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中国で年に1度の重要会議、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が22日から開催される。新型コロナウイルスの影響で、予定から2ヶ月半遅れての開催である。注目される2020年のGDPの実質成長率数値目標は、設定を見送る可能性が指摘されている。

 

コロナ感染拡大以降では初の政治イベントである。習近平国家主席は、共産党の結束を打ち出すとともに、反対派を封じ込め、大きな打撃を受けた国内景気の再生に全力を挙げる姿勢をどこまで示すのか。それも注目点である。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月21日付)は、「全人代開幕へ、経済再生目指す習体制にコロナの影」と題する記事を掲載した。

 

(1)「習氏の側近らは指導部を称賛するなど、党の結束を示唆している。だが、共産党の動向に詳しい筋は、習氏の最近の言動からは、コロナによる政治的な悪影響を危惧していることがうかがえると指摘する。コロナ感染拡大で中国では景気が大きく冷え込んだほか、党の危機管理での亀裂も露呈した。党関係者らなどからは、習氏が意志決定の全体的な権限を握り、仕事ぶりが優れない幹部への処罰をちらつかせていることが、コロナ危機への初動のまずさを増幅したとの指摘が上がっている。当局者の間で、上層部にネガティブな報告はしたくないとの雰囲気が広がるためだ

 

下線部は、習独裁体制のもたらす官僚の萎縮が、組織の活性化を阻んでいる点を指摘している。新型コロナウイルスの初動で出遅れたのは、独裁制のもたらした必然的結果である。独裁を強化すればするほど、中国は不活発になって泥沼に落込むリスクを高める。これこそ、毛沢東の指摘した「矛盾論」そのものであり、必ず最後は「止揚」(アウフヘーベン)される。習体制の敗北である。

 

(2)「清華大学の元政治学講師、呉強氏は、コロナ流行による政治・経済・外交面の影響を巡り疑問が生じているとしたうえでこう指摘する。「(コロナが)習氏の指導体制に影を落としている。習政権は統治体制に対する信認を必要としている」 。習氏はここ2カ月、各地を相次いで訪問し、自身が掲げる貧困撲滅や国家の産業力強化を強調。地元当局者に対して、企業や雇用の支援、コロナ感染再発防止を指示している。一方で、当局は習氏の批判派の尋問・拘束にも動いている。習政権は先月、党内に新たな連携組織を創設。コロナによる経済不振で高まる社会不安の追跡・抑制などを担わせ、「平和な中国」の構築を監督する」

 

下線部は、重要な点を指摘している。習氏は、自らの失点を反省することなく、強権をもって沈黙させる最悪手段を取っている。自殺行為である。いくら監視カメラを増やし、インターネットの検閲を強化しても、習体制の矛楯は解決しないのだ。習氏は、権力の持つ魔力に取り込まれてしまった。

 

(4)「中国のコロナ対応への批判をかわすため、習氏は世界の新型ウイルス対策向けに20億ドル(約2200億円)規模の支援を表明。ウイルスの起源に関する研究支援も約束し、外国首脳らに国際貿易や投資の復活を訴えた。その一方で、中国外交官や国営メディアは、パンデミック(世界的大流行)にまで発展したコロナ禍の責任の所在を巡り、米当局者と非難の応酬を繰り広げ、国民の愛国心をあおる。全人代は、共産党幹部が結束をうたい優先課題を打ち出す場で、政治的なショーの様相が強い」

 

習氏は、東条英機と同じ過ちに陥っている。共通点は、民族主義者に踊らされていること。東条は、若手将校の突き上げによって日米開戦に突入した。習氏は、自らの権力拡大の先兵になった民族派に、今や引きずられている。「米国、なにものとせず」という向う見ず派の口車に乗せられているのだ。

 

(5)「中国政治の専門家は今年の全人代について、中国がコロナを克服した象徴的な瞬間として習氏が位置づけると予想している。コロナに打ち勝ったとの自信を示すとともに、独裁的な同氏の指導スタイルに対する国内外の批判に反撃する機会にするという。「今年の全人代では間違いなく、習指揮下の政治システムになお揺らぎがないことを前面に打ち出そうとする」。こう指摘するのは、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の中国政治専門家、ジュード・ブランシェット氏だ。「国内の最大関心事は景気回復と雇用の安定だ」。

 

習氏は、今年の全人代で超強気の発言をして、「習体制健在」を内外にアピールすると見られている。何を言うか。大風呂敷は確実と見られる。

 

(6)「大規模な都市封鎖などのコロナ対策は、中国国内のウイルスの封じ込めには成功した。だが一方で、消費は冷え込み、サプライチェーン(供給網)に大きな混乱をもたらすなど、経済に大きな爪あとを残した。共産党は経済規模を10年前の水準から2020年末までに倍増させるとの目標を掲げているが、政府はここ数年あまり表だって主張していない。目標達成には今年5.5%の成長率を確保する必要があるとみられている。だが、1~3月期の中国経済は数十年ぶりのマイナス成長に沈んでおり、今年の成長目標については、引き下げるかより柔軟な目標にする、もしくは目標自体を撤回するのではないかとの見方も出ている

 

中国経済は、コロナ禍で相当に痛んでいる。一気に「老化」したのだ。今年のGDPは、5.5%以上でなければ、2020年のGDP倍増(2010年比)計画は未達になる。過去の計画に固執するか、新事態に即応するかだ。もともと、今回のパンダミックは、習体制の強権が生んだ矛楯である。最大の責任は、習近平その人にある。パンダミックは、習近平の個人的栄誉欲が招いた悲劇なのだ。