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今年のGDP目標掲げず

国内不満を外圧で逸らす

香港弾圧で米の反撃必至

台湾島嶼占領で勝利宣伝

韓国は第二次朝鮮戦争へ

 

 

先に開催された中国の全人代(国会に相当)は、コロナ禍で約2ヶ月半の遅れであった。注目の政策発表では、従来にない特色が見られた。以下の3点である。

1)今年のGDP成長率目標を発表しなかったこと。

2)香港へ本土の国家安全法を適用して、民主化デモなどを強権で排除・弾圧すること。

3)台湾との統一について、「平和的手段」という従来の言葉が消えたこと。

 

今年のGDP目標掲げず

今年のGDP成長目標を掲示できないのは、コロナ禍で国内経済が深いダメージを受けたことを物語っている。来年は、中国共産党の結党100周年を迎える。中国指導部は、GDPを10年前の2倍にする意欲的計画を発表してきた。これが実現するには、今年のGDP5.5%成長を達成する必要がある。これに備えて、昨年は過去のGDP再計算をして嵩上げし、今年の「6%成長以上」という前提を5.5%にまでハードルを引下げる工作をしてきたのだ。

 

その甲斐もなく、コロナ禍に見舞われた。「見舞われた」という受け身表現では、中国が被害国に映る。現実は、コロナ加害国である。習独裁体制に傷がつかぬよう、コロナ発生を隠蔽して、自らも大きな被害を受けるという皮肉な結果となったのである。

 

中国当局者は、既に今年のGDP成長率への期待値を引き下げ始めている。国家発展改革委員会(NDRC)の何立峰主任は5月22日、記者団に次のように語った。今年のGDP成長率がわずか1%だとしても、GDPの規模は10年前の1.9倍となり、2倍に近くなるとした。だが、GDP成長率目標発表を抑えたのは、今後の中国経済に多くのリスクが迫ることを示している。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月23日付)が報じた。

 

中国当局者が、今年の成長率を「1%だとしても」と語っていることに注目したい。つまり、現実にあり得るという示唆である。問題は、数字遊びではない。「1%成長」に陥った際の雇用状態がどうなるかだ。今年の大卒予定者は870万人と過去最大が見込まれている。現状では、卒業=失業という最悪事態に落込む。李首相は、GDP成長率よりも雇用確保、と号令を掛けている。低成長下では、雇用確保できるはずがないのだ。

 


国内不満を外圧で逸らす

大卒者は就職もできず、失業者の群に身を投じるが、社会不安を招かないはずがないのだ。ここで習氏の取る政策は、国内不満を海外に逸らすという、独裁者共通の対外強硬策の採用である。いつの時代でも、独裁者が取る手法である。歴史では、これを「帝国主義」と呼んでいる。習氏が、李首相に香港へ国家安全法を適用すると発言させ、台湾との軍事統一を示唆させたのは、国内不満を逸らすして香港と台湾へ向けさせる常套手段(帝国主義発動)を意味する。

 

日本の過去にも、こういう汚点がある。昭和恐慌(1927~31年)では、世界恐慌(1929年)に巻き込まれ、大量失業者が出た。「大学を出たけれど」という言葉が、大流行した時代の話である。現在の中国とまさに同じ状況である。この時、日本軍部(陸軍)が編み出して手法は、満州(中国東北部)で傀儡(かいらい)政権をつくって、日本進出をカムフラージュしたことだ。日本は、失業問題解決と領土拡大を狙ったのである。侵略行為である。

 

この一件が、米国を筆頭にした国際連盟(国連の前身)の強い反対論に出遭い、日本外交は孤立した。後に、日本は国際連盟脱退(1933年)という暴挙で自滅し、日米開戦という悲劇的結末となった。こういう経緯を見ると、今回の中国全人代での動きは、かつての日本を彷彿とさせる危険な道である。習近平氏を支える民族主義者は、明治維新以降の日本を入念に研究している。その結果、軍事力の増強が国威発揚の近道との結論を出しており、旧日本軍部と同じ道を選択していることは間違いない。余りにも危険である。

 

中国民族主義者の結論に従えば、香港と台湾に向けて強硬策を取るのは既定路線であろう。これは、米国の地政学的最大関心事と真っ向からぶつかる危険性を秘めている。日本の満州進出が、米国の経済的利益に反した点を見逃せないのだ。米国が、日本に対して断固として満州撤兵を要求した事情の一つである。(つづく)