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「自由の国」香港が一転、中国本土並みに窮屈な監視の目にさらされることになった。中国当局は73日、「香港国家安全維持法」に基づき香港に設置した当局の出先機関「国家安全維持公署」の署長に、悪名高き鄭雁雄氏を任命した。以下は、『大紀元』(7月7日付)が伝えた。

 

鄭氏は、広東省「民主の村」(烏坎村)の村民による抗議活動を鎮圧したことで知られている。今後、強硬的な手段で香港のデモ参加者も抑え込むとの見方が広がっている。「泣く子も黙る」存在だ。

 

「民主の村」の由来はこうだ。2009年に烏坎村の幹部が私利私欲をむさぼるため、無断で村の土地を不動産開発業者に売却した。村民は複数回、村政府や汕尾市政府に対して、土地売却を撤回するよう陳情した。しかし、当局に対応してもらえなかったため、若い村民20人余りは、2011年9月に大規模な抗議デモを始めた。これが、鄭氏によって弾圧されたのだ。香港の民主化デモと規模は異なるが、民衆の怒りは同じである。

 


『フィナンシャル・タイムズ』(7月6日付)は、「
香港市民の大量脱出 不安げに見つめる台湾」と題する記事を掲載した。

 

(1)「台湾人は、香港の民主化運動に共感を抱いているが、台湾当局は慎重に物事を進めている。中国政府に対する香港の戦いの基地として台湾を売り込むと、台湾がさらに大きな危険に見舞われかねないと意識しているからだ。中国は、台湾は自国の領土の一部だと主張しており、台湾がいつまでも統一を拒否するようであれば侵略も辞さないと脅している。香港の民主化デモの参加者と当局とのにらみ合いが続く過程で、すでに大勢の香港人が台湾に逃げ場を求めてきた。香港中文大学が5月に実施した調査では、移住を検討している香港人の35.%が台湾への移住を希望していることが分かった。亡命者予備軍にとって一番人気の行き先だということだ」

 

香港で移住を検討している人の35.5%が、移住先として台湾を上げている。台湾は、中国から軍事的に脅されているものの、バックに米国が控えている。米中対立の中で、台湾の地政学的な地位は一段と上がっている。米国が、むざむざと中国の侵攻を許すはずがないのだ。

 

(2)「台湾当局の統計によると、2019年に香港から来た5858人が台湾の居住民となっており、その数は18年から41%跳ね上がった。20年1~5月には、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受けて台湾が3月に入境を禁止したにもかかわらず、香港市民からの居留許可申請が前年同期の2倍以上に達した。台湾高官らは、当局が今週、査証(ビザ)申請受け付けを再開した後に、この数がさらに増加すると見ている。

香港の苦境は、台湾の若者の間で強い共感を呼んだ」

 

香港から見た台湾は、「都会度」では一歩も二歩も譲らなければならない。それだけに、香港富豪の移住先にはなりにくい。若者か庶民であろう。台湾の生産年齢人口が増えれば、経済発展は間違いなしだ。ここは、香港から若者を大いに移住させるべきである。台湾南部は、本当に戦前の日本の姿を残している。日本贔屓が多い土地だ。

 

(3)「台湾民主基金会(TFD)の副執行長を務める陳婉宜氏は、「彼ら(若い台湾人)は間違いなく、台湾が安全な避難先になれるように望んでいる」と話す。同氏によると、7月公表されるTFDの年次調査は、台湾の民主主義に対する市民の評価が跳ね上がったことを示している。「香港での出来事が反映されたものと確信している」と同氏は言う。台湾の蔡英文総統は、香港の民主活動家に対する台湾の支持を表明したものの、台湾がもっと多くの人を受け入れられるようにする難民・政治亡命法を求める声には抵抗してきた。その代わり、香港から逃れてくる人の波に対応するため、台湾当局は71日、台湾移住を求める香港人を支援する専門の窓口事務所を開設した」

 

台湾の蔡総統は、派手に香港人受入を表明すると、中国と摩擦を引き起す。それだけに、目立たない形で、香港人を受入れる体制を整えている。

 


(4)「中国で対台湾政策を所管する国務院(政府)台湾事務弁公室は、台湾が逃れてきた香港人に対する人道的支援を保証したことを、「『台湾独立』と『香港独立』の合流」に基づく「分離主義者の策略」だと非難している。だが、台湾の専門家らは、香港と台湾が共同戦線を張って中国政府に挑むという考えは非現実的だと主張している。台北にある淡江大学の張五岳教授は「台湾が亡命中の香港野党勢力のプラットホームになるという考えには、無理がある」と言う。教授はさらに、台湾は香港よりも給与水準が低く、税率が高いため、香港の富裕層や高い技能を持った金融業界幹部が台湾に移住してくる見込みは薄いと指摘する。「今後見るようになるのは、おそらく大勢の若者と学生になるだろう」と話している」

 

米国は、台湾に対して「独立」を叫ばぬように要請している。中国の軍事介入の理由を、わざわざ提供することを控えさせているもの。それだけに、台湾独立と香港独立が共同戦線を張ることはあり得ない。中国共産党が滅びれば、それぞれが独立する可能性を持つとしても、今はそれを具体的に展望できる段階でない。