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中国軍の急激な海洋進出に脅威を感ずるアジア諸国は、米国を中心にして共同対処方針で一致している。米陸軍の報告書では、米国、日本・豪州・台湾が主力になって、中国軍へ対処するのが効率的と指摘した。ここへ参加しても不思議ない韓国は、米中二股外交路線が改まらず、共同防衛に加えるにふさわしくないとする結論になったという。韓国は、米国から全幅の信頼を勝ち得ていないのだ。はぐれ鳥という存在である。

 

『朝鮮日報』(7月30日付)は、「米陸軍シンクタンク『中国との競争で在韓米軍の需要減、日本は一層重要に』」と題する記事を掲載した。

 

国防総省が在韓米軍を含む全世界の米軍再配置を検討する中、今後在韓米軍の必要性が低下し、対中圧力においても韓国の役割がオーストラリア、日本、台湾などに比べて低下するとの研究政策報告書が公開された。

 

(1)「米政府系放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、米陸軍大学院戦略研究院(SSI)が今月17日にまとめた「陸軍の変身:インド太平洋司令部の超競争と米陸軍戦区設計」と題された報告書に上記の内容が記載されているという。この報告書は、米国のエスパー国防長官が2年前、陸軍長官在職当時に発注したものだという。VOAが説明した。報告書は「韓国軍への戦時作戦統制権移管と軍の近代化の大勢を考慮した場合、有事における大規模地上戦に備える在韓米軍への要求は、今後10年で減少する」と予想した。そのため「韓半島における実戦状況に必要な米軍の地上機動戦力の必要性は弱まる」とも予測している」

 

米陸軍は、朝鮮半島における米軍の役割が今後10年で減少すると見ている。大規模な地上戦の起こる可能性が減る、というのが根拠だ。北朝鮮が、地上戦を挑んでくる可能性を低く見ているが、地対空ミサイルや空軍の攻撃を排除していない。このように、戦争のスタイルが変わるのだ。

 

(2)「報告書は、「インド太平洋地域は中国との超競争を展開するスタート地点であり、最も重要な戦区になると同時に、中国は有事に米軍を敗退させることを念頭に置いた軍の近代化を加速させている」とも分析した。その一方で現在、米合同軍の域内における前進配備体制とその戦力は日本と韓国に集中しているが、これは韓国戦争と冷戦の遺産に基盤を置いているためだという。報告書は、「一時は第2の韓国戦争勃発に効率的に備えるため、このような配備の計算は費用対効果があったとみられるが、現在の状況で戦略的に見た場合は無責任と評価している」とVOAは伝えた。北朝鮮の脅威に対処する際の米国の重要性は、今後10年間で弱まる可能性が高いのが現状であり、現在の米軍配置は対中圧力という観点では効率的ではないということだ

 

アジアでは、北朝鮮の脅威に対処する米軍の配置よりも、中国の脅威に対処する配置が優先される状況になってきた。米軍配置は、これに合わすべきとしている。つまり、中国脅威へシフトすべきというのである。

 

(3)「報告書は、「中国に焦点を合わせた戦略の見直しを進めるために維持すべき核心協力国・地域」として、オーストラリア、日本、フィリピン、韓国、シンガポール、台湾を名指しした。この中で米国の対中戦略において、中国を「共同の脅威」とする認識を共有し、直ちに戦略的な統合が可能な国・地域はオーストラリア、日本、台湾の3カ国・地域としている。これに対して韓国は、中国との超競争あるいは武力衝突を仮定した場合「プラスの側面は限定的な国」と評価された。これは「韓国は対中圧力に積極的に乗り出さない」との判断が根底にあるためとみられる」

 

中国を「共同の脅威」とする認識を持ち、直ちに戦略的統合が可能な国・地域は、オーストラリア、日本、台湾の3カ国・地域としている。韓国は、中国に対する脅威の認識が、他国より低いと見なされている。米国を加えた日本・豪州・台湾の4ヶ国・地域が、共同で中国に対応するのが効率的と提言しているのだ。韓国は、「はぐれ鳥」という位置づけである。


(4)「報告書を作成したネイサン・フレアー米陸軍大学院教授は27日、VOAに「個人の意見」と前置きした上で「今回の報告書は北朝鮮の脅威を無視するとか、在韓米軍の削減あるいは撤収を提言するとかしたものではない」「米国のリソースは無限ではなく、北朝鮮と中国という脅威の間で、どちらかへの戦略的な選択が必要な状況になれば、中国に焦点を合わせた戦略の転換が避けられないという点を示した」と説明した。さらに今回の報告書について「米国防総省や陸軍の公式の立場を反映したものではない」とも明言した」

 

アジアでは、中国と北朝鮮の二国が脅威の対象である。ただ、中国の方が差し迫った脅威国であるので、これに合せた米軍の配置と同盟国軍との共同作戦が必要という認識である。