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中国が、香港への国家安全法適用を正式決定した結果、米中冷戦はもはや決定的な段階を迎えた。米国は、香港への国家安全法を導入した関係者の米国入国ビザ発給を抑える方針を発表している。米国務省の声明では、「中国政府の高官」ではなく、「中国共産党の高官」と明白に指している。中国最高指導部メンバーまで含まれるというのだ。具体的には、次のようなメンバーが含まれる。『大紀元』(6月30日付)が、伝えている。

 

韓正氏(中国共産党中央政治局常務委員会の常務委員、党内序列7位、国務院副総理を兼任)

楊潔篪氏(党中央政治局委員、党中央外事工作委員会弁公室主任)

王毅氏(党中央委員会委員、国務委員兼外相)

これら「大物」が、実際に米国へ入国できない事態となれば、米中対決は後戻りできなくなろう。

 

ここまで事態が悪化すれば、米中経済関係が一段と厳しくなることは不可避であろう。そこで、米国は中国のファーウェイ締め付けを強化すべく、日本企業のファーウェイ取引にまで監視の目を強めるとの予測が出ている。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月30日付)は、「日本企業のファーウェイ取引、目を光らせる米政府」と題する記事を掲載した。

 

トランプ米政権は、米企業が中国の次世代通信規格「5G(第5世代)」網整備を支援するのを防ぐため、規制を強化している。だが、同盟国である日本の企業は、5Gレースにおける中国の躍進を支え、そこから利益を得ている。

 

(1)「中国は、1500億ドル(約16兆1700億円)を投じて国内全土に5G網を展開する計画で、年内に基地局50万カ所余りの建設を目指している。計画を中心となって支えるのが、華為技術(ファーウェイ)の通信機器だ。村田製作所の村田恒夫会長は、中国政府は5G網の拡張を積極的に後押ししており、同社の部品にとっては極めて有望な市場だと話す。米中がハイテクの覇権争いを繰り広げ、米政府がファーウェイ阻止に向け民間セクターへの介入も模索する中、日本は政治的な「地雷」を避けつつ、米中双方に供給する道を探っている。問題は、米軍やその同盟国に領土を守られている日本が、中国との取引をどの程度維持できるかだ

 

日本は、米国と共同で「インド太平洋戦略」により中国けん制に動いている。それだけに、ビジネスは別としてファーウェイとの取引継続が、困難な状況になる見通しだ。第二次世界大戦後の「ココム」(対共産圏輸出規制)が、これから復活すると思えば理解は早いだろう。

 


(2)「米国が最初に輸出規制に乗り出した際、規制の対象は主に米企業だった。だが、米政府は過去1年に、ファーウェイのような中国企業がなお5G関連の技術を手に入れていることを認識しはじめた」。こう指摘するのは、ウェンディ・カトラー元米通商代表部(USTR)次席代表代行だ。その上で、「輸出規制の波」は間もなく米国の同盟国にも及ぶとし、「発表内容を総合すれば、米国がどこに向かっているのかは明確だ」と話す。トランプ政権は5月、外国サプライヤーによるファーウェイへの供給を断つため、新たな輸出規制策を発表した。念頭にあったのは、台湾の半導体ファウンドリー(受託生産)最大手、台湾積体電路製造(TSMC)によるファーウェイ傘下、海思半導体(ハイシリコン)への半導体供給だ」

 

現在の対中国輸出規制は、米国企業だけが対象になっている。だが、ファーウェイは他国からの輸入で米国の輸出規制をかいくぐっている。批判の矛先が、日本企業に向かうだろうと見られている。

 

(3)「こうした目立たないが欠かせない部品の多くが、スマホや5G機器を手掛けるファーウェイへと向かう。ファーウェイの梁華会長は昨年11月、2019年に日本から100億ドル相当の部品を調達するとの見通しを示し、これにより「米国産部品に頼ることなく、顧客に主力製品を適切なタイミングで出荷できる」と述べていた」

 

ファーウェイは、米国からの輸出禁止分を日本から輸入して、事なきを得ている。こうなると、米国企業からの不満が出て当然である。米国政府は、米企業をなだめる意味でも、日本企業へも同調を求めに違いない。これは、時間の問題であろう。

(4)「今年初頭の新アメリカ安全保障センター(CNAS)による報告書は、ファーウェイに対する輸出規制を拡大し、外国企業による販売も対象に含めるべきだと提言。「米国製だけではく、外国製の部品も購入できないようにすれば、5G網構築に向けたファーウェイの取り組みを大きく阻害するだろう」と記している。報告書は議会の委託で作成された。ピーターソン国際経済研究所のマーティン・コルゼンパ主任研究員は、米政府が検討している手段の1つとして、ファーウェイに部品を供給している米国外の企業に対し、米国製部品を使うことを一段と制限することが挙げられると指摘する」