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中国、「人民元相場」28日午前2時、1ドル=7.1696元である。夜間に入って、一段と人民元売りが進んでいる。香港や新型コロナの問題で対中圧力を強めるトランプ政権に対し、中国人民銀行(中央銀行)は25日と26日の2日連続で、人民元の対ドル相場の基準値を約12年ぶりの安値に設定。ドル高に批判的なトランプ氏に対し、あえて元安カードをちらつかせた。日経新聞(28日付)は、こういう見方を打ち出し打している。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月27日付)は、「中国、一段の元安容認か、対米緊張と景気減速で」と題する記事を掲載した。

 

中国は人民元の基準値を12年ぶりの低水準に引き下げた。中国政府は景気低迷や高まる米国との摩擦に対応するうえで元安がメリットになると考えているようだ。

 

(1)「中国人民銀行(中央銀行)は26日、元の中心レートを1ドル当たり7.1293元と、2008年2月以来の最低に引き下げた。中心レートはそれまでの相場の動きなどで決められ、人民銀はこれを中心にした価格帯でのオンショア元取引を認めている。香港など、管理が緩めのオフショア市場でも元は取引される。元は米中貿易摩擦が形成された2018年と19年の多くを通じて下落した。8月には1ドル7元を下回り、中国政府は為替操作をしているとしてドナルド・トランプ大統領が非難した。だがその後、2020年1月にかけて上昇した。同月、米中は部分的な貿易協定に署名した」

 

過去の人民元相場では、1ドル=7元を割り込むとその後の下落が早かったという記録がある。中国当局が、米国対抗という感情論で人民元安を誘導すると、売りの勢いが増して止まらなくなる危険性がある。過去の中国経済と勢いが全く違うことに留意すべきだ。「策士、策に溺れる」ということがある。経常収支赤字経済は目前に来ている

 


(2)「香港時間26日午後時点で、オンショア人民元相場は1ドル当たり7.1321元、オフショアは7.1448元となっている。中国の指導部は元の安定を支えたいと述べてきた。李克強首相は先週、「われわれは人民元の為替レートを、適応できるバランスの取れたレベルにおおむね安定させる」と述べている。しかし、エコノミストやアナリストらは、基準値が3回連続で下がったことから、米国との摩擦が高まるなか元の現行水準を維持する意向はほとんどないとみている

 

中国当局は、米国への感情論的対抗で人民元安に誘導してしっぺ返しを狙っているのかも知れないが、危険な火遊びに映る。中国経済は、そんな戯れ言をしているゆとりはないはず。綱渡りを余儀なくされている状況だ。

 

(3)「ING銀行(香港)の中国担当チーフエコノミスト、アイリス・パン氏は、強いドルに対して元が下落していると指摘。投資家は貿易やテクノロジーの優位性を巡る両国の緊張がさらに激化するとみていると述べた。パン氏によると、全面的な貿易・ハイテク戦争があれば元は年内に7.30元まで下落する可能性がある。それがなければ7.05元近辺にとどまるという」

 


(4)「大和キャピタル・マーケッツの日本を除くアジア担当チーフエコノミスト、ケビン・ライ氏は、中国には元安を求める圧力があると述べ、年内に1ドル=7.60元に達すると予想している。アクサ・インベストメント・マネージャーズ(香港)のアジア新興国担当シニアエコノミスト、アイダン・ヤオ氏は、元は変動が続くだろうと述べた。今年の中国の成長は市場の暗い予想を上回るとみられるが、元を左右する要因はそれだけではない。ヤオ氏は「地政学的な力と基本的な経済の力の主導権争いがある。そしてそれが、為替の予想を非常に難しくしている」と述べた。

 

ここでは、人民元弱気の見方を紹介している。年内の7.30元と7.60元相場は、中国経済の先行き悲観論が定着したとき実現するのだろう。中国は、間もなく経常収支赤字経済に転落するだけに、弱気説が妥当のように思える。過去の高成長イメージで中国経済を見ると、とんでもない背負い投げを食うはずだ。

 

(5)「ちょうど今月、トランプ米政権は数十の中国企業・機関をブラックリストに掲載し、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が外国半導体メーカーから製品を調達するのを阻止するため、新たな輸出規制の概要を示した。中国が香港に「国家安全法」を課そうとしていることは米国のさらなる措置を呼んだ。ジュリアス・ベアのアジア担当最高投資責任者バスカー・ラクシュミナラヤン氏は、元は長期的に強含む公算が大きいと述べた。中国は依然として世界成長の主なエンジンだからだ。外国人投資家は中国の債券や株、元の保有を増やしたがるとみられる。同氏は「ポートフォリオに元を持つ必要性は消え去らないだろう」と述べた」

 

ここでは、強気説の紹介である。コロナ禍と米中デカップリング論で、もっとも傷つくのが中国経済である。コロナ賠償問題も、世界中から提訴される運命だ。それにも関わらず、下線のような見方があるのには驚く。