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習氏が強硬策になった背景

墓穴掘る中国の世間知らず

経済は住宅に頼るしかない

恐怖の「ダモクレスの剣」

 

中国の4~6月期実質経済成長率は、前年同期比で3.2%成長になった。1~3月期が同マイナス6.8%成長率であったことから言えば、先ずは見事な回復と言えるだろう。だが、これは、経済成長率の中身を見ないで「外見」から判断したもの。多くの問題点を含んでいることに注意すべきだ。

 

楽観論では、4~6月期の貿易黒字が予想外の黒字幅であったことを指摘している。1~3月期の131億ドルの黒字が、4~6月期は1547億ドルの黒字へと急拡大したことを上げている。これは、中国の内需が不振で輸入が減った結果、貿易黒字が増えたに過ぎない。こういう内部事情を考えれば、今年後半の中国経済が順調な回復過程に進むのか疑問である。

 

習氏が強硬策になった背景

今年に入って、中国国家主席の習近平氏がにわかに強気の対外姿勢を見せている。これを巡る解釈は二通りある。

 

「自国がより強力になったと感じているからなのか。あるいは、習近平国家主席の立場が、脆弱となっているからなのかについて議論している」。これは『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月27日付)社説「米の対中強硬姿勢 選挙対策にあらず」で指摘したもの。新型コロナウイルス後に、中国が強くなったと気配はない。そうとすれば、習氏の国家主席として地位が脆弱化したことの証明と見るほかない。

 

私は、習氏の立場が脆弱化している現状を打破すべく、あえて対外的に強硬策に出て「煙幕」を張っていると見ている。この立場は、一貫したものだ。習氏の中国における立場が強固であれば、香港国家安全推進法を強硬採決するはずがない。「一国二制度」を反古にすることが、西側諸国からいかなる反応を引き出すか、予測できないはずがないのだ。それをあえて強行し、香港不安が国内不安へ飛び火することを防止したと見る。

 


「一国二制度」は、中英協定によって1997年に成立したものだ。本来ならば、50年の有効期間であるから2047年まで継続しなければならない義務がある。中国は、その義務を一方的に破棄し、抗議する英国に対して暴言を吐くという前代未聞の振る舞いを演じている。習近平氏が、自己の地位を守るべくあえて打った「芝居」であろう。

 

この「芝居」は、今後の中国経済に死活的なインパクトを与えるはずだ。米国が、香港に与えた「特恵」(関税率・ビザ発給の優遇・輸出面の優遇)をすべて廃止すると発表した。これは、香港の築いた国際金融センターとしての役割を低下させる。中国は、香港市場を活用して、ドル資金の調達をしてきたのだ。その「恩典」が消えれば、中国経済の受ける打撃は、大きくなるはず。習氏の「芝居」では済まされ事態に陥るであろう。

 

習近平氏の誕生日の夜、人民解放軍はヒマラヤ山中でインド軍を急襲して20名も殺害した。習氏は、国家主席と同時に国家軍事委員会主席である。人民解放軍トップである。中印国境で、中国軍がインド軍を急襲することに事前承認を与える立場だ。

 

墓穴掘る中国の世間知らず

習氏は、自らの誕生日を血で塗る惨事を命じたことが、インドとの外交関係をどれだけ複雑化させるか。その点について思い至らなかったようだ。インドは、全面的な対中報復策として経済面で中国を追い詰める戦術に出た。インドにおける中国製ソフトの流通を禁止したのだ。

 

これは、中国IT企業にとって「死」にも等しい仕打ちになった。将来、インドのソフト需要が増える見込みの中で、中国がここから排除されるからだ。世界のIT競争で、インド市場を失えば即、世界競争で落後を意味する。この間隙を縫って、米国IT企業は総額1兆円投資を発表して、「インド市場」攻略の第一歩を印した。米国が、インド市場を手中にすれば、世界IT市場での勝者は確実である。中国IT企業は、習氏の「短慮」によって膨大な市場を失った。(つづく)