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与党大勝がもたらす「罠」

徴用工判決は象徴的意味

文氏、大本営発表の空虚

日本が生殺与奪の権握る

 

日韓関係は、今後の両国の外交・経済に重大な影響を与える季節を迎えた。8月4日以降になれば、日本の旧徴用工補償問題で韓国が差し押さえている、日本企業の資産売却は法的に可能になる。韓国政府が、日韓関係の険悪化から「GSOMIA」(日韓軍事情報包括的保護協定)の破棄に走る可能性も取沙汰されている。要するに、韓国は日本に向けて二つの刃を突付ける形になっている。

 

これらの刃は、韓国自身の心臓を刺す危険性を抱えている。韓国政府には、そのようなブーメランについて全く考慮していないのだ。韓国が、勝てるという誤解をしているからだ。

 

その最大の理由は、先の総選挙で与党が圧倒的な勝利を収めたことである。国会議席の6割を占めるという絶対多数の与党になった。すでに、その奢りは国会運営に現れている。慣例を破って、議長・副議長のほかに常任委員長全ポスト独占するという横暴ぶりである。民主化以来、与野党が国会運営で責任を持つという民主主義のルールは、簡単に打ち捨てられた。

 

韓国与党の超強気姿勢は、対日外交にも向けられている。日本に対して、一切の譲歩をせずに戦う姿勢を見せているのだ。それが、総選挙で「韓日戦」を標榜して支持されたと理解しているからだ。この勢いで、GSOMIA破棄に動き出すであろう。この問題は、日韓よりも米韓問題に発展していく。米国が再び、強い圧力を韓国に掛けて「腰砕け」になることは自明。それでも、日本へ嫌がらせをするのが韓国与党である。それが韓国の国益を守る、という誤解に基づくのだ。

 

与党大勝がもたらす「罠」

韓国では、進歩派までが文政権の高い支持率のもたら「罠」に対する警告を出している。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は、低い支持率に悩みながら経済政策や外交政策で成果を上げた。低い支持率とは、保守派の根強い反対があったことを物語る。それだけに、慎重に政策を進めた結果である。現在の文在寅政権は、高い支持率に酔って「何でもできる」という罠に嵌り込んでいる。支持団体の主張する政策を丸呑みしているからだ。

 

最低賃金の大幅引上げは、労組の要求をそのまま受入れたものである。「所得主導成長」という美名に隠れて、生産性上昇を無視した大幅引上げである。働かないで高賃金を獲得するという労組の要求そのものを実行した。

 

原発廃止は、市民団体の反原発運動を鵜呑みにしたものだ。福島原発事故を誇大宣伝する戦術の虜になった結果である。市民団体は、太陽光発電を推進させ多額の補助金を懐に入れたのである。文政権はすべて、支持団体の既得権益を守る保守的行動に終始している。進歩派政権という看板に泥を塗っているのだ。

 

盧武鉉政権で、大統領府広報首席秘書官を務めた、趙己淑(チョ・キスク)梨花女子大国際大学院教授が、「政治の成功が政策の成功を保証するだろうか」と主張している。「支持率が高ければ政策的失敗に対して寛大になり、参謀も緩んで、誰もがうまくやっていると錯覚する可能性がある」と指摘している(『中央日報』7月1日付)

現在の文政権は、まさにこの状態である。心理的に舞い上がったままだ。日本に対しては、露骨なまでに敵対意識をギラギラさせている。大統領府の金尚祖(キム・サンジョ)政策室長は7月1日、近ごろ日本が国際舞台で韓国をけん制しているとして、「韓日関係が過去の垂直的な関係から水平的な関係に変わる中、日本がアジアにおける主導権を失いかねないと懸念しているため」とラジオ番組で発言した。

 

他国を誹謗する発言は、外交的に慎重でなければならないが、韓国大統領府にそのような配慮はない。タガが外れた状態である。つまり、日本批判であれば何を言っても良い、というムードであろう。「日韓関係は、過去の垂直的な関係から水平的な関係に変わる」としているが、韓国こそ歴史問題という古証文を持ち出して、日本に韓国の要求を100%飲ませようという「垂直関係」に持込もうとしている。それは、無理難題と言うべきだ。(つづく)