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三峡ダムは、「千年の大計」「1万年に一度の洪水に備える」などをうたい文句で、多くの遺跡や100万人余りの住居を埋没させる犠牲を払って建設された。その三峡ダムについて、「完成以降に大洪水が発生するたびに、その洪水抑止能力に対する疑問の声が高まっている」状態だ。三峡ダムへの信頼感はすっかり揺れている。

 

「仏国際放送局」(7月20日付)は、「三峡ダムは大丈夫か、中国メディア『位置のずれ、漏れ出し、変形など発生』」と題する記事を掲載した。『レコードチャイナ』(7月20日付)が転載した。

 

仏国際放送局RFIの中国語版サイトは、豪雨により警戒水位を突破している三峡ダムの安全性に疑問の声が出ていると報じた。

 

(1)「記事は、豪雨により三峡ダムの水位が18日現在で160.17メートルに達し、警戒水位を15メートル余り超えていると紹介。下流への放水量が増加する中で、これを上回るペースでダムに水が入っており、21日には再び大規模な水の流入が予想されていると伝えた。記事によると、国営の新華社は18日に「主な数値は正常範囲内で、各種安全指標は安定している」ことを強調した一方で、三峡ダムに位置のずれ、漏れ出し、変形などが発生していることがデータによって明らかになったと報じた」

 

中国国営の新華社が、「三峡ダムに位置のずれ、漏れ出し、変形などが発生していることがデータによって明らかになった」と重要事項を指摘している。これは、重大な情報だが、その意味には触れていないのだ。不安を煽るだけの無責任情報である。

 


(3)「三峡ダムの洪水防止能力について、中国水利部長江水利委員会のチーフエンジニアは「三峡プロジェクトは長江の氾濫防止体系の柱であるものの、それだけで万事解決されるわけではない。長江中下流で洪水の心配がなくなるわけではない」と語った。このほか、中国工程院院士で水資源学者の王浩(ワン・ハオ)氏は、「三峡ダムは長江中下流の主要河川の洪水のみを防ぐことができ、支流の洪水問題は解決できない。支流は支流上のダムで調節するしかない」との見解を示し、長江中下流の多くの地域で発生している深刻な水害は「排水システムが不十分であることを露呈するものであり、三峡ダムのせいにすることはできない」と説明したという」

 

三峡ダムは、なんら問題がないというのが政府側の答弁である。果たしてそうだろうか。次の記事が、三峡ダム神話に疑問を呈している。

 

『ロイター』(7月14日付)は、「中国三峡ダムの治水効果に疑問の声、大雨で長江流域が最高水位」と題する記事を掲載した。

 

中国で記録的な大雨による洪水や土砂災害の被害が広がるなか、長江にある巨大な三峡ダムの治水効果に改めて懐疑的な目が向けられている。中国政府は三峡ダムが洪水を抑制しているおかげで、経済的損失は最小限にとどまり、死者や避難者の数も少なく収まっていると主張。しかし、専門家などは、長江やその流域にある大きな湖が観測史上最も高い水位を記録しているのは、同ダムが所期の目的を果たしていないからだと指摘する。

 


(4)「米アラバマ大学で中国の洪水を研究する地理学者のデービッド・シャンクマン氏は、「三峡ダム建設の主な目的の1つは、洪水抑制だった。近年は、完工から20年も経っていないのに最高洪水量が記録された」と述べ、「結局、今回のような異常な事象は阻止できない」とした。

 

三峡ダムが、異常気象下で洪水抑制機能は果たせないことを証明したと海外研究者が指摘している。この点は、重要である。

 

(5)「一方、中国水利省の葉建春副大臣は13日のブリーフィングで今年は三峡ダムなどの貯水施設からの「綿密なスケジュール」に沿った放水が洪水の抑制で効果を表してきたと述べた。同氏によると、647億立方メートルに上る洪水の水が2297カ所の貯水池にためられており、このうち29億立方メートルは三峡ダムにあるという。三峡ダム事業の運営会社も11日に、7月6日以来、下流での放水量を半分に絞っており、「長江の中流および下流域での水位上昇のスピードと範囲を効果的に抑制してきた」と説明。洪水による貯水量は三峡ダムの貯水容量の88%に達したことも明らかにした」

 

中国政府は、洪水抑制機能を発揮していると主張している。洪水による貯水量は、三峡ダムの貯水容量の88%に達したという。

 

(6)「放水量の調節にもかかわらず、長江流域の一部とその支流、鄱陽湖や洞庭湖のような大きな湖の水位は観測史上最高に達した。巨大ダム事業に批判的な中国の地質学者、Fan Xiao氏は三峡ダムの貯水容量は、平均的な洪水量の9%未満にしか満たないと指摘。「上流の洪水を部分的かつ一時的に抑えることしかできず、長江の中流や下流で大雨による洪水が起きても何の助けにもならない」とした

 

中国の地質学者Fan Xiao氏は、三峡ダムの貯水容量が平均的な洪水量の9%未満にしか満たないと、政府見解の88%と真っ向から対立する。上流の洪水を防いでも、中下流の洪水には無関係という。

 

(7)「中国の地質学者はさらに、三峡ダムなどの大規模ダムは、長江下流で土砂が堆積する流れを変えることで洪水を悪化させる可能性もあるという。三峡ダムで行われている水力発電も洪水を抑制する機能を弱めているとした。アラバマ大学のシャンクマン氏は、気候が正常な年は三峡ダムも洪水の抑制で効果を発揮する。異常気象への対応力は、以前から十分でない可能性が明らかだったと語った」

 

三峡ダムの建設で、下流は土砂が堆積して水の流れを変える結果、洪水を悪化させていると指摘している。三峡ダムの水力発電が、洪水を抑制する機能を弱めているともいう。気候が正常な年は、三峡ダムも洪水の抑制で効果を発揮する。異常気象への対応力は、以前から十分でない可能性が明らかだったと指摘しているのだ。

 

これでは、三峡ダムが無用の長物であることを意味する。異常気象下で、洪水抑制機能がないとの結論になるからだ。