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中国による香港への国家安全法適用決定は、大きな波紋を呼んでいる。自民党外交部会は、香港国家安全法適用を非難決議した。同時に、習近平国家主席の国賓訪日の再検討を政府に申入れている。

 

欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は5月29日、中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」導入を決定したことに、EUは「深く懸念している」と述べ、EU外相理事会が対中戦略の厳格化で合意したことも明らかにした。米英両国は、中国が香港の統制強化に向けた「香港国家安全法」導入を計画していることで、29日の国連安全保障理事会に非公式に提起する方針。中国の香港国家安全法適用は、国際問題化している。

 

中国は、香港国家安全法適用決定で世界の三極である、日本、EU、米国から非難される事態に直面した。コロナのパンデミックで世界中へ被害をばらまく一方、さらに香港の自由弾圧の懸念により、厳しい局面に立たされた。中国民族主義が、国際法拒否という破天荒な行動に出た結果、今後の中国外交には茨の道が待っている。

 

『日本経済新聞 電子版』(5月29日付)は、「習氏の国賓来日『再検討を』自民部会、香港巡り非難決議」と題する記事を掲載した。

 

(1)「自民党の外交部会と外交調査会は29日、「香港国家安全法」の制定方針を採択した中国を非難する決議文をまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大で延期した習近平国家主席の国賓来日も再検討するよう政府に求めた。中山泰秀外交部会長らはその後、首相官邸で菅義偉官房長官と会談し、決議文を手渡した。菅氏は「真摯に受け止めたい」と語った。

 

自民党の外交部会と外交調査会が、合同で「香港国家安全法」を採択した中国を非難した。同時に、習近平氏の国賓来日も再検討するように政府へ求めている。管官房長官は、「真摯に受け止めたい」と回答した。日本が、国賓来日時期を先延ばしにする案もあろう。もともと、自民党の一部には、習氏の国賓に反対する意見があった。

 


(2)「決議文は香港への統制を強める中国に「自由と民主主義を尊重する観点から重大で深刻な憂慮」を表明した。「民主的な議会などの価値を減殺しないよう強く求める」とも明記した。新型コロナの感染拡大のさなかの動きに「由々しき事態であり決して看過できない」と訴えた。習氏の国賓来日は「再検討も含め、政府において慎重に検討することを要請する」と盛り込んだ

 

下線部分には、国内で共鳴する向きもあろう。中国発症のコロナ禍で、経済も生活もメチャクチャになっている現状から言えば、こういう時期に習氏がどんな顔をして訪日するのか。世界的にも注目される動きだ。今秋に予定されているEU・中国首脳会談は延期の方向で検討されている。日本でも、習氏の国賓訪日に延期論が強まろう。

 

『ロイター』(5月30日付)は、「EU、中国の香港法制『深く懸念』対中戦略厳格化で合意」と題する記事を掲載した。

 

(3)「欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は29日、テレビ会議形式で実施された外相理事会後の記者会見で、香港国家安全法の導入は香港の高度の自治を認める「一国二制度」が阻害される「深刻なリスク」と指摘。「EUと中国の関係は相互の尊重と信頼に基づいているが、今回の決定はこれに疑問を呈するものだった」とし、「香港の自治は大幅に弱体化された」と述べた」

 

なにやら、天安門事件(1989年)の虐殺に抗議する雰囲気に似てきた感じだ。「EUと中国の関係は相互の尊重と信頼に基づいているが、今回の決定はこれに疑問を呈するもの」は、外交的に最大級の非難であろう。EUにとって、「自治」とは市民社会と同義語である。市民社会弾圧は、EUとして絶対に見逃せない暴挙だ。

 

中国は、「内政干渉」というお決まりの言葉で反論しているが、価値観の根本的な相違を浮き上がらせている。天安門事件での民衆虐殺と相通じる香港国家安全法の適用は、中国がいかに危険な国家であるかを示している。

 


(4)「EU各国外相は、中国が香港の自由を制限しようとしていることに「深刻な懸念」を示し、対中政策の厳格化で合意したと表明。「中国とオープンで率直な対話を行う必要があり、EUにはその用意がある」としながらも、市場アクセスなどを巡り「交渉は進展していない」と述べた。各国政府はその後、ボレル上級代表の発言内容を反映した声明を発表。全人代の決定は「中国が国際的なコミットメントを順守するのか、一段と大きな疑問を呈するものだった」とした。英、米、オーストラリア、カナダの4カ国は28日、全人代の決定を非難する共同声明を発表している」

 

EU各国政府は、「中国が国際的なコミットメントを順守するのか、一段と大きな疑問を呈するものだった」と非難している。当然のことだが、こういうEU各国政府の声明が出た手前、日本は習氏の国賓訪日を先送りすることが賢明であろう。

 

(5)「EUの執行機関である欧州委員会は来月、公開入札への中国のアクセスを制限する方法などに関するガイドラインを策定する見通し。また、9月14日にドイツのライプチヒで開催される予定のEU・中国首脳会議について、独外交筋は延期される可能性があると示唆。独政府報道官はこの件に関するコメントを控えている

 

9月に予定のEU・中国首脳会談は延期される可能性があるという。当然だ。日本も参考にしなければなるまい。