テイカカズラ
   

一国二制度破棄の落し穴

他国民の中国批判も処罰

香港ビジネスは衰退必至

超強気の中国外相が白旗

 

中国の習近平政権は、やたらと民族主義を振りかざしている。民族主義とは、自国領土が他国に支配されている場合、その回復を求める政治運動である。中国が、民族主義を煽り立てる客観的な状況にないことは明白である。他国から占領されていないのである。習近平氏は、自分の政治的野心を満たす手段として、この民族主義を利用している。周辺国の領土を侵害し、グローバルな自由世界へ大きな障害をもたらしているのだ。

 

中国経済は、グローバルな世界経済システムの利用により、発展することができた。自由貿易の利益を最大限に吸収して、GDPが世界2位へ上り詰めることに成功した。ここから、習氏の野心が芽生えたのだ。民族主義を悪用して、南シナ海への不法進出を始めたのだ。無意味に、周辺国と軍事摩擦を引き起しているのである。

 

一国二制度破棄の落とし穴

この過程を見ていると、戦前の日本と瓜二つである。日本は、昭和に入って中国・満州へ軍事進出して傀儡政権をつくり正統化した。現在の中国は、南シナ海の9割は「中国領海」と荒唐無稽な主張を始めて、領土拡張に動き出している。2016年7月、常設仲裁裁判所は、中国の主張を100%否定した。「なんら法的根拠はない」とし、中国が敗訴したのだ。それ以後、さらに軍事施設の拡張に乗出すという、許されない不適切行動を展開している。

 

その極致と言うべきは、中国が6月末に中英で交わされた「香港一国二制度」(2047年まで有効)を破棄したことである。新たに、「香港国家安全維持法」を制定して、香港を中国領土に組入れた。その暴走が現在、皮肉にも中国の「運命」を大きく左右する気配となってきた。欧米諸国を中心にして、「反中国熱」が一気に盛り上がっているのだ。

 

習近平氏の最大の失敗は、自身の民族主義がグローバル経済と衝突することに気付かなかったことである。グローバル経済の背後には、自由・平等・人権といった普遍的な価値観が控えている。中国は、この価値観へ無謀にも挑戦したのだ。「香港国家安全維持法」が、グローバル価値観に挑戦した以上、西側諸国はこれを死守せざるを得ない立場になった。中国は、無法国家である。厳重に警戒すべき、危険国家に成り下がったのである。

 


米国は、すでに香港への制裁措置を発表している。一国二制度を前提にして、与えてきた香港への特恵(関税率・輸入品・ビザ発給など)を廃止する意向を表明した。中国では、「香港国家安全維持法」に関わった人物へのビザ発給を規制する。このリストには、王毅外相も入っている。中国指導部の家族では、米国へ子弟を留学させるほか、資産を移している例も多く報告されている。これら資産が、米国によって凍結される恐れも出ており、中国指導部では、大きなダメージを受ける羽目となった。

 

EU(欧州連合)の事実上の盟主であるドイツは、中国と貿易面で強固な関係を築き上げてきた。在任15年になるメルケル首相は、12回も訪中するという「熱の入れ方」である。中国自動車市場では、ドイツ車が外資系としてシェア・トップを維持するなど、中国政府から手厚い支援を受けている。これも、メルケル首相の度重なる訪中が、無形の支援材料になっているはずだ。

 

メルケル首相は、香港問題に対して次のような発言に止まっている。7月初旬の記者会見では、中国との「相互尊重」や「信頼関係」に基づき、香港問題について「対話を模索する」必要性を強調しただけであった。このメルケル発言が、ドイツの与野党から厳しく批判されている。中国批判が足りないという理由だ。『フィナンシャル・タイムズ』(7月7日付)が次のように報じた。

 

「メルケル氏が所属する最大与党キリスト教民主同盟(CDU)の有力議員で、ドイツ連邦議会(下院)で外交委員長を務めるノルベルト・レトゲン氏は、『ドイツ政府が香港について言明したことは最小限にとどまっており、全く不十分だ』と指摘した。連立政権に参加する社会民主党(SPD)の外交政策担当報道官、ニルス・シュミット氏は、『メルケル氏の対中政策は時代に遅れている』とみる。『我々が中国との経済関係を深めるにつれて同国のリベラル度や欧米志向は高まるという発想にいまだに固執している』と同氏はいう。『だが、それは単なる時代遅れだ』」

 

「ドイツ政界の対中強硬派は、メルケル氏は協調の必要性を強調するのではなく、同法を巡って中国政府を全面的に非難すべきだったと語る。彼らはメルケル氏の発言と、英国や米国の厳しい対応とを比較した」(つづく)