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さすがの文政権も、今年の韓国経済がマイナス成長必至とされる中で、最低賃金引き上げ率をセーブするほかなかった。来年の最低賃金引き率は、過去最低の1.5%に止まったからだ。零細企業は引下げ要求であったが、それでも小幅の引上げを行なった。

 

『ハンギョレ新聞』(7月14日付)は、「韓国、来年の最低賃金777円、引き上げ率1.5%で史上最低」と題する記事を掲載した。

 

2021年の最低賃金は、時給にして今年より130ウォン増額の8720ウォン(約777円)に決定した。引き上げ率1.5%は、1988年に最低賃金制が導入されて以来、最も低い数値だ。

 

(1)「最低賃金委員会は、14日午前2時ごろまで行われた第9回全員会議で、公益委員全員と使用者委員の一部など16人が出席した中、公益委員らが提示した時給8720ウォン案を表決に付し、9対7で可決した。これは今年の8590ウォン(約765円)から130ウォンの増額で、月給(209時間)換算では182万2480ウォン(約16万2000円)になる。今年の179万5310ウォン(約16万円)から2万7170ウォンの増額だ。労働者委員9人全員と使用者委員2人は表決前に退場した」

 

日本の来年の最低賃金は、7月末に発表される。韓国は一足早く決まった。それによると、来年は1.5%アップになる。日本の最低賃金は、2019年10月から東京1013円、神奈川1011円である。韓国の場合、来年が8720ウォン(777円)になる。ただ、韓国の時給が月給換算の場合、土日の休日手当も含まれている。単純に時給ベースでは、日韓を比較できない。

 

(2)「この日の可決後、パク・ジュンシク最低賃金委員長は記者団に対し、「今年は予想できない不確実性が昨年よりはるかに高い状況で、労働市場と持続可能な雇用を守ることが最も重要な政策的優先順位に置かれなければならないと判断した」とし、「最後に労働者委員と小商工人委員が退場して残念に思うが、国家的に克服しなければならない危機状況で労・使・公益委員が知恵を集めるために最善を尽くした」と述べた。また、公益委員幹事のクォン・スヌォン淑明女子大学教授(経営学)は、「今年の経済成長率の展望値0.1%と消費者物価上昇率0.4%、生計費の改善分1.0%を合算したもの」と今回の決定の根拠を説明した」

 

最低賃金引き率1.5%の根拠は、次のようなものだ。

(今年の経済成長率の展望値0.1%)+(消費者物価上昇率0.4%)+(生計費の改善分1.0%)を合算したものだという。

今年のGDP伸び率予想はマイナス2%台である。最賃では、これを0.1%と見ているが過大想定であることはいうまでもない。ただ、最賃でマイナス想定ができないという制約が加わって「0.1%」とプラス想定になったのであろう。この局面で、すでに「2%」のゲタを履いている。韓国の最低賃金引き率を合理的に計算すれば、引下げなければならないはずだ。

 

下線部では、「持続可能な雇用を守ることが最も重要な政策的優先順位に置かれなければならない」としている。韓国では、雇用主が最賃引き上げを遵守しなければ罰則が付く。雇用主は、過大な最賃引き上げについていけないとなれば、解雇して罰則を免れる方法を取る。今回の1.5%の最賃引上が、解雇を増やす要因になりかねないのだ。

 


(3)「文在寅政権の発足後、最低賃金は2018年に16.4%、2019年に10.9%と2年連続2ケタの引き上げ率を記録した。その後は、2020年に2.87%となり大幅に縮小したのに続き、来年は1.5%と再び急落した。引き上げ率1.5%は、金融安定化時代の1998年9月~1999年8月の時期に適用された2.7%や、金融危機時の2010年期に適用された2.75%よりも低い数値だ。昨年から本格化した「最低賃金の速度調節」に今年の新型コロナ危機という状況が重なったとはいえ、二年連続1ケタの引き上げ率の決定には、労働界の激しい反発が予想される

 

ハンギョレ新聞は、労働の味方に立っている。二年連続1ケタの引き上げ率の決定には、労働界の激しい反発が予想されるとしている。だが、労働生産性が上がらなければ、いくら過去最低の引上げ幅といえども、経営的には大きな圧迫要因で、解雇増は不可避なのだ。なぜ、こういう単純な理屈が分からず、労働側を説得するような論調が書けないのか不思議だ。大学で、経済学の初歩を学ばなかったのだろう。

 

(4)「前日午後、いち早く退場した全国民主労働組合総連盟(民主労総)に続き、低い水準の最低賃金引き上げに反発し同日午前120分に退場したイ・ドンホ韓国労総事務総長は、「このような惨憺たる最低賃金案が出た事例はなかった。公益委員自ら大韓民国最低賃金の死亡宣告を下した」と評価した。使用者委員のうち小商工人連合会のオ・セヒ、クォン・スンジョン副会長は、削減案でないという理由で退場した」

 

労働側は、「最低賃金の死亡宣告」と捨て台詞を吐いている。使用者側は、最賃削減減でなければ飲めないと退場した。生産性を無視する最低賃金引き上げは、それ自体、継続不可能である。その意味で、韓国の最低賃金制はすでに死亡しているのだ。