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米国は、ナスダック市場で中国企業の新規公開(IPO)に厳しい条件をつけることになった。中国企業の不正会計問題が、続発していることへの対応である。最低でも2500万ドル(約26億円)、または時価総額の25%相当の金額を投資家から調達するよう義務付ける。監査状況についても新たな審査基準を設ける。事実上、中国勢の米上場を制限する内容になった。

 

これは、米中対立がもたらした問題である。米議会では、超党派で中国企業に米国の貯蓄を利用させるなという強い要求がある。「利敵行為」という認識にまで高まっているのだ。中国が、対外的に派手な動きをすればするほど、これに反応して米国の締め付けは厳しくなる状況だ。開戦前夜を思わせるような雰囲気である。日米開戦前、米国が日本に対して取った経済的な圧迫を思い起こせば、米中対立が次第に袋小路に入ってきたことを覗わせている。

 

『日本経済新聞 電子版』(5月20日付)は、「米ナスダック、中国勢のIPO制限へ、米中対立飛び火」と題する記事を掲載した。

 

米取引所大手ナスダックは新規上場ルールの厳格化に乗り出す。海外企業は新規株式公開(IPO)時に、最低でも2500万ドル(約26億円)、または時価総額の25%相当の金額を投資家から調達するよう義務付ける。監査状況についても新たな審査基準を設ける。

 

(1)「ナスダックによるルール変更方針は、同社が19日までに米証券取引委員会(SEC)に提出した文書によって明らかになった。SECの承認によって導入が決まる。ナスダックは上場ルール変更案の中で、制限の対象として中国企業を名指ししていない。ただ、ナスダック上場を目指す海外企業の多くは中国資本で、資金調達額が小さく、流動性に乏しい銘柄も目立つ。新ルール適用によって中国企業が最も影響を受ける」

 

中国企業の上場は米国だが、実際の会計監査は中国企業が本社を置く中国で行い、大手の監査法人は現地の中国法人に監査を任せる体制を取ってきた。ここに不正会計の温床があると、長く改善を求めてきたのが、米規制当局の米証券取引委員会(SEC)だ。中国は帳簿などの詳細な監査資料については、国外へ持ち出すことを法律で禁じている。このためSECは、仮に中国企業の監査に疑いを持っても、それを裏付ける詳細な情報は中国からは入手できず、中国企業の実態をつかめないことを問題視していた。こういう背景も見落とせない。そこへ米中の対立が加わったのである。

 


(2)「ナスダックは上場申請企業の監査状況をより厳しく審査する方針だ。SECや上場企業会計監視委員会(PCAOB)の調査に制限がかかっている国・地域の企業を対象にする。PCAOBは上場企業の会計監査を担当する監査法人を定期的に調査し、財務諸表の質を担保しようとしている。一方、中国政府は米当局による自国監査法人への調査を認めていない。監査を巡るナスダックの新上場ルールも事実上、中国を念頭に置いたものになっている」。

 

中国は帳簿などの詳細な監査資料については、国外へ持ち出すことを禁じている。こういう根本的な規制を掛けながら、米国の資金は吸い上げるという極めて身勝手な行動に対して、米国が遅まきながら「反応」した側面もあろう。「目には目を、歯には歯を」という対応である。中国も文句を言える筋合いでない。

 

(3)「規制当局のSECも中国企業への圧力を強めている。中国を含む新興市場に投資する際のリスクについて話し合う会議を7月に開く。今年に入って米ナスダック上場の中国カフェチェーン大手ラッキンコーヒーの会計不正が発覚し、規制当局も対応を迫られていた。現在は米国に上場する中国企業が、米国のルールを順守しているか調査できていないとした上で、投資家を不正リスクから守る新たな方策について、専門家を交えて議論するという

 

中国企業が、米国のルールを守っているかどうか。SECが専門家を交えて議論するというが、遅すぎると言わざるをえない。これまでも、中国企業の不正会計が続発していた。米金融界が、圧力を掛けて不問に付してきたはずだ。ウォール街には、親中国派が多かったからだ。それも、もはや影響力を発揮できない局面なのだろう。

 

(4)「ナスダックやSECの動きはトランプ米政権の対中強硬姿勢と呼応している。トランプ大統領は14日放映のテレビインタビューで米上場の中国企業への監視を強めるよう求めた。一部の議員はかねて、中国企業が米国のルールを順守しないまま、投資家から資金調達を進めている状況を問題視していた。対中関係の悪化によって、両国の摩擦が資本市場にも飛び火した形となった」

 

米中対立が、資本市場まで及んできた。すでに貿易・技術の両面で網がかかっているが、資本市場まで「中国締出し」が始まれば。中国の受ける打撃は極めて大きい。

 

(5)「米調査会社ディールロジックによると、中国企業が19年に米国IPOで調達した資金は35億ドルで、前年比61%減となった。ある米銀大手の株式引き受け担当者は「中国政府の方針を受けて中国本土市場や、香港市場を選ぶ企業が増えてきた」と話す。すでにアリババ集団が香港との重複上場を果たしたほか、他の電子商取引やゲーム大手も香港上場に向け準備を進めているもようだ。米中分断は資本市場でも鮮明になってきた」

 

中国が、米国から甘いところだけ吸い上げる「ストロー効果」は終焉を迎えた。後は、自力で生きてゆくべきであろう。米国との関係が薄れることで、どれだけの影響を受けるか。壮大な「実験」が始まるのだ。