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新型コロナウイルスは、国際社会における中国の位置に打撃を与えた。WHO(世界保健機関)への感染症発症の通報遅れや、WHO事務局長を抱き込んで中国の都合のいいように操縦したことなど、多くの失点を重ねた。その上、外報部広報官に「感染症の原因は米国が持込んだ」というフェイクニュースを流すに及んで、中国への信頼は地に墜ちた。

 

コロナ後の中国には、各国からの賠償請求が出される情勢である。むろん、中国は払う積もりがないとしても、「中国評価」は大きく崩れるであろう。これは、西側諸国を結束させる力となって働く。これまで、トランプ米大統領によって米同盟国の結束は緩んだが、中国への敵対感情の高まりで、先進国は一本にまとまる可能性を持ってきたのだ。これは、中国の予想もつかなかった事態だ。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月23日付)は、「ポストコロナ時代、米中関係の新たな現実とは」と題する記事を掲載した。

 

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)と自己主張を強める中国に直面する欧米諸国は、この新しい現実に目覚め、どう対応すべきかを判断しようとしている。米国やその同盟国は軍事衝突や自国経済への深刻なダメージを避けながら、いかに経済安全保障を確保すればよいのか? これほど支配的立場にある貿易大国に対し、経済・政治的手腕を通じて影響力を行使することがそもそも可能なのか?

 

(1)「最近の研究、そして2018~19年の米中貿易紛争のめまぐるしい展開に、答えのヒントがある。

1)広範囲の一方的な関税措置はあまり効果がない。中国経済はとにかく規模が大きすぎるし、世界的な貿易ネットワークに深く統合されすぎている。中国の輸出は他の場所に行き着くため、関税の効果が薄れてしまう。

2)通商に関する共同の枠組みの方がより効果的であり、米国の同盟システムには自ずと優位性がある。

3)中国もやはりハイテク産業の自立を成し遂げようと躍起になっている。それを達成するまでは、技術輸出の制限が(例えコストやリスクが大きくても)有効な手段であることを意味する。

4)あまりに急速または完全な中国とのデカップリング(分離)は、大きな経済コストを招きかねず、武力衝突に発展するリスクをはらんでいる」

 

米国が、中国の領土的野心を阻止する方法のうち、有効なのは2)と3)としている。この点についてコメントしたい。

 

2)米国同盟国の協力態勢を強化する。共同市場(TPPのような)を結成して、中国を排除する。中国の計画経済システムでは参加できないことを鮮明にする。これは、中国経済改革に大きなプレッシャーを与える、

 

3)中国の最新鋭技術が渡らないようにする。これは、米ソ冷戦時代の「ココム」を復活させて禁輸品目を拡大すれば、中国の技術窃取のリスクを避けられる。

 

(2)「中国は研究開発(R&D)の資金源となるだけの高い貯蓄率を誇る。ただ、同国の労働力は急速に高齢化しており、世界輸出市場に占めるシェアは2015年がピークだったようだ。もし多くのハイテク産業で近いうちに技術的フロンティアに到達できなければ、中国は未来を支配するどころか、大量の退職者を支え、巨額債務の借り換えを無限に続けるのに立ち往生するだろう――米国に比べ1人当たり国民所得ははるかに少ないのだから」

 

中国に最新鋭技術を渡さないことである。これが、中国の生産性向上を阻止するカギだ。そうなれば、高齢化にともなう大量の退職者と巨額債務の借り換えを阻止して立ち往生する。他国領土を狙う気力も体力も失う。それは、共産党政権の危機に直結する。

 

(3)「戦略国際問題研究所(CSIS)が、2019年初めに行った未来の貿易戦争をシミュレートした2つの「ゲーム」によると、中国に対する最も有効な交渉戦略の一部は、技術輸出を断ち切る脅威(とりわけ同盟国と協調した場合)であるという。さらにCSISは、米国が長引く経済紛争のコストを吸収し、相殺する決意を示すことが非常に重要なことも明らかにした」

 

CSISによる対中戦略は2つある。先進国が一丸となれば実現可能である。

1)技術輸出を断ち切る。

2)米国が不退転の決意で、いかなるコストを払っても民主主義を守る決意を示す。

 


(4)「ジョージ・メイソン大学のケチャン・ツァン助教による2019年の調査で、中国はどういう場合に武力を行使する傾向があるのかが判明した。それは、経済的コストが低く、中核的な安全保障問題で自らの決意を示す必要があり、敵方が他の主要国から支援を得るリスクが低い場合だ。その一例が、フィリピンが領有権を主張する南沙諸島のミスチーフ礁(中国名:美済礁)を中国が1995年に占拠したことだ。将来、軍事衝突を回避できるかどうかは、米国の航空母艦のみならず、中国に多大な経済的損失をもたらせるか――そして米国主導の経済制裁措置に同盟国が積極的に従うかどうか――にかかっているだろう」

 

中国が、他国領土を狙う共通のケースは、次の点にある。

1)侵略する経済的コストが低くい

2)中国の中核的な安全保障問題で、自らの決意を示す必要がある

3)敵方が他の主要国から支援を得るリスクが低い場合

 

中国は、「合従連衡」を外交の基本戦略にしている。「合従」(同盟)を壊し、「連衡」(一対一の関係)に持込んで征服するもの。アフリカで、群の中から一匹に狙いをつけて仕留める動物と同じ戦略である。中国の餌食にならないためには、米国の同盟に加わることだ。中国が手出しできないように集団を組む。アフリカの動物と同じ構図である。