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ジム・ロジャーズ氏は、なぜか「世界三大投資家」として、メディアが取り上げている。それは過去の話である。現在は全くの外れっぱなしである。本欄は、ロジャーズ氏に対して冷めた評価を下してきたが一層、その感を深めるのである。

 

ロジャーズ氏は、北朝鮮と韓国の将来性を高く評価し、返す刀で日本を滅多切りしている。「30年後は必ず没落」するから、最近は「20年後に必ず没落する」と没落期が10年早まった。東京五輪後は、没落とも言っている。

 

こうした一連の「発言」が、データや国際情勢の子細な検討結果から出たものでなく、ただの「放言」に過ぎないことが分かる。北朝鮮の核という厳しい問題を棚上げして、北朝鮮の将来性を持ち上げ、韓国も発展すると根拠もなく発言する。極めつけは、韓国経済の将来性を見込んで、大韓航空株を大量に買付けたと広言(昨年1月)。明らかに、自らの発言力を利用した「株価操作」であったかも知れない。その後、大韓航空株がどうなったか。下落しているのだ。

 

こういう経緯もあって、近頃は北朝鮮や韓国の有望性について発言することはなくなった。代わって強調しているのが「日本経済没落論」である。その根拠は、国債発行の増大である。だが、ロジャーズ氏はMMT(現代金融理論)という新しい金融論の登場を知らないようだ。米国で、日本の財政政策は最先端であったという理論構築が注目されている。米国やEUでは、このMMTにより政策の舵が変わるとの見解が登場。現に、今回のコロナ禍克服のため、多額の国債発行に踏み切っている背景に、このMMTの存在がある。

 

要するに、ロジャーズ氏へこう言っては失礼だが、過去の輝かしい投資家の実績で、現状分析をせずに、当てずっぽうに発言を繰返しているのだ。それが、メディアに乗っているだけと言わざるを得ない。ロジャーズ氏の過去の実績を汚すものとして残念である。

 

まず、過去の北朝鮮発言を見ておきたい。

 

マネー現代編集部』(2019年1月4日付)は、「ジム・ロジャーズ氏『北朝鮮バブルが来る、私は大韓航空株を買った』」と題する記事を掲載した。

 

「朝鮮半島でいま北と南が経済開放したら、世界で最もエキサイティングな国になりますよ」。冒頭からそう切り出したジム氏は、いま最も注目しているのが北朝鮮の経済開放の動向だと明かした。ジム氏はその理由を次のように語る。

 

(1)「中国との国境近くに7500万人の人々が住んでいますからね。北朝鮮には、安価で、高い教育を受け、訓練もされた労働者がいる。北朝鮮には自然資源も豊富です。韓国には資本が多くあり、専門家も多く居住している。北朝鮮では、すべての産業が成長する可能性があります。彼らはいい紙ナプキンもないし、椅子もないし、いい電気製品も、いいレストランも、いいビールもない。思いつくものはなんでも、いいものはないのです。しかし、彼らはそれらを欲しがっている。私は、大韓航空の株をすでに買いました。これから経済開放が実現すれば、韓国と北朝鮮間で旅行が盛んになると思うからです」

  

ここでの発言には、明らかに過去の輝かしい投資実績を上げたロジャーズ氏の切れ味はない。この程度の話なら、市井の投資家の会話と違いはない。米朝の核交渉が過去にどのような推移を経てきたか。その厳しい経過についての認識がないのだ。ましてや、シンガポールでの米朝会談の失敗(2018年6月)を踏まえれば、こういう超楽観的発言は出ないはずである。

 

皮肉な言い方をすれば、シンガポール会談失敗の後、大韓航空株の売り時期を探し、釣上げようとしたのかも知れない。ロジャーズ氏ともあろう百戦錬磨の投資家が、北朝鮮や韓国を買い被るとは、信じがたい話である。それほど違和感があることなのだ。

 


現実の北朝鮮経済は、没落寸前である。めぼしい地下資源は、中国へ売却されていると見られる。2017年に始まった経済制裁で、中朝貿易量は激減している。特に輸入額が減っていることから、生活必需品まで枯渇している状況である。まさに、餓死寸前まで追い込まれている。この北朝鮮経済が復興するには莫大な資金が必要である。政治体制が安定しない国へ、投資する人間が現れるとは思えない。資本は、政治不安に超敏感である。

 

ロジャーズ氏は、日本経済の20年後、30年後の没落論を唱えるセンスで、北朝鮮問題を見るべきだった。そうなれば、大韓航空株がすぐに値上りするという幻想を抱かなかったはずである。

 

だいたい、20~30年のロングタームで一国経済を論じるならば、中国経済はどうなっているかだ。習近平氏の暴走政策によって、没落しているに違いない。市場経済を敵視して統制経済を展開している中国は、矛楯が激化して空中分解するか、海外への進出による摩擦熱(国際紛争勃発)で騒乱を招くという危機到来の公算が強い。ロジャーズ氏は、不思議に中国問題を避けている。彼の視野に、中国問題がないとは考えられない。それほどロジャーズ氏は、不可思議な存在になってきたのである。