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中国の大手ハイテク企業は、真っ正面からの逆風を受けている。習近平氏の対外強硬策が裏目に出た結果だ。米国、英国、豪州、印度の各国は、報復策として中国アプリを締め出している。アプリは、先進国市場を足がかりに発展するものだ。現状では、前記4ヶ国が中国アプリを締め出しているが、いずれは米同盟国へ広がってゆくに違いない。

 

『ロイター』(7月27日付)は、「中国ハイテク大手に逆風、米中緊迫で経営環境激変」と題する記事を掲載した。

 

中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)社は、米国によるハイテク支配に挑戦する中国の代表的な企業である。だが、中国と米国やインド、オーストラリア、英国などとの関係が悪化したため、今では逆風にさらされている。

(1)「前記の両社以外にも、ドローンメーカーのDJI、人工知能(AI)の北京昿視科技(メグビー)や商湯科技開発(センスタイム)、科大訊飛(アイフライテック)、監視カメラの海康威視数字技術(ハイクビジョン)、電子商取引のアリババ・グループなど、世界最先端の技術を持つ中国のハイテク企業が、市場へのアクセスを失いつつある。中小企業も経営の再考を迫られている。米国とインドで事業を展開している中国のスタートアップ企業の創業者は「初めての経験だ。いろいろ積み重なって、私の起業家精神はしぼんでしまった。ましてや世界に打って出るなど考えられない」と話した

 

企業が、地政学的な影響を大きく受ける。その典型例が、中国を襲っている。グローバル経済の下では、アイデアが勝負で資金や市場は後から付いてきた。スタートアップ企業を育てたグローバル経済が、突然の逆風に変わったのだ。

 

(2)「中国のハイテク企業を巡る環境は、ほんの1年前に比べても激変した。大半の企業は当時、米中通商紛争やファーウェイを巡る安全保障上の懸念の影響をほとんど受けていなかった。センスタイムとメグビーは米国の投資家から資金提供を受けており、大型の新規株式公開(IPO)を目指していた。バイトダンスの「ティックトック」は世界各地で急成長。アリババはクラウド事業の見通しが明るいと言い立て、DJIはドローン市場で独占的な地位を固めつつあった。しかし、米国は昨年10月、中国政府による新疆ウイグル自治区のイスラム系ウイグル族への弾圧などを理由に、中国ハイテク企業への新たな制裁措置を導入。再選を目指すトランプ米大統領は中国批判を強め、中国の習近平国家主席は強硬路線を採った」

 

米中対立が、中国のハイテク企業の行く場を塞いでしまった。資金の流れが止まり、市場へのアクセスが不可能になったからだ。習近平氏は、自らの対外強硬策がこういうジレンマを生むとは夢にも思わなかったであろう。専制社会の恐ろしさはここにある。中国ハイテク企業が、これまで予想外の発展ができたのは、ひとえに西側諸国が門戸を開けてきた結果である。

 

(3)「中国政府は香港国家安全維持法の施行を巡って他の国々との間でも緊張が高まり、インドは国境付近での中国との係争を受け、中国のモバイルアプリ59種を禁止した。中国のハイテク大手は今や、契約の解消、製品の禁止、投資阻止などに見舞われており、制約は今後さらに増える見通しだ。米議会はインドに続いてティックトックの禁止を検討しており、バイトダンスは同事業の売却を迫られる恐れがある」

 

中国の「香港国家安全維持法施行」が、西側諸国を「反中国」にさせるきっかけになった。西側諸国は、人権弾圧は非人間的政策として忌避されている。欧州の発展は、人権闘争の歴史によって可能になった。中国は、その人権を容赦なく弾圧する。国家成立の基盤が異なる中国とは、もはや従来通りの「付き合い」が不可能で、袂を分かつ決意をしたのだ。

 


(4)「ファーウェイは製品が通信機器市場から絞め出され、売上高が年間数十億ドルも落ち込む可能性がある。米内務省は安全保障上のリスクを理由に、DJI製民生用ドローンの利用を取りやめ、機体の追加購入を停止。DJIはIPO計画を凍結した。アリババ・グループはインド政府が傘下「UCウェブ」のブラウザーを禁止したことを受けて、UCウェブの人員を削減する」

 

中国ハイテク企業は、先進国市場を失うことになった。自国市場と発展途上国が主な市場になろう。発展の芽が、完全に摘まれたのだ。

 

(5)「香港のマインドワークス・キャピタルのマネジングディレクター、デービッド・チャン氏によると、以前は中国資本の受け入れに前向きだった東南アジアのスタートアップ企業の一部が、消極姿勢に転じている。中国企業は外国の規制当局に心変わりを促す努力をしているが、中国政府の政策が変わらないため、効果は上がっていない。バイトダンスは、ティックトックの経営を中国事業から切り離すと表明。米ディズニーの幹部を引き抜いてティックトックのトップに迎えたが、米政府の態度を軟化させることはできなかった。北京のコンサルティング会社幹部は「企業にできるのは、そこまでだ。PRに全力を尽くし、外国らしい雰囲気を添えてくれる幹部を雇い、あとは地政学上の衝突が、これ以上起きないのを祈り続けるしかない」と語った」

 

東南アジア各国が、中国資本受入れに躊躇するようになったという。中国への警戒心が持たれ始めたのだ。米国が、中国へ強い対抗心を見せ始めて、「事態の急変」を察知したのである。中国企業は、地政学悪化に翻弄される局面に入った。