ムシトリナデシコ
   

韓国自動車業界は、昨年の国内新車販売台数が153万台、海外販売台数639万台である。合計792万台だ。この年間1000万台に満たない業界に5社がひしめきあっている。典型的な過当競争を演じており、脱落する企業が出る運命である。業界どん尻の双竜自動車は、10年ぶりに再び身売りされることになった。中国系企業が買収候補にあがっているという。

 

ここで、狭い市場で5社がせめぎ合っている構図を、新車販売台数(2019年)で見ておきたい。

         

 

           国内販売台数       海外販売台数      合計台数

現代自動車     74万1842台    368万0802台   442万2644台

起亜自動車     52万0205台    225万0488台   277万0693台

双竜自動車     10万7789台      2万7446台    13万5235台

ルノー・サムスン   8万6859台      9万0591台    17万7450台

韓国GM       7万6471台     34万0755台    41万7226台

(出所:MarkLines)

双竜自動車は、年間13万台余である。これで、賃上げストは一人前にやるのでは、身売り話が出て当然だ。韓国自動車業界は、現代と起亜が国内資本で、他3社は外資系になっている。外資系ということは、いつでも撤退可能という不安定な位置にある。

 

インド資本のマヒンドラ財閥が、双竜の筆頭株主である。マヒンドラは、インド経済の停滞で打撃を受けており、双竜を支える力を失い、売却方針に転じた。売却が成功するかどうか、経営内容の悪さから危ぶむ声が出ている。

 


『中央日報』(6月21日付)は、「双竜自動車、10年ぶりに再売却、マヒンドラが売却主幹事選定」と題する記事を掲載した。

 

双竜(サンヨン)自動車がインドのマヒンドラグループに買収されてから10年ぶりに再び売買市場に出された。19日の投資銀行業界によると、双竜自動車はこのほどサムスン証券と欧州系ロスチャイルドを売却主幹事に選定したことがわかった。両社は2011年にマヒンドラが双竜自動車を買収する時も同じ役割をした。

(1)「双竜自動車関係者は、「最近売却主幹事を選定した。その他の内容は秘密保持契約上明らかにできない」と話した。売却主幹事は国内と海外を問わず潜在的投資家を中心に双竜自動車への投資の意向を打診するものとみられる。売却対象は、マヒンドラが保有する双竜自動車の株式74.65%だ。双竜自動車の時価総額は18日基準で4450億ウォン(約392億円)だ。保有株式全量を売却する場合、価格は経営権プレミアムを考慮して2000億ウォン台後半になると推定される

 

売却価格は2000億ウォン(約176億円)台後半という。約200億円強となろう。恒例の強い労組の存在を考えれば、簡単に買収候補として名乗り出られないかも知れない。

 

(2)「業界では中国の吉利自動車と電気自動車メーカーのBYD、昨年マヒンドラと戦略的提携関係を結んだ米フォードなどの名が挙がっている。吉利自動車は近く双竜自動車の資産査定作業に出るという。双竜自動車の韓国工場を通じOEM(相手先ブランドによる生産)などを念頭に置いているとされる。フォードは、マヒンドラとインド市場攻略に向けスポーツ多目的車(SUV)3種と電気自動車1種を共同開発中で注目される。電気自動車開発には双竜自動車も間接的に関係しているという。BYDは中国の電気自動車業界1位で、電気自動車バッテリー分野で世界トップ圏を走っている。BYDは一時双竜自動車平沢(ピョンテク)工場を活用して電気自動車を生産することを検討したという。業界ではBYDが双竜自動車買収を踏み台として韓国の電気自動車市場に参入することもあるとの見通しも出ている」

 

中国の自動車メーカーが買収候補に噂されているという。吉利自動車、電気自動車メーカーのBYD、それに米フォードなどだ。外資系では、すでにルノーやGMが進出しているが、強い労組に手を焼いている。韓国GMでは、新社長が社長室に入れないという騒ぎを起こしている。

 


(3)「自動車業界は売却成功の可能性について、これまでのところは否定的な見方だ。特に2011年にマヒンドラが双竜自動車を買収し外資系銀行と結んだ貸付条件が障害だ。双竜自動車はマヒンドラを通じてJPモルガンやBNPパリバなどから2000億ウォンほどの短期資金を借りた。この時、銀行はマヒンドラが双竜自動車の株式51%以上を保有するという条件を付けた。マヒンドラが株式を売却すれば新たな投資家が借入金をすぐに返さなければならない。双竜自動車は今年1-3月期まで13四半期連続で赤字を出した。1-3月期だけで978億ウォンの営業損失と1929億ウォンの当期純損失を出した。ここに1カ月の人件費だけで400億ウォンに達するなど高い固定費も障害だ」

下線のような障害が、買収に支障になる可能性が指摘されている。マヒンドラが、JPモルガンやBNPパリバなどから2000億ウォン(約176億円)ほどの短期資金を借りているからだ。買収先は、この資金を返済しなければならない。売却価格は2000億ウォン台後半としても、この返済金が加わる。ざっと見て、5000億ウォン(約440億円)が、即座に必要となる。

 

双竜自動車は、今年1~3月期まで13四半期連続で赤字を出した。1~3月期だけで1929億ウォン(約170億円)の当期純損失を出している。1カ月の人件費は400億ウォン(約35億円)に達する。この高コスト体質の企業を買収するとなれば、技術面で相当のプラスがなければ、買収候補として手を上げられまい。