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ファーウェイ(華為技術)は、米国による輸出禁止措置が、時間とともにボディーブローのように経営へ効いてきた。具体的には、ドル資金の調達が難しくなってきたことだ。ファーウェイは当初、米国による制裁影響は軽微であると高を括ってきた。それは、やせ我慢に過ぎず、海外企業へ自社保有特許の販売を模索し始めている。

 

『ロイター』(7月20日付)は、「『飢餓』が迫るファーウェイ、頼みの資産売却も望み薄」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は英米両国から新たな締め付けを受けており、創業者の任正非最高経営責任者(CEO)は知的財産の売却を検討している。しかし海外にはファーウェイの知財、あるいは携帯機器や通信設備事業の買い手はほとんどいない。中国政府も英米への屈服と受け取られるような売却を認めないだろう。ファーウェイは海外での資産売却が進まず、「飢餓状態」に陥りそうだ」

 

米国政府が、ファーウェイへの輸出禁止措置を発表してから、ちょうど1年が経つ。当時の記事によれば、ファーウェイと言えども米国の技術とソフトに依存しているから、いずれ大きな痛手を受けるだろうと予測されていた。ファーウェイは、中国経済の将来を担う中核企業である。それだけに、米国は必殺の技を繰り出したと言うべきである。米国の「知略」に負けたのだ。

 

(2)「米中対立を回避する任氏の試みは頓挫した。ファーウェイは民間企業だとの訴えにもかかわらず、中国の外交筋は同社の商業的利益は中国政府の外交問題と不可分との方針を明確にした。また中国政府は、英政府がファーウェイ製品の国内移動通信システムからの除外を求める米政府の圧力に屈すれば、報復措置を取ると警告していた。英政府は最終的に米国の要求を受け入れた」

 

ファーウェイは、社員株主制を取っていると強弁してきた。だが、米国法学者の分析によって、実態は国有企業であると見抜かれている。米国は、豪州の助言でファーウェイへ最初の制裁を加えた。英国も、今回の新型コロナウイルス事件と、香港問題で米国に同調してファーウェイ5Gの不採用に踏み切った。英国は、香港の「一国二制度」破棄で煮え湯を飲まされたことで、「中国不信」が深まっている。

 

(3)「ファーウェイ事業のかなりの部分が、こうした措置の標的となる。同社は2019年の売上高1230億ドル(約13兆1610億円)の40%余りを海外が占めた。しかし、同社製スマートフォンは米グーグルのアプリが利用できなくなり、幹部は米国のビザを取得できず、米国が圧力をかけ続けるのも確実で、企業価値を守るため、海外資産売却が一段と重要な検討課題になっているように見える」

 

ファーウェイの売上高の4割強が、海外売り上げである。この部分が、米国の「猛攻撃」で

大きな減少を迫られている。企業価値(株価)を維持するには、海外事業を売却する必要に迫られている。まさに、米国による「絨毯爆撃」の被害が大きく広がってきたのだろう。

 

(4)「第5世代(5G)通信関連の知的財産を売却するという案は、任氏自身が昨年持ち出したものだ。米国に5G通信分野のトップ企業はないが、例えばシスコなどの企業がファーウェイから特許を手に入れれば、市場で代表的な企業になるかもしれない。米政府は中国の原発技術で同じような政策を取った。ただ、米当局者はこうした見方を否定した」

 

ファーウェイは、5Gにからむ知的財産の売却を模索している。米企業に売却して資金回収を図る狙いだ。米政府は、こういう動きを否定している。

 

(5)「ファーウェイは海外の通信機器事業を韓国のサムスン電子に売却しようとするかもしれない。顧客はファーウェイのことは脇に置き、エリクソンとノキアの2強による通信機器市場の寡占状態を防ぐためにサムスン電子をとにかく歓迎するだろう。最大の問題は中国国内の世論だ。ファーウェイが資産を売却すれば、米政府はファーウェイと、その延長として中国政府が敗北を喫したと大騒ぎするだろう。中国政府には受け入れ難い展開だ

 

ファーウェイは、資金繰りで行き詰まっている。仮に、海外企業に資産を売却できる見通しができても、中国政府は米国に屈したものとして受け付けないだろう。となれば、中国政府がファーウェイに対して、資金繰りの面倒を見ざるを得まい。苦しい局面である。

 

(6)「ファーウェイが、海外の携帯端末事業を手放さないのはこのためともいえる。同社製端末はグーグル製アプリが使えず、機能不全に陥っている。ファーウェイは代わりに独自の基本ソフト(OS)「ハーモニー」の導入を進めているが、グーグル製OS「アンドロイド」から大きなシェアを奪うことはなさそうだ。軍歴を持つ任氏がたとえ「降伏」を望んでも、「司令官」である中国政府がそれを許さないだろう」

 

中国政府は、ファーウェイが民間企業である、と言い続けてきた。だが、ファーウェイの海外事業の売却は、中国のプライドがかかるとして拒否する方向である。ファーウェイは、この間にたって迷走せざるを得なくなった。