるかは分かっていた。テドロス氏はそうした面でやや脇の甘いときがある」と、この関係者は語る。「その一方で、彼は頑固でもある」

 

テドロス氏は、習氏と面会してその発言を100%信じ込んでしまい、大仰な中国賞賛の発言になった。その裏には、中国から全面的な協力を得たいという思惑があった。過去の疫病発生では、発生国を批判したばかりに、その後の疫学調査で協力を得られなかったケースがあるという。テドロス氏は、その二の舞いを恐れて「中国大絶賛」となった。

 

(2)「関係者によれば、テドロス氏は訪中して習指導部への支持を公然と表明すれば、中国をライバル視する国を怒らせるリスクがあることを承知していた。と同時に、新型コロナウイルスが世界に広がっていく中で、中国政府の協力を失うリスクの方が大きいと考えていたという。北京に2日間滞在したテドロス氏は、感染源の調査、ウイルスとそれを原因とする感染症のさらなる解明に向け、WHOの専門家と各国の科学者から成るチームが訪中する合意を中国指導部から取り付けた。この調査団には2人の米国人も含まれていた」

 

WHOは、中国を賞賛すれば政治的ライバル国の米国が良い気持ちがしないことも分かっていた。だが、それ以上に中国の協力を得て感染源調査を進める必要性があった。

 

(3)「アイルランド出身の疫学者で、WHOで緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏は、テドロス事務局長の訪中に同行した。ライアン氏もテドロス氏も、中国の新型コロナ封じ込め計画を確認し、それがしっかりしたものであることが分かった以上、中国を支持することが重要であると考えたという。WHOが目指していたのは、「できるだけ積極的かつ迅速な対応が行われ、成果を収める」ようにすることだったと、ライアン氏は言う。「そうした対応を行うというコミットメントを揺るぎないものにしておくこと、対応の実施に問題が生じた場合にコミュニケーション経路をオープンにしておくことを求めていた

 

WHOは、最初から中国の協力を取り付ける目的が前面に出ていた。習氏は、それを見透かすように、パンデミックになるような兆候はゼロと発言したのであろう。その上で「協力しましょう」と言えば、テドロス氏は100%、中国を信用したと見られる。

 


(4)「中国は肺炎が集団発生したことを、2019年12月31日にWHOに報告している。WHOは年明け1月14日、中国当局による予備調査では「人から人に感染するという明白な証拠は見つかっていない」とツイッターに投稿した。後日、WHOが中国に対して十分に懐疑的でなかった事例としてトランプ大統領から指摘されることになる。もっとも、WHOの専門家は同日、(人から人への)限定的な感染が起きている可能性があると述べている。1月22日、訪中したWHO調査団は、武漢において人から人に感染したという証拠はあるが、完全に解明するにはさらなる調査が必要との見解を示した

 

WHOの甘さは、昨年12月時点で人から人への感染が起こっていたことを把握できなかった点だ。下線部分は、その曖昧さを記述している。要するに、習氏の発言を信用し過ぎた点が最大の失敗である。

 

(5)「米国政府のある高官はロイターに対し、WHOは「新型コロナウイルスの脅威を高め、ウイルス拡散につながった中国の責任を何度も見逃してきた」と説明する。この高官は、WHOへの拠出金は中国より米国のほうが多いと指摘、WHOの行動は「危険かつ無責任」であり、公衆衛生上の危機に「積極的に取り組むというよりも」むしろ深刻化させていると語った。さらに「調整の拙劣さ、透明性の欠如、リーダーシップの機能不全」が新型コロナウイルスへの対応を損なっていると主張。「世界の公衆衛生を良くするのではなく、阻害するような機関に何百万ドルも供与するのは止めるべきときだ」と述べた」

 

米国は、WHO拠出金で中国の3倍も負担している。その米国の注意を聞かず、テドロス氏は逆に米国を批判する発言をした。政治的に中国を賞賛したテドロス氏が、米国には非政治的に振る舞った。ここが謎である。