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11月に控えた米国大統領選まで、あと3ヶ月余と迫った。トランプ大統領は、世論調査で民主党候補予定のバイデン氏に8ポイントもの差を広げられている。これを見る限り、誰でも「バイデン大統領」を想像しがちだ。選挙のプロによれば、これは「素人予想」だそうである。今日は、その筋の専門家の見方を二つ紹介したい。

 

『日本経済新聞 電子版』(7月18日付)は、「衝撃の『トランプ氏再選確率91%』予測」と題する記事を掲載した。

 

これは、同紙ワシントン支局中村亮記者のブログである。

 

(1)「米大統領選の結果を独自モデルで当てるニューヨーク州立大の名物教授、ヘルムート・ノーポス氏の今年の予測に選挙関係者の間で驚きが広がりました。91%の確率でトランプ大統領が再選すると予測したからです。世論調査では野党・民主党の候補指名を固めたバイデン前副大統領が優位との見方が相次いでいますが、なぜトランプ氏の勝利を予測することになったのでしょうか」

 

(2)「カギは共和・民主両党がそれぞれの大統領候補を決める予備選の序盤の結果から大統領選を予測していることにあります。予備選で圧勝するほど支持者の熱意があると見なします。熱意があるほど投票率が上がりやすいとされます。バイデン氏は序盤の中西部アイオアや東部ニューハンプシャー両州でそれぞれ4位、5位と大きく出遅れました。一方でトランプ氏は有力な対抗馬が現れず楽々と候補指名を固めました」

 

(3)「いいかげんにも見えますがノーポス氏には「実績」があります。2016年11月の大統領選で同年3月にトランプ氏が87%の確率で勝利すると予想したのです。過激な発言を繰り返すトランプ氏の当選を予測する声は3月時点でほぼ皆無でした。さらにノーポス氏のモデルに基づくと、1912年以降に行われた27回の大統領選のうち25回で結果を正確に当てることができたといいます」

 

(4)「トランプ氏は16年の大統領選直前に女性蔑視発言が暴露されたり、議会で弾劾訴追されたりしても驚異的に巻き返してきました。新型コロナウイルスや人種を巡る危機から再起して再選を勝ち取り、名物教授の予測が見事的中するのか注目が集まります」

 

トランプ氏の傍若無人の振る舞いは、いわゆる「インテリ」から天敵のように嫌われている。だが、白人・高校卒というグループからは圧倒的な支持を得ている。前回の大統領選勝利は、世論調査の盲点を突く、共和党独特の選挙運動が功を奏したと指摘されている。身体の不自由な有権者には、投票所まで送迎役を買って出たとのだ。今回の大統領選では、何をやるか。

 

ヘルムート・ノーポス氏の今年の予測では、91%の確率でトランプ大統領が再選すると予測している。前回大統領選では87%の確率で「トランプ勝利」であった。今回の方がさらに当選の確率が高まるというのだ。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(7月28日付)は、「トランプ氏の再選はないと判断するのは早計」と題する記事を掲載した。

 

トランプ米大統領は今から再選の芸当を演じることができるのか。ほとんどの専門家がそれは難しいと考えていることは、トランプ氏の実績に対する不支持の広がりを反映している。しかし、再選はないと見限るのは早計だ。

 

(5)「米ニュースサイト「ファイブサーティーエイト」がまとめた全米の世論調査によると、トランプ氏の支持率は民主党の候補指名を固めたバイデン前副大統領を平均8ポイント下回っている。各州の世論調査は、トランプ氏が過半数の選挙人を獲得するのは困難であると示している。もっとも、バイデン氏はまだ厳しい審判を経ていない。有権者は同氏の姿をしばらく目にしていない。6月下旬まで3カ月近くも記者会見を開かず、今も家から外出したり、ソーシャルメディアに投稿したりすることはめったにない」

 

バイデン氏が有利なのは、トランプ氏と異なり登場回数が少なく、「失点」がないからだ。選挙運動になり、両候補が直接比較される時点になれば、違った結論が出てくるというのである。

 

(6)「両陣営の政治顧問は、ともにバイデン氏の露出の少なさが、トランプ氏にとってチャンスになるとみている。現職のトランプ氏は、ライバル候補者に対する有権者の見方に影響を及ぼそうとするだろう。近々、バイデン氏は副大統領候補を発表する予定だが、トランプ氏はこの機会を待ち構えている」

 

選挙運動が始まれば、トランプ氏は現職であるだけにTVの露出度が多く、バイデン氏よりも有利な展開になろう。

 

 


(7)「副大統領候補の選択は、大統領候補が自らの核になる魅力を強調できる。一方、大統領候補に足りない部分を補う場合もある。トランプ氏のペンス氏という選択は、伝統的保守層を安心させた。バイデン氏が副大統領候補の選択で革新派や左派の有権者の支持を固めようとすると、議論が割れる問題で立場を明確にしている候補を選ぶ可能性が高い。そうなれば、トランプ氏に付け入る隙を与えることになる。警察予算の削減、歴代大統領の像の撤去、奴隷制への賠償といった主張に対して、穏健派の有権者の多くは不安を感じるだろう」

 

バイデン氏は、副大統領候補に誰を選ぶのか。それによって、世論の支持率に差がでる。革新派や左派の副大統領候補では、中道派が逃げ出すだろう。難しい選択である。

 

(8)「トランプ氏再選なしと判断するのは、少なくとも3回の大統領候補討論会を見てからにすべきだ。トランプ大統領がこれを得意とすることは、2015~16年の他の共和党候補との討論会や民主党大統領候補ヒラリー・クリントン氏との対決で実証されている。バイデン氏の失言癖がぶり返せば、トランプ氏には大きなチャンスだ。1976年にはカーター氏がフォード氏に対し、88年にはジョージ・HW・ブッシュ氏がデュカキス氏に対して、相手の失言を機に優位に立った」

 

トランプ氏は、ディベートを得意とする。相手の欠点を指摘して、自己主張の正しさを立証するのだ。バイデン氏は、失言クセがある。トランプ氏が、その弱点を突けば支持率は大きく変わる。3回にわたる両者の討論会を聞かなければ、優劣の結論は出ない。ここが、米大統領選の大きな見せ場となる。