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韓国経済は、確実に死期を早めている。皮肉にも、それを促進させているのが文政権である。最低賃金大幅引き上げが、賃金コストを押し上げており、企業の不況抵抗力はゼロである。しかも、売上高も減っている。典型的な「減収減益」という最悪事態を迎えている。

 

『中央日報』(6月4日付)は、「韓国企業、新型コロナの影響受ける前に売り上げすでにマイナス」と題する記事を掲載した。

 

昨年利子を払えるほどの利益も稼げなかった企業の割合が過去最高水準に高まった。企業の売上額も4年ぶりに後退した。韓国銀行は3日、こうした内容の「2019年企業経営分析(速報値)」を発表した。韓国銀行が外部監査対象非金融営利法人企業2万5874社を対象に調査した昨年の成績表だ。

(1)「成長鈍化が目立った。2017年に9.9%を記録した売上額増加率は2018年には4.2%と半減し、昨年はマイナス1.0%まで落ち込んだ。1年間企業を運営したが規模が成長するどころか縮小した格好だ。業種別では製造業が2018年の4.5%から昨年はマイナス2.3%に急落した。自動車と造船が上昇したが、石油・化学などを中心に大幅下落した。非製造業も建設業を中心に3.8%から0.8%に下落した。企業規模別では大企業が4.3%からマイナス1.5%で、下落幅は中小企業の3.9%から1.5%より相対的に大きかった。昨年韓国経済を強打した輸出不振の余波だ」

 

昨年の売上高増加率は、マイナス1.0%であるから減収である。減収になれば、損益分岐点が上がるので、減益は不可避である。昨年のGDPデフレーターが、マイナスになったことと無縁でない。韓国経済は、老衰が始まったと見て間違いない。「Kモデル」などと悠長なことを言っていられる状況でなくなった。危機への第一歩が始まっている。

 

(2)「収益性も悪かった。2019年のこれら企業の売上高営業利益率は4.7%だった。前年より2.2ポイント下落した。商売にならず、ものを売っても利益がほとんどないという意味だ。韓国銀行関係者は「細部的に売り上げ原価と販売管理費の割合が上昇し利益率が低下した」と話した。インタレストカバレッジレシオも2018年の593.3%から昨年は360.9%と大幅に落ちた。インタレストカバレッジレシオは営業利益を金融費用(利子)で割った値だ。企業が金を借りて利子を返せる能力を示す指標だ。これが低くなるということは企業が健康に成長できないという意味だ」

 

昨年の売上高営業利益率が4.7%である。5%を割ると、税金を払ったあとの利益は僅少になる。研究開発費に資金を回すゆとりは減る。将来の成長の種が、それだけ減ることを意味するのだ。

 


(3)「特に営業利益で利子も返せないインタレストカバレッジレシオ100%未満の企業の割合は34.1%で、2013年に調査を始めてから最も高い数値に上がった。企業の3分の1以上が金を稼いでも利子を返せないという話だ。売上高営業利益率が下落したのに対し金融費用負担は大きくなったためだ」

営業利益で利子も払えない、インタレストカバレッジレシオ100%未満の企業が、34.1%と3分の1も占めていることは深刻である。いわゆる、ゾンビ企業である。潜在的倒産予備軍がこれだけ存在することは、韓国企業経営が、厳しい局面にあることを示している。売上高営業利益率が低いのは、理由あってのことである。賃金コストの上昇である。

 

『朝鮮日報』(6月2日付)は、「韓国の労働コスト、労働生産性を上回る伸び」と題する記事を掲載した。

 

韓国では労働生産性よりも労働コストの伸びが急で、製造業の競争力が低下しており、韓国企業のリショアリング(製造業の本国回帰)を阻んでいるという分析が示された。

 

(4)「韓国経済研究院は1日、米民間調査機関コンファレンスボードのデータを分析した「製造業単位労働コスト国際比較」を発表した。2010~18年の韓国製造業の単位労働コストは年平均2.5%増加したのに対し、中国、米国、ブラジル、インド、メキシコなど韓国企業の進出が多い主要10カ国の単位労働コストは年平均で0.8%低下したとする内容だ。単位労働コストは商品1単位を生産するのに必要な労働コストを指す。単位労働コストの増加は1人当たりの労働コストが1人当たりの労働生産性よりも急速に上昇し、コスト競争力が低下したことを意味する」

 

2010~18年の韓国製造業の賃金コスト(労働コスト)は、年平均2.5%上昇している。一方、韓国企業の進出が多い主要10ヶ国は、年平均0.8%低下している。賃金コストは、労働生産性と賃金の上昇率で算出される。賃金コストの上昇は、生産性を上回る賃上げが行なわれていることの証明だ。韓国の労組が、世界最強という意味は賃金コスト上昇で分かる。これを、プッシュしているのが文政権である。

 

 (5)「同院によると、10~18年の韓国の1人当たり労働コストは年平均5.2%増加したが、1人当たり労働生産性の伸び率は年平均2.6%にとどまった。一方、10大進出先の国々では平均で1人当たり労働生産性が年3.9%向上したのに対し、労働コストは年3.0%の伸びにとどまった」

 

前記の韓国における賃金コスト上昇の内訳が、このパラグラフに記述されている。韓国の賃金上昇率が、労働生産性伸び率のちょうど2倍になっている。韓国経済は、この跛行性にいつまでも耐えられるはずがない。昨年から、ついに限界を超えたことが分かる。文政権が、「執行人」である。