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韓国政治は、なし崩し的に北朝鮮化を進めている。教科書から、韓国の高度成長期である「漢江の奇跡」の記述を大幅に縮小させたり、北朝鮮に民主主義が存在するなど、事実と反することを教え込んでいる。韓国の国是は、「自由と民主主義」であるが、文政権になって「自由」を削除して「民主主義」のみにした。こうした小細工を通して、韓国と北朝鮮は、同じ政治システムであると子どもたちに説くことで、南北統一を実現しようという狙いである。

 

韓国と北朝鮮の統一は、短期間に成し遂げられるものではない。天と地ほどの差がある経済的格差や、金ファミリーという「家族政治」が障害になるはずだ。そういう現実面の壁に焦点を当てることなく、夢のような軽い気持ちで南北統一を話題にしている。

 

南北統一を急ぐあまり、日本を踏み段にしている。「日本悪者説」を広く流布して、南北は協力して、日本に対抗しなければならないという空気をつくっているのだ。この流れのなかで、朝鮮戦争の意義を矮小化している。

 

その典型的な例が、朝鮮戦争で北朝鮮軍の猛攻撃を少ない兵力を率いて撃退し、韓国を北朝鮮占領から守ったペク将軍の死に対する目立った冷遇である。韓国が、現在の姿で残っているのは、朝鮮戦争で北朝鮮の侵略を撃退したことにある。米国を核とする国連軍が、北朝鮮・中国義勇軍と戦った結果である。こういう犠牲の上に、現在の韓国が存在する。この歴史を、南北統一という錦の御旗で隠そうとしている。歴史の改ざんである。

 


『朝鮮日報』(7月13日付)は、「2020年大韓民国衰亡史」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の金泰勲(キム・テフン)論説委員である。

 

英国の歴史家エドワード・ギボンは名著『ローマ帝国衰亡史』で、ローマ滅亡の理由に破たんしたローマ精神を挙げた。滅亡を説明した節の名称は「ローマ精神の衰退」だ。次の通り書かれている。「ローマ人は自由と栄光に対する自負心を失い、(中略)自身も知らない間にオドアケルとその野蛮族の後継者たちの王権を承認する準備をしていた」。

 

(1)「今、ここでも大韓民国の自由と栄光に対する自負心を失ったと疑うしかない出来事が起こっている。大韓民国の自由を守るために戦った戦争の70周年を記念する場で、その自由を奪おうとした人々の国そっくりそのままの音楽が鳴り響いた。国会外交統一委員長は「将軍様」という表現が出てくる北朝鮮の童謡を口ずさんだ。私たちがお金かけて建てた建物を北が「報復」という表現まで使って爆破したのに、この国の統一外交安保特別補佐官は「北朝鮮の領土で起こったことなので挑発ではない」という奇怪な主張を展開した」

 

朝鮮民族が、南北に分断されているのは悲劇である。分断を乗り越えるには、北の金ファミリー支配体制を終わらせなければならない。だが、それを待っていると「百年河清を待つ」になる。こういう矛楯から、見切り発車して朝鮮版「一国二制度」をモデル化しようとしている。だが、北が核を保有している中での統一は、韓国が核の人質になることを意味する。こういう厳密な分析をせずに、北朝鮮の童謡を歌ったところで、問題が解決するはずがない。南北統一を、浮ついたお祭り気分で促進させようという「戦略」であろう。

 

(2)「生徒たちが学ぶ教科書は民主主義を「人民」が支配する統治形態だと教える。「人民」は「民衆」と共に階級的な意味合いを持つ。そうした点で、人民に関する教科書の叙述は「民主主義は国民すべてが享受する価値」であることを明言した大韓民国のアイデンティティーに対する挑戦だ。全羅北道選挙管理委員会が公式ブログに「北朝鮮は民主主義国家」「私たちとほぼ同じ(選挙)原則を持っている」という文をなんと2年間も掲載し、最近削除された事実も明らかになった。3代世襲のための見せかけに過ぎない北朝鮮の選挙を民主主義で包んだ。

 

韓国の南北統一派は、北朝鮮の問題点に目を塞いでいる。あたかも理想郷のように扱っている。ここに、南北統一の危険性が潜んでいる。

 

(3)「このような主張が勢いを得れば、国民の支持を正統性の根拠と見なす大韓民国の民主主義は立つ瀬がなくなる。そうする間に私たちの国家的自負心は崩れつつある。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を「偉人」と呼ぶ、まともではない若者グループはこうしたあらゆる形態の産物であって、空から突然降ってきたわけではない。

 

韓国は、朝鮮戦争という犠牲を払って民主主義を守った。韓国進歩派は、その貴い犠牲を評価せず、北朝鮮を理想郷のように扱っている。何とも言えない愚かさを感じるのだ。盲目的な南北統一論である。

 

(4)「北朝鮮の童謡を歌った与党・共に民主党の宋永吉(ソン・ヨンギル)議員は、「在韓米軍は韓米同盟軍事力のオーバーキャパ(過剰)ではないか」と南の心配をしてくれる発言をした。大統領はさらにその上を行った。「北朝鮮より50倍もいい暮らしをしているから、南北の体制競争は終わった」と勝利を宣言し、「共にいい暮らしをしようと思う」という言葉で国民の警戒心を崩した。人口2000万人の大国ローマが、たかだか100万人のゲルマン人に滅ぼされた歴史を知らないで話しているのだ」

 

北朝鮮が核を離さない理由は、核で韓国を脅す手段に使う意図であるからだ。北が核を放棄すれば、同じ民族として協力すればいい。核が、北朝鮮の最終兵器として韓国の頭上に釣り下げられているのだ。文大統領は、この危機の構図を忘れている。