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米国が、中国ヒューストン総領事館に閉鎖命令を出した理由が明らかになった。中国が、ヒューストンにある米国国立研究所のワクチン開発研究成果をスパイする目的で動いていたことが露見したもの。米国務省が正式発表した。基礎研究基盤のない中国が、米国と張り合う悲劇がこういう恥ずかしい形で表面化した。

 

『ロイター』(7月25日付)は、米、中国総領事館は最悪の違反ケースコロナ研究スパイかと題する記事を掲載した。

 

米政府高官は24日、中国が米国内の在外公館を通じスパイ活動など悪意ある行動に従事しているとした上で、同日閉鎖されるテキサス州ヒューストンの中国総領事館は「最悪の違反ケースの一つ」で、関与していた活動は「容認できる線を超えていた」との認識を示した。

 

(1)「国務省の高官は、ヒューストン総領事館の活動が、中国の進める新型コロナウイルスワクチンの研究に関連していたと指摘。中国がコロナワクチン開発競争で首位に立ちたいという意志は極めて明確と述べた。同高官は標的となっていた可能性のあるワクチン研究の詳細には踏み込まなかったものの、テキサス州には国立アレルギー感染症研究所の主要施設に相当するガルベストン国立研究所があり、同所ではコロナワクチンの研究が行われている

 

中国は、コロナワクチン研究の成果が欲しくて大掛かりスパイ活動を展開していた。それが摘発されたもの。中国のこうした不祥事は、米国の一層の対中警戒心を強めるだけだ。

 


(2)「米政府は今週、ヒューストンの中国総領事館閉鎖を命じた。米国の知的財産権と個人情報の保護が目的と説明していた。中国政府はこの日、対抗措置として、四川省成都市にある米総領事館の閉鎖を通知したと発表した。司法省の高官は、いずれの国であれ領事館が一定の情報活動の拠点となっているという事実は受け入れるとしつつも、「ヒューストンの中国領事館の活動はわれわれが容認できる限度をはるかに超えていた」と語った。同時に、領事館関係者には外交特権が認められているため、刑事責任の追及は容易ではないとの見方を示した。同高官はさらに、当局が在サンフランシスコ中国総領事館に逃げ込んだ中国人研究者を拘束したと明らかにした」

 

米司法省は23日、中国人民解放軍との関係を伏せて米国ビザ(査証)を不正に取得したとして、中国人4人を訴追したと発表した。米国の研究機関の情報を中国に渡すなどしていたという。米政府当局者は24日、4人とも身柄を拘束したと明らかにした。司法省は声明で「中国共産党が私たちの開かれた社会を利用し、学術機関を不当に利用したことを示す例だ」と指摘した。司法省高官によると、米国が中国に閉鎖を要求した南部テキサス州ヒューストンの中国総領事館は、この4人を含む中国人の情報収集活動を支援していた

 

4人のうち1人は女性で、カリフォルニア州サンフランシスコの中国総領事館に逃げ込んでいた。このニュースは、本欄で取り上げた。別の人物は、米国で勤めていた大学の研究機関を再現するための情報を持って帰るよう指示を受けていた。米連邦捜査局(FBI)はすでに25以上の都市で中国軍との関係を隠してビザを得た疑いのある中国人に追加で事情聴取をした。

 

ポンペオ米国務長官は6月1日、中国による技術や知的財産の窃取を防ぐため、中国人民解放軍とつながりのある中国人の研究者と大学院生への査証(ビザ)発給を停止し、入国を制限すると発表した。ポンペオ氏は声明で「米国の学術機関や研究施設から軍事目的のために、われわれの技術と知的財産を不正に取得しようとする中国の試みを容認しない」と強調した。

 

以上のように、米国は6月1日からビザ発給を厳しく制限していた。これをかいくぐって入国した中国軍関係者が起訴されたもの。

 


(3)「法廷文書によると、この研究者はカリフォルニア大学デービス校に勤務し、米国ビザを不正に所得した疑いが持たれている。司法省は前日、連邦捜査局(FBI)が国内約25都市で中国人民解放軍メンバーとみられる中国籍の米国ビザ保有者を聴取し、ビザに関する詐欺行為の疑いで3人を逮捕し、4人目が在サンフランシスコ中国領事館に逃げ込んでいるとしていた」

 

米国は、ネズミ一匹通さない厳重な「水際作戦」である。貴重な米国の研究が窃取されることは安全保障上、一大事である。ここまで取り締まっても中国スパイは潜り込もうとしているのだ。厄介な相手である。