あじさいのたまご
   

2008年のリーマンショックでは、中国が4兆元という超大型投資で世界経済の回復を牽引した。今回のパンデミック下では、世界経済を牽引する力を喪失している。完全な「張り子の虎」であり、早くも老大国と成り下がった。

 

中国が、現下の景気後退に対して受け身になったのは、08年の財政大盤振る舞いが、その後の中国経済を脆弱化させたという深刻な反省に基づく。不動産バブルを生み出し、国民は未だに「不動産神話」に取りすがっている状態である。こういう不正常が、中国経済の寿命を縮めているという認識に変わったのであろう。中国も、ようやく精神的に「大人」の域に足を踏み入れたと言えそうだ。

 

『大紀元』(7月27日付)は、「李首相、財政難で地方政府に『倹約生活』を要求」と題する記事を掲載した。

 

中国の李克強首相は7月23日、国務院(内閣に相当)の会議で、地方政府に対して、財政難に耐え倹約するよう再び指示した。中国当局が財政的・経済的に苦境に陥っている現状を浮き彫りにした。

 


(1)「李首相は今年5月に行った政府活動報告において、「過緊日子(耐乏生活をする)」との表現を使った。首相は、「今年、中央政府は緊急ではない、または必要ではない支出を50%以上減らし、地方政府も予算を削減しなければならない」と述べた。首相は5月と同様に「耐乏生活をする」と述べたうえ、「経済の下振れと財政難」の現状に言及した。同氏は、各レベルの地方幹部に対して、「倹約を習慣にするように」と要求した。中国国営新華社通信などの各メディアも7月中旬、「財布の紐を締めよう」などと宣伝し始めた」

 

経済政策の原理から言えば、不況時こそ財政支出拡大が不可欠である。中国当局は、この原理を今回は適応できないほどの財政難に陥っていることを証明している。中国は、これまで「土地本位制」という不動産価格引上げで回転してきた。現在はもはや、その手を使えないほど、弊害が随所に顕在化している。国民の「不動産神話」が、どうにもならないほど膨張しきっているのだ。

 

この不動産神話は、いずれ崩壊する。際限ない住宅価格の上昇はあり得ないのだ。現在の空き家は5000万戸。住宅の過剰供給に嵌まっているのだ。庶民は愚かにも、この現実に気付かず「浮利」に酔いしれている。合理的な判断力を喪失している。

 

(2)「今年、各レベルの地方政府の財政収入は大幅に減少している。中国当局の公表によると、上半期において、中央政府の公共予算の収入は前年比で14%減少し、地方の一般公共予算の収入は同7.%減少した。全国の税収と非税収は前年比で、それぞれ11.%と8%の減少となった

 

全国の上半期の税収と非税収は、前年比でそれぞれ11.%と8%の減少となった。ロックダウンを行なうほど厳しい制約を課した結果だ。だが、この程度の減収に止まったのか、疑問は残る。

 


(3)「中国メディア「21世紀経済報道」によれば、7月23日までに国内24の省が財政収入を発表した。そのうち20省は、新型コロナウイルスの感染拡大で、上半期の財政収入が前年比でマイナスとなった。輸出産業が盛んな広東省、江蘇省、浙江省はそれぞれマイナス5.8%、マイナス2.8%、マイナス2.6%となった。最大の経済都市上海市と政治中枢の北京市の上半期の財政収入は前年比で、それぞれマイナス12.2%とマイナス11%である。また、ウイルスの発生源である湖北省の財政収入の下げ幅は38%超。下げ幅としては各省の中で最も大きい」

 

このパラグラフでは、地方政府の税収が軒並み落込んでいる実態を縷々、指摘している。上海市の上半期は、前年比マイナス12.2%。北京市は、同マイナス11%である。果たして、この程度の落込みで済んでいるのか疑問は残る。

 

今年の中国GDP成長率は、せいぜい前年比1%程度に止まるという見方が増えている。悪ければマイナス成長も覚悟しているようだ。となれば、財政支出を拡大しても体勢挽回の切り札にならないという諦めであろうか。専制政治ゆえに、最終的には国民の不満を権力で踏み潰すという覚悟を固めている。

 

(4)「中国当局は各地方政府に「倹約」を呼びかける一方で、国民を監視し各地の住民の抗議活動を鎮圧する「社会安定維持費」の確保を要求している。大紀元はこのほど、河北省保定市政府が今年5月20日、市管轄の各区政府に送った内部文書を独自に入手した。文書は、「警察機関の公費を十分に保障するように」「県レベルの警察機関であれば、各地の派出所に優先的に公費を支給すること。2020年、1級地区では(警官)一人当たり5万元(約76万円)、2級地区は一人当たり4万元(約60万円)、3級地区は一人当たり3万元(約45万円)を支給する」などと明記している

 

中国政府は、公共支出を抑制し財政バランスを取ることに腐心している。これは、人民元投機を回避する目的であろう。国債格付けの悪化が、通貨危機を招くので、早くもマジノ線を敷いているように見える。ただ、これに伴う国民の不満は拡大するので、警察官に手当を増やして危機乗切り策に出ている。中国は、これまでの経済的ゆとりを失っており、急速に守りの姿勢へ転じた。