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日本は、5月26日午前零時から緊急事態宣言が解除された。他国のような罰則を伴わない自主規制で、新型コロナウイルスの第一波をくぐり抜けたのだ。ヤフーの投票(26日午前零時現在)では、全面解除に反対が72%、賛成が22%である。反対が賛成の3倍以上もあることは、日本人の慎重さが覗われる。これで、「第二波が来ても、乗り切れる」という安心感が得られるのである。

 

韓国では、若者が全面解除の途端に夜のクラブへ殺到。感染者が急増した。こういう例をみて、東京都では解除後のスケジュールが発表されている。ステージ1,ステージ2、ステージ3となっている。クラブは、ステージ3である。この段階を追っての規制枠撤廃は、人々に「解除万歳」という喜びを一度に爆発させない手綱として有効であろう。

 

日本は、ロックダウン(都市封鎖)という過激な手段に訴えることなく、コロナ犠牲者は人口100万人当り4.6人、韓国5.0人である。世界一の低犠牲と言って良い。PCR検査数が少ないと非難されてきた。だが、クラスター追跡に全力を挙げる防疫対策の原則を守って、成功を引き寄せたのである。

 

政府の専門家会議副座長の尾身茂氏は、成功した3つの要因として、次の項目を上げている。

1)医療制度の充実

2)初期対応でクラスターを捕捉できた

3)国民の健康意識の高さ

 

以上の3点についてコメントしたい。

1)は、今回のコロナ禍が全額、国費負担であること。患者は、経済面の負担を恐れずに治療を受けられ、これが感染者の拡大を防いだ。海外では、患者負担もありこれが感染者を拡大させている。経済的貧困者に、死亡者が多い理由である。

 

2)は、保健所が初期段階でクラスターをしらみつぶしに調査して感染源を把握した。東京湾の釣り船では、感染源突き止めた。成功例と指摘されている。

 

3)は、日本国民の健康意識の高さである。日本人の清潔好きは世界的にも有名である。この日々の生活態度が、ロックダウンをしないでも感染拡大を防いだ。ただ、「日本人だから罹らない」という傲慢さが出ると心配だという声がある。日本人の寿命は現在、世界で1~2位である。結局、すべての要因は、日々の生活態度がコロナ感染拡大を防ぎ、世界最低の死亡数に止まった。

 

以上の3点が、今後も継続されることを前提にすれば、第二波、第三波はそれほどの過酷な生活を送らなくても乗り切れるだろう。ここで、ロックダウンをしなかった日本を例に考えながら、ロックダウンの限界を知っておきたい。

 


『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月25日付)は、「ロックダウンの是非、モラルで語る危うさ」と題する記事を掲載した。

 

(1)「ロックダウンの継続を支持するあなたは科学に従う、良識ある博愛主義者だ。人を助けたくなるのは仕方ないが、あなたは人(まあ、一部の人)が大好きなだけで、彼らに生きてほしいと思っている。あなたは楽しいディナーや休暇などよりも社会的弱者の利益を優先し、専門家の意見には常に敬意をもって耳を傾ける」

 

ロックダウン継続支持派の論拠が、良識ある博愛主義である。

 

(2)「ロックダウンに反対する人は、フロリダのビーチでビール漬けになって盛り上がっている愚か者だ。あるいはオハイオで赤いキャップをかぶり、ガラスのドア越しに下品な言葉を叫んでいる、手のひらに毛を生やした偏屈者だ。彼らは合理的な公衆衛生指導を、われわれの心を操るための「影の国家」による悪意のある試みと受け止める陰謀論者だ」

 

ロックダウン反対派は、合理的な公衆衛生指導を強調する。日本の自主規制は、この分類であろう。海外のロックダウン派から、日本の防疫対策は非難された。日本は、合理的な公衆衛生指導に自信があったので、緩い規制で通すことができたのだ。

 

(3)「ジョージア州は同州で最も厳しい規制を今月1日に解除した。今はどうなっているのだろう。感染症専門病院に患者が殺到しているだろうか。遺体が通りに山積みにされているのだろうか。実際にはそこまでの事態には至っていない。速報値によると1日当たりの新規感染者数は51日の水準から半減した。1日の平均死者数は51日には36人だったが、先週には7人にまで減った」

 

ジョージア州は、5月1日に規制解除したが、感染者数は半減している。

 

(4)「ジョージア州は比較的小さい州で、人口も密集していないからと、ロックダウンをめぐる主張はあっさりと変化する。ではフロリダ州はどうか。フロリダは広くて人口も多く、各地から人々が集まってくる。人が死んでもおかしくないほどあちこちからウイルスが集まるのだから、間違いなくばたばたと人が死んでいるだろう。ところが実際にはフロリダでは新型ウイルスによる1日当たりの死者数は428日がピークで、今ではほぼ半減している」

 

人口の多いフロリダは、死者数はピークの半減になっている。

 

(5)「経済を再開した州のほとんどで状況は同じかそれほど変わらない。これらの州の知事はただやみくもに賭けに出ているわけではない。彼らが科学とデータ、それに経済学を活用しているのは明らかだ。彼らはウイルスによる死者数がピークを超えると、リスクのバランスが変化することに気が付いた。ロックダウンの便益はますます費用に見合わなくなっているように見える」

 

前記の2州は、ウイルス死亡者がピークを越えると、ロックダウンの便益と費用の関係が逆転することに気付いていた。これは、極めて重要な「発見」だ。ロックダウンを長期継続すれば、その費用が便益を上回って市民は損失を被るのだ。死者数がピークを打ったら、その時点で、ロックダウンを解除すれば、便益が費用を上回るのである。

 

(6)「ただ考えようによっては、そこが一番肝心な点だ。真実は複雑で、このウイルスについてわれわれが知らないことはあまりにも多い。経済上のリスクと健康上のリスクのバランスを適切に取ることは容易なことではない新型ウイルスへの対応は科学か無知か、あるいは善か悪かといった単なる道徳話ではない。だがそれでは「物語」にはなりにくい」

 

新型ウイルスについては、未知のことばかりで安易な結論を出せない。だが、日本は世界一緩い規制で、第一波を乗り越えた。その実績は輝かしいものだ。理由は、前述の3点にある。これさえ守れば、日本は今後も大丈夫という結論が得られるはずだ。その意味で、この記事は、日本へ有益なヒントを与えてくれる貴重なものであろう。