ムシトリナデシコ
   

世界経済の牽引車である米国経済に復活の兆しが出てきた。4月が景気の底という見方もあるほど。毎週発表される失業保険の新規申請件数は、4月上旬のピークから46%減った。米国は、防疫面と経済面のバランスを取っており、死亡者数がピークを打ってからすぐに経済再開に向けて動き出している。新規感染者数よりも、死亡者数の減少に焦点を合わせている。長くロックダウンを続けていると、経済困窮が原因で自殺者が増える面も無視できない。そこで、前記のような「バランス論」が登場したもの。

あえて、米国のケースを取り上げるのは、日本の本格的なコロナ解禁が、6月1日から始まったからである。米国の「アフター・コロナ」を見れば、日本の推測もある程度可能になる。その意味で、この記事は、参考になるように思える。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(5月30日付)は、「米経済、息吹き返す兆し」と題する記事を掲載した。

 

新型コロナウイルスの感染拡大で米国の経済活動はほぼ停止したが、国民は正常化に向けて慎重に歩み始めている。交通量の増加やスーパーでのパニック買いの減少などはこうした兆しだ。

 

(1)「ロックダウン(都市封鎖)が数カ月に及んだため、回復にはなお時間がかかる。だが(トランプ大統領が言うところの)「2カ月間のリセッション(景気後退)」の底は恐らく4月だったのではないかと、カナダのBMOファイナンシャル・グループのチーフエコノミスト、ダグラス・ポーター氏は指摘する。新型コロナの感染者数が依然増えている州もあるが、米国のほぼ全ての州で経済活動が再開した」

 

景気の底は4月と見られる。回復スピードは遅い。100%回復は2022年頃というのが、カナダのBMOファイナンシャル・グループのチーフエコノミスト、ダグラス・ポーター氏の結論である。最後のパラグラフに記されている。

 

(2)「位置情報から人の移動を推計する米ユナキャストによると、客足の戻りが最も大きいのは衣料品・アクセサリー店で、趣味・娯楽店が続いた5月に買い物客の増加幅が非常に大きかったのは、アラバマやミシシッピなどの南部の州やサウスダコタなど中西部の州だった。アラバマ州は夏の行楽シーズン到来を告げる5月25日の祝日「メモリアルデー」の3連休にビーチを訪れた人が1年前に比べて71%増え、恩恵を受けた。同じようにメキシコ湾に面しているルイジアナ州などでも客足が増加した」

 

客足の戻りが最も大きいのは、衣料品・アクセサリー店で、趣味・娯楽店が続いている。ロックダウンによってショッピングの楽しみを奪われていた。それがまず、回復している。アラバマ州では、5月25日の祝日「メモリアルデー」の3連休に、ビーチを訪れた人が1年前に比べて71%も増えている。日本では、「3蜜」で非難されそうだが、米国はおうらかである。

 

(3)「他人との接触が少ない仕事かどうかも、早期に活動を再開できるかの目安になる。セントルイス連銀が発表した接触度指数では、林業や証券取引業、製造業の一部カテゴリーなどが最も接触度が低い業種に入っていた。実際、長期にわたり閉鎖していたマンハッタンのニューヨーク証券取引所は5月26日に立会場を一部再開し、接触度の低い企業が多いテキサス州では、5月の製造業景況指数が依然マイナスではあるものの、前月比34%改善した

 

他人との接触度の低いのは製造業である。テキサス州では、5月の製造業景況指数が依然マイナスではあるものの、前月比34%改善した。

 

(4)「車を運転する人も増えている。米データ会社MS2によると、直近のトラック通行量は前年比5%減にとどまった。4月末時点では13%減だった。米フォーアイズのデータを見ると、5月第3週の全米各州の自動車販売台数は平均で前週比24%増えた。飛行機の航路の追跡サイト「フライトレーダー24」からは、週ごとの平均運航本数が最も少なかった4月中旬より50%以上増加したことがわかる」

 

これを見ると、人々が「穴蔵」から出てきたことは疑いない。それが、大きなうねりになるかどうかである。これまでの予測では、コロナ感染と同じで、景気回復の第1波の後に落込み、第2波の回復後に落込むという動きが、第3波まであるというもの。ジグザグ模様を描くとしている。手放しの楽観はできないだろう。

 


(5)「
米連邦準備理事会(FRB)のエコノミストと米ハーバード大学の経済学者らがコロナ危機の当初にリアルタイムの経済活動を観測するために考案した指標「週間経済インデックス(WEI)」は低下が緩やかになり、ほぼ横ばいになっている。それでもなお、経済が回復するまでには時間がかかるだろう。4月時点の米国の失業者と潜在失業者の数は4300万人以上に上った。公式の失業率は14.%で、世界大恐慌以降で最悪となっている」

 

現状は、L字型回復になっている。4月時点の失業者と潜在失業者の数は4300万人以上に上った。これだけの被害が出ている以上、V字型の早期回復はあり得ない話だ。

 

(6)「規制が解除されたからといって、市民が通常の生活に戻っても安心だと感じるわけではない。移動データでは、政府が正式にロックダウンを導入するかなり前から多くの市民が自主隔離していたことが示されており、封鎖の解除後もこの傾向が続く可能性が高い。ポーター氏は「経済活動は今年か来年に100%回復するだろうか。それはないだろう」と話す」

 

自主隔離している人たちが、完全に動き出さなければ米国経済は回復しない。米国の名目GDPに占める名目民間最終消費(個人消費)比率は、68.01%(2018年)である。米国は自律型経済とされるが、それでもこの遅いスピードの回復である。他国経済が、米国以上の早さで回復するとは考えにくい。