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豪州は、貿易面で中国と深い関係にあるが、中国共産主義の浸透を最も警戒するようになった。それまでは、中国の資金を受入れてきたものの、豪州政治家を買収して中国政策を受入れるように工作したことが発覚。にわかに中国警戒論に傾いた。

 

かつて日本の潜水艦技術導入が、ほぼ決まった段階でフランスに契約を取られる一件があった。この裏に、中国資金が介在して日本技術導入を阻止したと見られている。豪海軍が、世界最新鋭の日本潜水艦技術で武装される場合、海上自衛隊の潜水艦と合せて強力な布陣となるので、これ恐れた結果とされる。

 

『大紀元』(7月14日付)は、「中国とのデカップリングは自由を守るため必須ー国際戦略家」と題する記事を掲載した。

 

オーストラリアの国際戦略家は、近い将来、世界が冷戦時代のような自由主義圏と共産主義圏の2ブロックに分断される可能性が高いため、各国は中国への依存度を低くし、より強い対応力を構築する必要があると同国議会の質疑応答で述べた。

 

(1)「政策研究組織コグノセンティのアラン・デュポン氏は72日、豪州議会の外務・防衛・貿易合同常任委員会で、米中間の経済的・政治的緊張の高まり(特に貿易戦争、台湾、南シナ海)について、世界経済の「デカップリング」を加速させ、2つの地政学的ブロックの形成を見ることになるだろうと述べている」

 

世界経済が、米中デカップリングになることは不可避とみられる。南シナ海問題や台湾問題で、米中は軍事的に対決する時期が来ると予測される。それに備えて米中が、それぞれ地政学的なブロックを形成すると見られる。

 


(2)「国際問題の専門家であるデュポン氏は、中国ブロックには、ロシア、イラン、北朝鮮、中央アジア、中東、アフリカ、南米などの地域の「権威主義的」なブロックを主導する可能性が高いと述べた。もう一つの米国ブロックには、北米、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アフリカの一部の民主主義国が含まれることになるだろう。デュポン氏は、オーストラリアは「確実に」米国に味方するだろうと指摘した」

 

米国ブロックは、北米、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アフリカの一部の民主主義国が含まれることになるという。日本・豪州・インド・台湾はむろん米国ブロックだ。南シナ海で中国と対立する国々は、米国ブロックに入る。韓国はどうするのか。落ち穂拾いを狙って、米中の狭間でウロウロしているのだろう。

 

(3)「デュポン氏は、貿易関係は「第二次冷戦、つまり現在進行中の冷戦においては流動的」だと述べた。貿易が各政治ブロック内に限定されていた初代冷戦(1947~1991年)に比べれば、「分裂を超えた多くの動き」がある。しかし、分裂が起これば、国が米中の各陣営を「またぐ」ことができる可能性は低く、いっぽうのブロックに依存することになると指摘している。「分裂が定着し、硬直化すればするほど、各国が貿易に自由な選択ができなくなり、両陣営に留まり続けるだろう」とし、「どちらの陣営に所属するかは、各国が戦略的な決断をしなければならない時期が来るだろう」と述べた」

 

TPP(環太平洋経済連携協定)が、参加国を増やすはずだ。米国も復帰して、一大「脱中国市場」を形成する。中国市場を失っても、世界最大の米国市場に直結できるメリットは計り知れない。「中国ブロック」の比ではないのだ。

 


(4)「委員会では、新型コロナウイルスがオーストラリアの外交、防衛、貿易に与える影響のほか、サプライチェーンの脆弱性と国際貿易関係に関連する問題が議論された。デュポン氏はオーストラリアに対し、サプライチェーンの脆弱性を調査するよう求めた。「私の見解では、さまざまな重要技術や商品を中国に依存していること自体が、安全保障上の大きな負債となっており、これを修正しなければならない」と述べた」

 

豪州は、TPPの一員であるから世界サプライチェーンの脆弱化の弊害をカバーできるはず。深刻になる必要がないであろう。

 

(5)「4月、スコット・モリソン首相が、中共ウイルスの由来の調査が必要と主張したのち、北京は脅迫的な貿易制裁を始めた。中国共産党政権は、オーストラリア産大麦の輸入に80%相当の関税を課し、牛肉の輸入禁止、中国国内の発電所にオーストラリア産石炭を買わないように勧告するなどした」

 

中国は、すでに豪州へ経済制裁を加えている。ここで、豪州が節を曲げて迎合すれば、世界の笑いものにされる。

 

(6)「モリソン首相は7月10日、中国共産党が香港の国家安全維持法を成立させたことを受けて、香港との容疑者引渡し条約の停止や香港市民へのオーストラリア滞在ビザの拡大を決定した。これに対して、中国外務省は「内政干渉」「すべての責任はオーストラリアが負うことになるだろう」とさらなる制裁措置をちらつかせた。こうした背景から、オーストラリアの政治家たちはデカップリングの拡大と中国市場への依存度の低下を求めている」

 

豪州は、「脱中国市場」で新たな市場開拓に努めるべきだ。対抗策は、それしかない。

 


(6)「デュポン氏は、オーストラリア議会に提出した調査報告書で、中国共産党はすでにデカップリングの形を取ってきたと主張している。「中国は長年にわたり、慎重に依存関係を回避し、保護的な貿易障壁を作り、レアアースや医薬品から先進的な製造業に至るまでの経済の戦略的分野を支配する態勢を整えることによって、デカップリングの形をとってきた」

 

中国が、強力な保護主義国家であることは有名である。ただ、米国との貿易(とりわけ輸出)がなければ、「一帯一路」で資金をばらまく「元手」が得られない。こうして「中国ブロック」は、米国市場への接近が困難になって米ドルが入手できず、いずれ瓦解の運命だろう。米中デカップリングは、米国の勝利で終わるはずである。基軸通貨が、米ドルであるためだ。