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コロナワクチン開発が佳境に入ってきた。完成を目前に、先進国は一斉に製薬メーカーと

購入契約を交わしている。日本もその一国である。だが、富裕国だけが優先的にコロナワクチンの配分を受けて、貧困国へのワクチン配分が遅れれば、パンデミックの解消はそれだけ遅れるとの声が出てきた。先進国は、困った立場に立たされている。

 

『ロイター』(7月29日付)は、「『富裕国の仁義なき』ワクチン争奪戦、対コロナで逆効果」と題する記事を掲載した。

 

新型コロナウイルス感染症のワクチンに関して、この世界は仁義なき戦いの様相を呈している。ワクチンを大量一括購入し世界中に公平に供給する計画を練っている国際的な支援団体は、この状況に憂慮を深めている。一部の富裕国が自国民のために有望なワクチン候補を何百万回分も確保しようと、先走って製薬企業と契約を締結しているのを見て困惑しているのだ。

 

(1)「複数の専門家によれば、米国、英国、欧州連合(EU)がファイザー、ビオンテック、アストラゼネカ、モデルナなどと結んだものを含め、こうした契約はグローバルなワクチン配布計画を台無しにしつつある、という。全世界で迅速かつ公正にワクチンを利用可能にする計画「COVAX」を共同で推進する「GAVIアライアンス」のセス・バークレー事務局長は、「誰もが製薬企業と個別に契約を結ぶというのは、最善の状況をもたらす道ではない」と語る。

 

先進国が、金にものを言わせて優先的な購入契約を結ぶので、グローバルなワクチン配布計画を台無しにしつつある、という。それだけパンデミック終了を遅らせると指摘する。

 


(2)「ファイザーは今週、EU及び複数のEU加盟国とのあいだで、同社が開発中のワクチンの供給契約について交渉を続けていると発表した。また最新の動きとして、英国は7月29日、グラクソ・スミスクラインとサノフィが開発中のワクチンの優先供給を受ける合意を結んだと発表した。国際医療NGO「国境なき医師団」によれば、こうした動きは「富裕国がワクチンを買い占めようとするグローバルな競争」をさらに過熱させ、「ワクチン・ナショナリズムという危険なトレンド」を加速させるものだ。

 

先進国が、ワクチンの購入契約を結ぶことは、「ワクチン・ナショナリズムという危険なトレンド」であると手厳しい。

 

(3)「懸念されているのは、今回のパンデミック(世界的な大流行)でも前回同様のワクチン供給・配分が再現されるのではないかという点だ。前回、つまり2009─10年の新型インフルエンザ(H1N1ウイルス)流行においては、富裕国が入手可能なワクチンを買い占めたため、当初は貧困国にまったく回ってこなかった。このときは、結果としてH1N1による症状がさほど深刻ではなくパンデミックが最終的に終息したため、ワクチン配分の不公平さが感染者数・死者数に与えた影響は限定的だった」

 

前回、2009─10年の新型インフルエンザ(H1N1ウイルス)流行において、富裕国がワクチンを大量に購入して貧困国に回る分がなくなった。幸い、それ以前にインフルエンザが止まったので、貧困国で問題を起こすことはなかった。今回のコロナウイルスでは、すでにパンデミック状況に陥っている。公平な、ワクチン配分が求められるという。

 

(4)「新型コロナウイルス感染症の脅威ははるかに大きく、世界人口のかなりの部分が脆弱なまま取り残されることは、当事者にとって危険であるだけでなく、パンデミックを長引かせ、それによって引き起こされる損害を拡大することになる、と医療専門家は指摘する。「まさに我々が危惧していることを一部の国が進めている恐れがある。つまり、自分の身は自分で守れ、という態度だ」と語るのは、元米国際開発庁長官で、現在は貧困と予防可能な疾病の撲滅をめざすNPO「ワン・キャンペーン」代表のゲイル・スミス氏」

 

「地球村」という意識を持たねば、パンデミックを早期に終息させられないという。

 

(5)「COVAXによる資金調達計画には、世界保健機関(WHO)や「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」も共同推進者となっており、寄付を通じて支援を受ける貧困国90カ国だけでなく、英国を含む富裕国75カ国以上が関心を示している。だが、GAVIによれば、それには米国、中国、ロシアは含まれていない。またEU関係者は先週、製薬企業との交渉を主導する欧州委員会が加盟国に対し、COVAXを通じてワクチンを購入しないよう勧告した、と述べている。シンクタンクの外交問題評議会でグローバル医療プログラム担当ディレクターを務めるトーマス・ボリーキー氏は、「懸念している」と話す。「ワクチン供給を独占しつつある一部の国の行動は、多国間によるワクチン供給の取り決めと競合する」「結局のところ、ワクチン製造のリソースは有限だ。拡大できるとしても限りがある」と指摘する」

 

共同のワクチン購入計画に、米国、中国、ロシアが加わっていないという。中国は、マスク外交では、華々しい宣伝攻勢を掛けたが、資金の必要なプロジェクトを敬遠している。

 


(6)「GAVIのバークレー事務局長は、「たとえば米国全体、EU全体でワクチンを1人当たり2回投与しようとすれば、約17億回分が必要になる。入手可能なワクチンが試算通りの量ならば、他国にはいくらも回らない」。少数の国、いや30ー40カ国がワクチンを入手しても150カ国以上が入手できない状況になれば、「そうした国々で感染症は猛威を振るう」とバークレー事務局長は言う」

 

富裕国がワクチンを独占すれば、貧困国が取残される。それは、パンデミック終息を遅らせる。ならば、どのような配分が合理的か。一度、試案を出すべきだろう。

 

(7)「バークレー事務局長は、「このウイルスは稲妻のように移動する。結局は、ノーマルに戻れない状況に陥るだろう。パンデミックを全体として抑制できない限り、商取引、観光、旅行、貿易は不可能だ」。また、バークレー事務局長や「ワン・キャンペーン」のスミス氏など医療専門家は、パンデミックを終息させるというのは全世界的に終息させるという意味だ、と語る。「ワクチン配布の偏りがもたらすのは、パンデミックがあと1年続くのか2年続くのかという違いだ」とスミス氏は言う。「経済の面でも公衆衛生の面でも、その違いは非常に大きい」

 

専門家の試算によれば、現在、進められている後期治験において、複数ある有力ワクチン候補の有効性が実証されれば、効果的なワクチンを来年末までに約20億回分用意できるというのが妥当な見通しだという。数に限りにあるワクチンを各国へ合理的に配分するには、各国が知恵を出すしかない。