a0960_008572_m
   


中国は、「法治国」と自称するが、それは真っ赤なウソである。法律はあってもなきが等しい国である。その実態が、香港国家安全法適用で西側諸国にも手に取るように見えて来た。中国にとっては、西側諸国の警戒心を高めるだけで益は一つもない振る舞いなのだ。

 

『ロイター』(7月11日付)は、「香港の世論調査機関に家宅捜索、民主派予備選絡みか」と題する記事を掲載した。

 

香港の独立系世論調査機関「香港民意研究所(POLI)」が10日夕、警察の家宅捜索を受けた。捜索は令状に基づいているが、捜索理由などは確認が取れていない。

 

(1)「警察では、ある調査機関のパソコンがサイバー攻撃を受け、一部個人情報が流出した恐れがあるとの通報を受けたと説明。捜査は継続しており、これまでのところ逮捕者は出ていないとした。香港民意研の鍾庭輝(ロバート・チュン)主任はロイターに対し、捜索令状の根拠について警察と話し合っているとした。区諾軒元議員は、週末に行われる民主派による立法会(議会)選挙の予備選挙が絡んでいると指摘した。鍾氏は中国政府側から繰り返し調査が不正確との批判を受けている。以前は香港大学の世論調査機関に勤務していたが、昨年、独自の調査機関を立ち上げた。香港国家安全維持法(国安法)では、特定の状況で捜査令状がなくても家宅捜索を行うことが認められている」

 

今回の家宅捜索では、警察が令状を用意しているがそれは名目にすぎない。捜査目的は、立法会(議会)選挙の予備選挙が絡んでいると見られている。民主派の進出を阻止する目的である。香港国家安全維持法(国安法)では、特定の状況で捜査令状がなくても家宅捜索を行うことが認められている。これからは、こういう法的手続き無視した捜査を行なうことが起こるのであろう。

 


『日本経済新聞 電子版』(7月11日付)は、「
企業、香港国安法に警戒強める『想定以上に恣意的』」と題する記事を掲載した。

 

香港国家安全維持法の施行に伴い、企業がビジネス上のさまざまなリスクに警戒感を強めている。グローバル企業が米中の間で踏み絵を迫られたり、報道機関やインターネット関連の規制が中国本土並みの厳しさになったりする可能性がある。自由を土台としてきた香港ビジネスは転機を迎えかねない。

 

(2)「条文や実施細則の公表により、専門家からは「想定以上に恣意的な運用が可能で、適用範囲も広いことが分かった」(みずほ総合研究所の玉井芳野氏)との声が出ている。例えば、香港国家安全法31条は「企業や団体も対象」と定め、刑事罰を受けた場合は「営業の停止または免許や営業許可証を取り消す」とする。同法違反とされれば、香港でのビジネス継続が不可能となる。さらに外国人を含め香港外の同法違反も取り締まり対象になる(38条)」

 

香港国家安全法は、企業や団体も対象にしている。同法違反とされれば、香港でのビジネス継続が不可能となる。さらに外国人を含め香港外の同法違反も取り締まり対象になる。これで、香港金融ビジネスは不可能になる。ここまで取り締まるのは、中国経済が危機的状況に陥っている証拠だ。余裕があれば、ここまで厳格になるはずがない。

 

(3)「香港紙『明報』は、「同法違反とされた外国人は、香港に入境した際に拘束されるかもしれない」と指摘する。カナダやオーストラリアは香港との犯罪人引き渡し条約を停止し、自国民に香港への渡航注意を呼びかけた。出国制限や通信傍受など捜査機関に大きな権限を与えるのが43条だ。同条の実施細則によると、当局は捜査令状なしの家宅捜索のほか、ネット情報の削除をプロバイダーに要求できる」

 

カナダやオーストラリアは、香港との犯罪人引き渡し条約を停止し、自国民に香港への渡航注意を呼びかけた。これは、日本も警戒すべきであろう。国内で中国批判を行なっている者は当然、マークされている。例えば、私のような者が香港へ行けば、出国停止処分を受けかねない。中国を批判する言動をした者は、すべからく警戒すべきだ。香港が危ない国になった。

 


(4)「国安法29条で禁じられた「外国勢力との結託」が何を指すかも企業を悩ませる。「政策遂行の妨害」のほか「香港・中国への制裁」などが処罰の対象となり、企業が米国などの制裁措置に従うと、逆に中国から香港国家安全法違反に問われる可能性が排除できない。香港の政治リスクコンサルタントのスティーブ・ビッカーズ氏は、「企業は(米中から)忠誠を示すよう求められる可能性があり、その選択にはコストが伴う」と指摘する。歴史的に中国と関係の深い英HSBCは香港国家安全法への支持を表明したものの、ポンペオ米国務長官に「中国へのこびへつらいだ」と厳しく批判された」

 

下線部のように、米国の対中制裁措置に従った場合、中国から逆に香港国安法違反に問われる可能性も出てきた。こういう天秤を掛けられる状況では、中国市場を捨てざるを得まい。米中に「甘い顔」はできなくなった。

 

(5)「企業のなかでも最も影響が大きいとみられているのが報道機関だ。9条は学校などと並んで「メディアの指導や監督を強化する」とし、54条は「外国メディアの管理強化」を明記した。香港ではこれまで言論の自由が保障され、報道機関は中国本土内では認められない体制批判や中国共産党の内部情報などを報じてきた」

 

香港経由の中国情報は、これから次第に得られなくなろう。情報の壁は、「冷戦化」の特色である。中国が、米中対決で白旗を揚げるまで、「鉄のカーテン」の出現だ。グローバル経済と逆行する動きであり事実上、米中デカップリングが始まる。