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大言壮語するものではないという見本が、中国主導で設立したAIIB(アジアインフラ投資銀行)である。中国経済が、絶頂期を過ぎた2016年1月に発足した。当初は、日米主導で設立したADB(アジア開発銀行)を追い抜くという思惑で、日米に内証で設立計画を進めていた。それが、中国経済の乱調とともに先行きの自信をなくし、日米の参加を必死で求める姿に変わったのだ。

 

日米は、最後までAIIBに出資せず「孤塁」を守った。金融が素人の中国とパートナーシップを組んでも、成果は上がるまいという見通しからだった。案の上、中国の経常黒字は先細りから赤字に転落する見通しが濃くなっている。中国が、いつまでAIIBを支えられるか疑問なのだ。

 

『日本経済新聞 電子版』(7月28日付)は、「AIIB、金総裁続投を決定、投融資は伸び悩み」と題する記事を掲載した。

 

中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は28日夜、金立群総裁の2期目の続投を決めた。手堅い運営が評価されたが、開業4年半で投融資額は約200億ドル(約2兆1000億円)と当初想定の半分以下にとどまった。今後、中国の強硬な外交姿勢に反発が強まることも懸念材料だ。

 

(1)「7月28日夜にオンラインで開いた総会に出席した中国の習近平国家主席は「AIIB(の運営)は国際性、規範性、高水準を堅持し、良いスタートを切った」と語った。金氏の新たな任期は2021年1月から5年間となる。総会では「国際金融機関の一員となり『成功』と広く認識されている」と述べた。AIIBは16年1月に開業した。中国が最大の3割を出資し、増資など重要な案件で拒否権をにぎる」

 

AIIB設立目的は、中国の世界における金融支配力をつけることであった。それは、中国の経常黒字が増え続けるという前提あってのこと。持てあますほどの貯蓄を背景に、世界経済を支配するという夢が突き動かしたのである。中国は、AIIB設立を考えた2013~15年が、経常黒字のピークであった。その後は、急速な減少過程に入っている。AIIBは、設立すべきでなかったのだ。

 


(2)「加盟国・地域は承認ベースで102あり、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)の68を上回る。習氏は「AIIBの良い仲間はますます増え、協力の質もどんどん高まっている」と述べた。南米やアフリカなど域外加盟国が全体の半分超の52もあり、ADBの19より多いためだ。主要7カ国(G7)で米国と日本だけが参加していない」

 

AIIBの出資国がADBよりも多いのは、中国の宣伝攻勢が凄かったからだ。AIIBに出資すれば、すぐにでも見返りが得られるような誇大宣伝をした結果だ。EUでは当初、各国とも出資に慎重であった。だが、英国の出し抜けの出資決定で、EUは一斉に参加へと舵を切ったのである。こういう中で、日米はAIIBに出資せず、中国へなびかなかった。正しい選択であった。

 

(3)「当初はADBや世界銀行がまとめた融資案件に参加する協調融資が主体だったが、自前で案件を発掘、審査する単独融資が増えた。金額では単独融資が全体に占める比率は16年の25%から20年は84%まで上昇した。課題は伸び悩む投融資だ。案件承認ベースで開業後の4年半で87件、196億ドル。金氏は開業直前に「当初5~6年間の融資額は年100億~150億ドル」と語ったが、想定の半分以下だ。融資の実行額はさらに少ない。16~19年にAIIBは計120億ドルの融資を承認したが、19年末の貸出残高は22億ドルにとどまった。200億ドルもの自己資本の10分の1しか利用しておらず「課題は案件発掘の加速や貸出額の増加を通じ、出資金を着実かつ効率よく運用すること」(日本の国際通貨研究所)」

 

AIIBが現在、臆病なほど融資に慎重である。融資案件の承認ペース自体、スローである。融資実行となると、さらに慎重を期しており、「石橋を叩いても渡らない」のだ。中国の経常黒字が急速に減っており、2025年以降の赤字予想が出始めていることの影響である。「融資しない銀行」へ変貌したのだ。

 

(4)「中国との外交関係が悪化する国が多いのは今後の懸念材料となる。インド向け融資は全体の2割にあたる43億ドルと国・地域別で首位だが、中印は今年6月に国境地帯で衝突し45年ぶりに死者を出した。インド側は中国製アプリの使用を禁止するなど経済での対中制裁を強める。中国主導のAIIBが今後もインドに積極融資するかどうかは不透明感がある」

 

AIIB設立後、中国はインドを取り込む目的で積極的な対インド融資を行なったはずである。それが最近、ヒマラヤ山中で中印両軍が衝突する事態になった。インドは、これを機に「反中」を鮮明にしている。この辺りに、中国外交の一貫性のなさが暴露されている。経済外交と軍事戦略がバラバラに動いているのだ。それだけ、中国最高指導部におけるAIIBの位置づけが低くなっていることを示している。中国が、かつて見せたAIIBへの情熱は、とっくに下がっているに違いない。