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中国による香港への国家安全法適用が、国際金融都市・香港の地位に赤信号を灯らせた。米国が、これまで香港へ与えてきた特恵(関税・ビザなど)の廃止方針を打ち出したからだ。本欄は、香港に代わり東京が国際金融都市になる可能性を指摘してきた。現実に、東京が有力候補という報道が現れた。

 

『朝鮮日報』(6月1日付)は、「1兆ドルの資金が香港脱出準備、シンガポール・東京が新たな金融ハブ狙う」と題する記事を掲載した。

 

(1)「米国が香港に対する特別待遇の剥奪する方針を示したことで、1兆ドル規模のアジアの金融ハブの座を巡るアジア各国の競争が激しさを増すとみられる。米中対立の真っ只中にいる香港では最近、人材だけでなく、資本が大規模に離脱する「ヘクシット」の兆候が見られる。香港は1兆ドルもの投資資金が集まっている場所だ。英中央銀行のイングランド銀行によると、昨年6月の香港民主化デモ以降、6兆ウォンを超えるファンドマネーが香港から引き揚げられた。金融街からは「ヘクシットの地獄の門が開き始めた」との評価が聞かれる」

 

香港が、ニューヨーク、ロンドンと並んで国際三大金融都市であるのは、「一国二制度」と米国による香港への特恵。それと、香港が中継貿易地点であることだ。香港の貿易額の対GDP比は300%を超えて世界一である。こういう条件によって、香港は国際金融都市の活躍が可能になった。今回の香港国家安全法適用は、米国による香港への特恵を奪い、香港に国際金融都市の座を不可能にさせる。

 

(2)「1992年に米議会が「香港政策法」を制定した際、香港はアジアで自由経済が最も理想的に具現されている場所だった。同法を通じ、香港には米国の敏感な技術へのアプローチが認められ、米ドルと香港ドルの自由な交換など中国本土とは差別化された経済貿易特権が与えられた。その結果、世界の100大銀行のうち70行余りがアジアの拠点を香港に置くほど、世界的な金融ハブとしての競争力を備えるようになった」

 

世界の100大銀行のうち70行余りが、アジアの拠点を香港に置いている。これは、世界2位のGDPとなった中国情報をいち早く得られるというメリットあってのことだ。それに、香港が中継貿易で世界一に伴う国際金融が活発であるという実需も背景にある。中国人民元取引は、香港のオフショア市場で自由に行えるというメリットもある。

 


(3)「米国が香港に対する特別待遇の撤回に公式に言及し、中国が「国家安全法」という猿ぐつわまでかませたことで、香港の都市競争力は大幅に低下する可能性が高まった。3月に英国の世界的な金融コンサルティンググループ「Z/Yen」が世界108都市の金融競争力を算出して発表した「国際金融センター指数(GFCI)」で香港は6位にとどまり、昨年より3ランク後退した。香港より順位が低かった東京、上海、シンガポールが香港を抜き去った。世界的な信用格付け会社、ムーディーズは今年1月、香港の信用格付けを1段階Aa2Aa3引き下げた。香港に対する特別待遇が剥奪されれば、1ドル=7.757.85香港ドルに為替レートを固定するペッグ制が脅かされ、金融市場が不安になる可能性も指摘されている

 

最新の「国際金融センター指数」で、東京はニューヨーク、ロンドンに次いで3位へ浮上しているようだ。香港が6位へ後退していることは、香港の民主化運動で金融業務が阻害されかねないという事情もあろう。香港にとっては、気の毒である。民主化運動は、当然の権利行使であるからだ。「一国二制度」の廃止は、香港の政情を一段と不安定にさせる。その意味でも、香港が国際金融都市の座を維持できる背景を失ってきた。

 

香港ドルが、ペッグ制(固定相場)で米ドルに繋がっていたことは、中国人民元にメリットである。このつながりが切断されれば、最大の被害者は中国となろう。中国は、米国による香港への特恵廃止で報復すると虚勢を張っているが、「引かれ者の小唄」に過ぎない。

 

(4)「法律、英語、税制など香港の持つあらゆる長所を兼ね備えたシンガポールは香港に代わる存在として浮上している。シンガポールの法人税は17%で香港(最高16.5%)とほぼ同じ水準だ。東京も積極的だ。昨年末に日本政府関係者が大挙香港を訪れ、投資会社に税金の減免などさまざまな優遇を提示した。東京はニューヨークに次ぐ世界2位の株式市場を持ち、世界3位の経済大国・日本の首都という地位を前面に掲げる」

 

シンガポールの利点は、中継貿易が香港に次いで盛んなことである。法人税率も17%と定率である。東京は、都知事の小池氏が先頭に立っている。日本政府と連携して、香港に代わる国際金融都市に昇格できれば、日本経済の構造改革に大きく寄与する。さらなる国際化の進展である。雇用も増える。

 


(5)「上海は、世界最大の市場中国に対するアクセスという点ではライバルを寄せ付けない。株式市場の時価総額もニューヨーク、東京に次ぐ3位だ。しかし、こうしたライバル都市が香港に取って代わるにはまだ力不足だとの意見も存在する。中国に対するアクセス、英語人材、資本市場の発達程度などで香港がまだ相対的優位にあるからだ」

 

上海は、国際金融都市になる基本条件を欠いている。人民元取引に多くの制約がかかっているからだ。管理変動相場制、資本自由化が行なわれていない、情報管理で自由な通信が行えないなど。これでは、国際金融都市になれるはずがない。