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日本は昨年7月4日、韓国への半導体3素材の輸出手続き規制を始めた。あれから1年経つ。韓国側はどうなっているのか。『中央日報』(6月25日付)は、半導体・ディスプレイと材料・部品・装備業界の取材を総合すると「心配はただの心配にすぎず、かえって国産化を高める『転禍為福』になった」と口をそろえていると強気報道である。

 

韓国は、何の影響もなかったとすれば、なぜこの輸出手続き規制問題をWTO(世界貿易機関)へ提訴するのか。言っていることと行なっていることが矛楯しているのだ。影響があったという言い分だから、提訴するのであろう。

 

『中央日報』(6月25日付)は、「日本の攻撃に日本が被害、輸出規制から1年、韓国の驚くべき変化」と題する記事を掲載した。

 

(1)「日本は昨年7月、フッ化水素・フォトレジスト(感光液)・フッ化ポリイミドなど先端材料3品目の輸出に規制をかけた。3品目を「包括輸出許可」から「件別許可」対象に切り替え、8月には輸出許可簡素化対象国である「ホワイト国」リストから韓国を除外した。3品目は半導体・ディスプレイ産業の核心素材だが、日本の依存度が90%にもなっていた。日本が韓国の半導体・ディスプレイ産業の構造的脆弱性を鋭く狙ったことになる」

(2)「だが、日本の輸出規制はむしろ変わろうとしなかった国内企業を変化に導いた。何より日本に依存していた供給元の多角化と国産化にいち早く飛び込んだ。韓国半導体・ディスプレイ技術学会の朴在勤(パク・ジェグン)会長〔漢陽(ハンヤン)大学融合電子工学部教授〕は「日本が寝ていた韓国を起こした」と表現した。朴会長は「日本の輸出規制がなかったら、今のように積極的に国産化と多角化に出なかっただろう」と語った」

下線部では、日本の輸出手続き規制にむしろ感謝している様子である。ならば、なぜWTOへ提訴するのか。矛楯した行動である。さて、本当に何の影響もなかったのか。検証して見ると、韓国側の主張には相当の誇張とウソが混じっていることが判明した。

 


『現代ビジネス』(6月25日付)は、「韓国・文在寅がぶち上げた『日本依存脱却』、1年経っても成功せず」と題する記事を掲載した。筆者は、高安雄一大東文化大学教授である。

 

韓国は日本の措置に対抗して、個別許可に切り替えられた3品目、すなわち、レジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミドについて、輸入品の日本依存からの脱却を図るとともに、国産化を模索することとした。

 

(3)「まずは、半導体製造用フッ化水素である。フッ化水素は半導体の洗浄に使われる。2018年の輸入額に占める輸入元のシェアは、中国が52.0%、日本が41.9%、台湾が5.7%であった。これが2019年には、中国のシェアは50.9%でほとんど2018年と変わらなかったが、日本は32.2%にシェアを下げ、台湾がそれを埋める形で15.8%となった。さらに2020年1~5月のシェアは、中国が73.1%と伸ばした一方、日本は12.3%にまで低下し、台湾の12.8%に抜かれることとなった。輸出管理適正化に関する措置前後の動きをまとめると、中国のシェアが高まり日本のシェアが落ち込んだ形になっている。報道によれば、韓国は中国を介して日本のフッ化水素を輸入している動きもあり、供給元をたどれば日本依存から脱却できたのかについては検証が必要であろう

 

フッ化水素の品質は様々であり、日本が得意とする超高純度フッ化水素といった品質のものまで製造できるのか明らかではないが、今後は順次国産化が進む、と筆者の高安教授は指摘している。

 

(4)「次に半導体製造用レジストを見てみよう。レジストは、半導体の表面に画像層のパターンを形成することに使用される。2018年の輸入額に占める輸入元のシェアは、日本が93.2%と大半を占めており、続くアメリカは5.8%、ベルギーは0.8%であった。2019年は、日本のシェアが88.3%と、2018年と比較して若干下がったものの圧倒的なシェアを占めていることには変わりがない。さらに2020年1~5月も日本のシェアが88.6%、これに続くベルギーが5.8%、アメリカが5.3%と、日本からの輸入が多くを占めている。輸出管理適正化に関する措置前後の動きをまとめると、日本のシェアはわずかながら低下したものの、依然として9割に近いきわめて高いシェアを維持していることがわかる」

 

レジストでは、日本が9割のシェアでる。レジストは2019年の輸入額は前年比で5.2%減であったものの、2020年1~5月は前年同期比が33.8%増と増加に転じた。この状況では、日本側は好況に浴している形だ。

 


(5)「最後はフッ化ポリイミドである。フッ化ポリイミドは有機ELの材料として使われる。2018年の輸入額に占める輸入元のシェアは、日本が84.5%と高く、台湾が7.4%、中国が2.8%であった。2019年は日本のシェアが93.0%となり、2020年1~5月には93.9%にまで高まった。一方、台湾の2020年1~5月のシェアは4.2%、中国は1.0%にとどまっている。輸出管理適正化に関する措置前後の動きをまとめると、措置後に日本のシェアは10%ポイントほど高まっており、現在では9割を超える圧倒的なシェアを有していることがわかる」

 

フッ化ポリイミドでも、日本のシェは9割である。2019年の輸出量は、前年比は44.9%増、2020年1~5月の前年同期比は7.1%増であり増加が続いている。国産品が輸入品に代替しているといった動きは見られないのだ。「実際、レジストやフッ化ポリイミドについては、韓国国内で量産化が始まるといった情報はなく、国産化は進んでいない」とは高安教授の弁だ。

 

韓国は、針小棒大に言う民族である。日本の座が脅かされる状況ではなさそうだ。だいたい、中国で製造できるものが韓国でできないと言うこと自体、恥ずかしいと思わなければならないのだ。