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事大主義をいまだ信奉

米国の香港制裁で沈没

中国を過大視する滑稽

回復力鈍く長期停滞へ

 

中国の全人代(国会)が、香港への国家安全法適用を採決した。この結果、韓国の受ける影響は大きなものが予測されている。それにも関わらず、韓国政府の反応はいたって鈍感だ。「影響は限定的」と静観の構えである。中国への気配りが、こういう国際感覚ゼロの姿勢を見せているに違いない。日本政府は、在日中国大使を呼んで「憂慮している」と懸念を伝えた。

 

実態は、韓国政府の言うような「影響は限定的」ではない。中英共同宣言によって、香港に保証された「一国二制度」が形骸化されるからだ。「一国二制度」は50年間(2047年まで)、中国の法制度が香港に適用されず、自由と民主主義政治の継続が可能というものだった。米国は、これを前提にして香港へ中国に与えていない特恵を付与した。

 

香港へ国家安全法が適用されれば、香港は中国と同じ「一国一制度」となる。米国トランプ大統領は、これを受けて香港に付与した特恵廃止の方針を発表した。詳細は後で触れるが、これにより香港の経済的地位は陥没する。香港への輸出比率の高い韓国は、大きな影響を受けるはずだ。それを「限定的」と嘯(うそぶ)くのは、経済的知識がないのか、外交的配慮で中国を刺激したくないという「事大主義」による妄言なのか。あるいは、その双方であろう。

 

韓国は従来から、中国マターになると途端に慎重姿勢へ豹変する。日本への対応とは、180度異なるのだ。中国へものを言えない反射で、日本へは感情的な振る舞いをするのだろう。朝鮮李朝時代からのパターンである。事大主義の見本のような行動なのだ。日本は、それを見抜いているから、腹の中で笑っている。韓国は、本心で日本より上位と錯覚している。この錯誤に気付くのは遠くない先であろう。米中冷戦激化で、韓国の安全保障問題が深刻化すれば、自ずと米韓同盟の枠に復帰せざるを得なくなるからだ。

 


事大主義をいまだ信奉

韓国が、香港問題を経済と外交の両面で複眼的に捉えられないのは、米中冷戦の実態を見誤っているためであろう。それを証明する実例を取り上げたい。

 

韓国国立外交院の金峻亨(キム・ジュンヒョン)院長は5月28日、「ポスト・コロナにおける国際政治の大激変の中で犠牲者にならないためには、米国などからの排他的選択に抵抗する避難先が必要だ」との考えを示した。ソウル大学経済学部の李根(イ・グン)教授は、ポスト・コロナにおいて「国際社会における米国のリーダーシップが、弱体化するだろう」との見通しを示した。以上は、『朝鮮日報』(5月29日付)が報じた。

 

上記記事を整理すると、次のようになる。

1)米国などからの排他的選択に抵抗する避難先が必要(金・国立外交院長)

2)国際社会の米国のリーダーシップが弱体化する(李ソウル大経済学部教授)

 

ここで、私のコメントを付したい。

1)は、米国が韓国を米韓同盟の枠に戻れと圧力を掛けているから、中国を避難先にして中国の傘に入り、米国との外交バランスをとる、というものだ。米中バランス外交論とは、これを指している。だが、安全保障は米国の傘に入り、外交問題は中国の傘に入るという「ヌエ」的振る舞いが、国際外交で認められと考えている点に幼稚さを感じるのだ。米韓同盟を結びながら、米国の仮想敵の中国と誼を通じる韓国に対し、米国が防衛義務を負うという不合理さを認めるはずがない。いずれ、白黒を迫る局面を迎えるはずだ。

 

2)は、経済学部教授の発言である。米国は、トランプ氏という破天荒な大統領で毀誉褒貶が激しい。意表を突く発言も多いが、米中デカップリング論は、コロナ禍によって確実に進む気配になってきた。英国は、中国と「黄金時代」を築き親密な関係を維持していたが、今回の香港国家安全法適用とコロナ禍によって、「脱中国」の動きを見せている。

 

コロナ禍は、西側陣営の内輪もめを止めて、対中国で結束させる効果を示している。この現実を見落として、トランプ発言に困惑し「米国衰退」を云々するのは的外れである。李氏が、経済学部教授であるので一言したいのは、米国ドルが国際基軸通貨であることだ。世界の金庫番である。米ドルが、世界経済を支配している以上、米国の影響力が落ちて中国が浮上するとは、完全な夢想である。中国人民元が、米ドルに代われる力はゼロである。この現実を忘れてはならないのだ。世界の政治的影響力は、経済の総合的実力で左右される。

(つづく)