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中国は、愚かなことをしたものだ。6月15日の中印国境での軍事紛争は、中国の安全保障を根幹から変えるリスクを抱えることになった。インドを完全に米国側へ向けさせたのである。繰返すが、習近平氏は世にも愚かな指示を出した。新たな敵をつくったのだ。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(6月19日付)は、「インド、衝突を機に対中関係見直しへ」と題する記事を掲載した。

 

6月15日にヒマラヤ山脈にある中印の係争地帯で激しい衝突が発生し、インド兵士20人以上が殺害された事件を受けて、インド政府高官は政府が中国との経済関係を後退させる方針を明らかにした。3488キロメートルにわたる未画定の国境を巡る紛争が再び焦点に浮上したのを受け、インドは中国の代わりに米国など他の国との戦略的関係の強化を探る方針だという。

 

(1)「高官は、「インドは地政学的選択や経済的選択の観点から別の方策を探す」と語った。「より強固な経済関係を築けば相互の親交や理解が深まると期待し、我が国における経済的利益を提供しようとしてきた。だが明らかにある時点から、うまくいかなくなった」。インド・中国両政府はさらなる緊張激化を避けようとしている。だが核保有国同士で1975年以降初めて死者が出る事件が起こり、インドの政府や安全保障当局が受けた衝撃は大きい。現状は維持できないとの見方が強まっている」

 

非同盟・中立は、インド建国以来の伝統的な外交政策である。インドは現実に中国との平和共存を狙い、中印の経済関係を深めれば、外交的にも安定した関係が構築できると見てきた。だが、今回の中印衝突は、中国が仕掛けたものだけに不信の念が大きい。習近平氏の大誤算である。

 

(2)「インドの元外務次官で駐米・駐中大使を務めたニルパマ・ラオ氏は、「これは転機だ。両国の関係において極めて深刻な分岐点だ」と話す。「(国境の)ガルワン(渓谷)で起こったこと、多くの血が流れたことを考えると、平常通りというわけにはいかない」。中国は60年代にもインド領土に深く侵入し、すぐに引き揚げたことがある。その時以来の深刻な危機に直面し、モディ氏が当時よりももっと豊かで強大になった隣国に対して容易に選べる手段はあまりない

 

インドが、中国に対して取り得る対応策は限られている。インド単独で中国に対抗するのでなく、これまでの非同盟・中立策を捨てて、米国との同盟に加わるという選択しかなくなった。

 

(3)「国境の緊張が高まったのは、インド軍が例年4月にヒマラヤの国境で行う演習を新型コロナウイルス流行のため中止した後のことだ。インドの安全保障アナリストは、中国軍はこの機に乗じ、インドが自国領土と主張する地域で足場を固めようとしたと指摘する。最近インドが建設した道路を監視するため戦略的に重要なガルワン渓谷を挟む峠もその対象となった」

 

巷間、言われてきたことは、中国がパンデミックに乗じて強硬策を取るだろうといことだった。私は、こんな見透かされたことをやるのか、と疑問に思っていた。現実に中国は、これを実行してきたのだ。呆れるほど、馬鹿げた戦術である。こういうなりふり構わぬ軍事行動を見ると、相手に少しでも隙があれば、そこへ侵入する。これが中国なのだ、と天下に証明した。

 

(4)「前出のインド高官は、「衝突が起き、それは残忍なものだった。経済的またはその他の影響が何もないというのは考えにくい」と話す。インド政府は中断していた中国系企業とのいつくかの公共事業を白紙に戻そうとうとしている。この高官によると、国有通信企業のBSNLは通信網をアップグレードするのに中国以外の企業を探すよう指示された」

 

インドは、中国との経済関係を見直すという。経済関係が密接でも、それが安全保障になんら寄与しなかったという反省である。インドから、中国資本を追出すこともあり得る。それほど、険悪化が予想される事態だ。

 


(5)「ワシントンのアナリストは、今回の対立を受けてインド政府は長期的に米国への戦略的接近をより強めるとみている。トランプ大統領は、中国に対する敵意やインドとの関係を強化したい意向を隠そうとしない。
オバマ政権下で国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたエヴァン・メデイロス氏は、「どちらが仕掛けたかに関係なく、中国は今後数十年にわたりインドを米国に献上することになったのかもしれない」と語る。「インドのように極めて非同盟的な国でさえ、今回の事件を受けて中国の軍事力とのバランスを取るのにパートナーを探さなければならなくなる」。

 

中国は、習近平氏の子どもじみた作戦ミスで、隣国インドを米国側へ向かわせてしまった。これほど愚かな作戦を指揮する人物が、国家主席とは驚く。改めて戸締まり(同盟)をしっかりしないと、中国と対応できないことが教訓になった。習氏は、自らの国家主席3期目を焦り始めている。危険な人物となった。

 

(6)「インド政府は今後、中国に対するけん制を念頭に置いている日米豪印4カ国の非公式連合「QUAD」への関与を強める可能性もある。これまでインド政府は中国を刺激するのを避けるため、米政府に接近しすぎないように注意を払っていた。だが一部では中国政府に気遣いしすぎだといわれ、インドの高官やアナリストらはそのような配慮は消えていく可能性が高いとみている」

 

日本は、米印関係をとりもってきた。安倍首相とモディ首相が昵懇という関係を生かしてきたものだ。すでに、豪印は「2+2」の関係を構築した。後は、米印関係が蜜になれば、日米豪印の「インド太平洋戦略」の基礎が固まる。習氏は、こういう点にまで頭が回らなかったのだろう。何と言う短慮の国家主席か。ため息が出るほどのミスをした。「オウンゴール」そのものだ。