ムシトリナデシコ
   

世界の医薬品企業は、新型コロナウイルス・ワクチン開発でしのぎを削っている。中でも最有望候補が、英国のオックスフォード大学と米国のモデルナ社である。WHO(世界保健機関)から、折り紙付きである。

 

オックスフォード大は今月20日、ワクチン候補「ChAdOx1」の第1段階の臨床試験(治験)で有望な結果が出たと発表した。ワクチンを投与すると、抗体と免疫細胞が生成され、新型コロナウイルスを認識して無効化することが示されたという。『フィナンシャル・タイムズ』(7月24日付)が報じた。

 

同紙によると、オックスフォード大学のワクチン研究開発リーダーであるギルバート教授は、今回のワクチンが治験から実用化に至るかどうかや実用化の時期については明言を避けている。3つの不確実な要素があるからだと彼女は説明している。

1つ目、治験の結果がいつ出るかが分からない点だ。これはブラジルや南アフリカ、米国など治験を実施している地域でのウイルスの流行具合に左右される。

2つ目、アストラゼネカなど生産パートナーが量産体制を築く必要がある。

3つ目、規制当局がワクチンについて、十分有効で承認基準を満たすと判断する必要がある。米食品医薬品局(FDA)は新型コロナのワクチンの承認基準を有効度50%と定めている

 

オックスフォード大の研究チームは、全てが順調に進めば、同大のワクチンは年内に最も優先度が高い人に提供され、21年には大量供給できる体制が迅速に築かれるとの見通しを示している。

 

『ロイター』(7月27日付)は、」米モデルナ、コロナワクチン後期治験開始、3万人対象」と題する記事を掲載した。

 

米バイオ医薬大手モデルナは7月27日、開発中の新型コロナウイルス・ワクチンについて、米政府の支援を受けた後期治験を開始したと発表した。トランプ政権が進めるワクチン開発促進策「オペレーション・ワープ・スピード」の下で初となる。

 

「モデルナは後期治験で、ワクチン候補「mRNA─1273」を呼吸器疾患がない3万人の成人に接種。2回の接種で症状の抑制や死亡率の低下に効果があるか確認する。1回の接種で症状抑制に効果があるかについても確認する。モデルナは2021年から年間最大10億回分のワクチンを供給できるようになると予想。後期治験開始が伝わったことを受け、株価は寄り付き前取引で11%高の81.31ドルとなっている。

 

3万人規模の治験が始まった。米国政府が全面的な協力の下で行なっている。FDAは、「有効度50%」でワクチンとして認めるというので、その成果に大きな期待がかかっている。

 


一方、中国のワクチン開発はどうなっているか。中国は、ヒューストン総領事館が米国のワクチン開発の大掛かりなスパイ活動を行なっていたとして閉鎖を命じられた。不名誉この上ない話だ。

 

中国のワクチン開発における悩みは、前記のようなスパイ活動を必要としているほかに、最近の中国での新規感染者数激減にあるという。この新規感染者数の少なさが、中国が最終治験を行ないたくてもできない理由とされる。そこで、このフェーズ3を省略して、人民解放軍で試験が行なわれている。

 

中国は、こういう物理的な理由で最終的治験ができなければ、「ワクチン完成品」にはならないであろう。英米の開発チームが有利な立場にありそうだ。