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韓国の合計特殊出生率は世界最低というワースト記録を塗り替えている。昨年は、1を割り込んで「0.92」である。今年はさらに悪化予想を強めている。こうして、韓国経済の将来は確実に沈下する。問題は、将来の経済減速だけでない。足元の潜在成長率が低下の一途を辿っていることだ。昨年の「合計特殊出生率」が世界ワースト記録を塗り替えていることは、これまでの潜在成長率低下を反映したものと言える。

 

『韓国経済新聞』(6月30日付)は、「韓国銀行『新型コロナで潜在成長率の下落加速化』」と題する記事を掲載した。

 

韓国銀行(中央銀行)は、新型コロナウイルスの衝撃で韓国の潜在成長率がより速いスピードで落ち込むだろうと分析した。潜在成長率下落速度を遅らせるために情報通信技術(ICT)やバイオヘルスなどの新産業を育成すべきと提示した。

(1)「韓国銀行は6月29日、こうした内容の「新型コロナウイルス後の経済構造変化と韓国経済への影響」と題する報告書を発表した。潜在成長率とは労働と資本などを投じてインフレなどの副作用なく最大限達成できる成長率をいう。就業者(労働投入)、設備・建設投資(資本投入)、技術革新・制度・法(総要素生産性)などの変数で構成される」

 

潜在成長率に最も大きな影響を与えるのは、労働投入=生産年齢人口(15~64歳)比率である。韓国はすでに生産年齢人口比が低下傾向にある。これを補うのは資本投入であるが、韓国は「反企業主義」が強く、設備投資を阻止する要因が増えている。総要素生産性は、労組を中心に企業や制度の改革を阻止する気運が極めて強い。こうして、韓国の潜在成長率は引上げよりも引下げ要因の方が強い状況である。一口にいえば、韓国経済には希望がないのだ


(2)「韓国銀行が、過去の年平均潜在成長率推移を次のように示した。

2001~2005年 5.1%

2006~2010年 4.1%

2011~2015年 3.2%

2016~2020年 2.7%

2019~2020年 2.5%

新型コロナウイルスにより、企業が雇用と設備投資を減らすため、潜在成長率が予想よりさらに速く落ちるだろうとみた。過去の経済危機事例を考慮すると、新型コロナウイルスの衝撃で落ち込んだ雇用率が、完全に回復するのには2~4年ほどかかるものと予想した。就業者数は金融危機当時に月平均16万人、通貨危機当時に96万5000人減った」

 

韓国で失業者が多いのは、潜在成長率に満たない成長であるからだ。こういう長期の低落経済成長率の上に、今回の新型コロナウイルスの負担が重くのしかかっている。企業が、先行き見通しが付かないことを理由に、設備投資を抑制する。これに伴い雇用が減るのだ。この状況が回復するには、3年前後はかかると見ている。

 

(3)「新型コロナウイルスに対応する過程で、政府の規模が肥大化することも潜在成長率を損ねる要因に挙げた。民間部門に比べ効率性が落ちる公共部門が肥大化すればそれだけ資源配分がゆがめられ経済全般の生産性が下落するためだ。韓国銀行は『ICT・バイオ産業を育成しようとする政府・企業の投資が潜在成長率の下方圧力を相殺するだろう』と評価した」

 

文政権は、最低賃金の大幅引上げに伴う失業者増加を財政支出の拡大でカバーしている。自の失政を隠すためである。政府が、アルバイトの口をつくるという前代未聞の振る舞いをしているほど。文政権5年間で、韓国の潜在成長率は確実に低下する運命にある。

 

選挙民はこの実態を理解できず、先の総選挙で与党を大勝させる皮肉な選択をした。自ら、韓国経済の足を引っ張ることに加勢したのだ。ポピュリズムの恐ろしさはここにある。ドイツ国民は、選挙でナチスを選んで国を滅ぼした。韓国は、文在寅の近衛兵として与党に大量の議席を与えてしまった。もはや、経済立て直しの機会はなくなった。

 

文大統領の最大の欠陥は、「巧言令色、鮮(すくな)し仁」である。口では上手いことを言っても、仁=真心がない。韓国国民は、この巧言令色に騙されているのだ。他国のことながら、国民が政策の間違いを見抜く眼力を持たなければならないが、「感情8割・理性2割」ではどうにもならないであろう。