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『ブルームバーグ』によると、ドイツ銀行のアジア太平洋地域の最高経営責任者(CEO)に8月就任するアレクサンダー・フォン・ツァ・ミューレン氏は、本拠地を香港ではなく、シンガポールに移すという。これは、香港にとって悪いニュースだ。ドイツ銀行と言えば、ドイツで最大規模を誇りEUでも大きな存在感を持っている。そのドイツ銀行の移転は、他行にも影響を与えそうだ。

 

習近平氏は、香港へ「国家安全維持法」を強引に持込んだが、外国人も同法の適用を受けることが判明した結果、中国共産党の毒牙に引っかかったら身の破滅。難を逃れて香港を離れる選択が不可避となった。

 

『ロイター』(7月23日付)は、「金融センター『香港』ロンドンと同じ運命をたどるか」と題する記事を掲載した。

 

香港は近くロンドンとの共通点が増えるかもしれない。このほど施行された香港国家安全維持法により、アジアの金融センターとしての魅力が想定的に薄れているためだ。ロンドンも、英国の欧州連合(EU)離脱を受けて金融センターとしての魅力が以前よりも低下している。『ブルームバーグ』によると、ドイツ銀行でアジア地域を統括する新トップは、シンガポールを拠点とする。前任者は香港を拠点としていた。こうした流れは今後も続くだろう。

 


(1)「ドイツ銀行は、アジアに2つの拠点を置く構造を維持する方針。同行では、過去にアジア部門のトップがシンガポールを拠点としていた例もある。だが、香港では抗議活動が続き、表現の自由も制限される措置がとられた。現地の米商工会議所が今月実施した調査によると、回答者の過半数が、国家安全維持法の適用範囲や施行方法のあいまいさなどに懸念を表明。約30%は香港から他の地域に資本や事業を移すと答えた。ただ、香港から移転する計画はないとの回答も半数近くを占めた」。

 

人間の習性で、トップを切って行動を起こすのは「先覚者」である。後から動くのは、「付和雷同組」と決まっている。習近平政権の動きから見て、香港に残留していれば災難を被るばかりだろう。習氏は、経済合理性に基づく判断でなく、「習氏にとってプラスかマイナス」という狭い価値基準で動くであろう。典型的な独裁者である。

 

(2)「大量脱出の可能性は低いとみられる。香港の金融業界は約26万3000人を雇用。域内総生産(GDP)に占める比率は2004年の13%から2018年には20%前後に上昇している。オックスフォード・エコノミクスによると、この比率は今後も拡大する見通しだ」

 

米国が、これまで香港に与えてきた恩典がすべて取り消されるデメリットを考えるべきだ。香港ドルと米ドルの「ペッグ」が、香港側の事情で打ち切られれば、香港金融センターとしての役割は終わる。米国は、最終的にそれを狙っており、中国を追い詰めるであろう。米中関係は、そこまで悪化している。この現状を重視すべきであろう。

 

(3)「フランクフルトやパリは、ロンドンからの金融機関の誘致で苦戦を強いられたが、台北やシドニーも、香港からの金融人材の獲得で苦戦を強いられるとみられる。昨年9月のEYの調査によると、EU離脱の是非を問う2016年の英国民投票以降、大手投資銀行がライバル都市に移した職は1000人分にとどまっている。もちろん、英国が正式にEUを離脱するのは今年末で、現在ロンドンからEUの顧客にサービスを提供している金融機関は、欧州大陸に子会社を設立する必要がある」

 

英国のEU離脱と、香港問題を同列に論じることは、理屈に合わぬ話である。英国のEU離脱は、主義主張の対立ではない。純然たる経済問題の対立である。香港問題は、政治的対立で、中国が西側企業に罰を与える野心を持っている。これが、根本的な違いである。野心ゆえに、いかようにも法律を拡大解釈されるのだ。これが危険なのだ。

 


(4)「アジアでも今後、欧州同様に他の都市の魅力が増していくだろう。金融機関の間では、出張を減らして遠隔勤務を活用する意欲がみられ、これが一定の影響を及ぼすはずだ。複数の拠点を維持すればコストもかさむため、他の都市に引き寄せられる引力も強まるとみられる。コンサルティング会社Z/Yenの3月の最新調査によると、国際金融センターのランキングで香港は3位から6位に転落。シンガポールや東京の後塵を拝している。新たにアジアに参入する金融機関は、香港以外の選択肢を検討する理由が今後増えていくだろう」

 

下線部分の解釈は、その通りであろう。世の中は、遠隔勤務時代である。今回のコロナ騒ぎが、人間社会に教えた教訓である。香港に残って政治的な圧迫を受けるリスクを考えれば、「脱香港」が正解と思われる。