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中国は、一帯一路計画を餌にして発展途上国へ、過大な建設プロジェクト押し付けてきた。その挙げ句、支払いに窮すれば担保を取り上げるという「高利貸し商法」をやっている。EU加盟国のエストニアにもこの手を使おうとしたが「未遂」に終わった。さすがは、エストニアである。人口130万人とはいえ、EU加盟国である。国際情報に疎い訳がない。中国の前歴を調べ上げ、「怪しい」と睨んで、世界一の海底トンネル計画を中止したのだ。

 

それにしても、中国はエストニアまで手を伸している理由は何か。

 

2010年以降の北極域は、他の地域の平均と比べて2倍以上のペースで気温が上昇し、特に夏場の海氷域面積は縮小している。この結果、航路利用や資源開発の動きは逆に活発化した。特に目立つのは中国である。中国は18年、「北極近傍国家」を打ち出し、巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として「氷のシルクロード」建設を掲げたのである。こうしてエストニアへ急接近することになった。

 

中国の狙いはEU加盟国であるエストニアを介して欧州市場へのスムーズなアクセスを得ることとされている。また輸出入手続きを効率化できるデジタル技術の活用も視野に入れているという。中国が掲げる「一帯一路」はアジアと欧州、アフリカを陸路と海路で結び、そこに巨大経済圏を生み出そうという野心的な構想だが、エストニアは欧州へのゲートウェイとして中国にとって必要不可欠な存在になっている。

 


普通ならば、こういう大事なエストニアに対して、慎重な対応をするはず。中国は、逆にエストニアを「カモ」にして大儲けを企み、それが露見して失敗したもの。この失った信頼を取り戻すのは難しいだろう。

 

『大紀元』(8月4日付)は、「中国資本支援の『世界最長の海底トンネル建設計画』断念へーエストニア」と題する記事を掲載した。

 

エストニア政府はこのほど、中国資本の支援を受けた、フィンランドの首都ヘルシンキとエストニアの首都タリンを結ぶ「世界最長の海底トンネル建設計画」を却下する見通しだ。

 

(1)「エストニアのアーブ行政大臣はメディアに対して、「160億ユーロ(約1兆9961億円)もかかる巨額な建設費用の出所が不明瞭な上に、経済的、環境的、安全上の懸念が解消されていない。利用者数および貨物量の予測などについても不安が残っている」と理由を述べた。「話し合いを重ねてきたが、われわれの懸念解消には至らなかった。あらゆる点で国益に反する同プロジェクトを中止するよう政府に助言する」と付け加えた」

 

約2兆円もする巨大プロジェクトである。採算計画では念には念を入れて計算するもの。その計算根拠が曖昧でエストニアから不審の念を持たれたのだ。発展途上国並みに扱って失敗したのであろう。

 

(2)「2018年に行われたトンネル実現のための可能性調査によると、「2050年までに年間1250万人の乗客と400万トンの貨物が輸送可能だ」という。プロジェクトの建設費用が高いため、費用便益比はわずか0.45だった。エストニア政府は昨年8月から、同計画を疑問視していた。同国のタービ・アズ経済インフラ大臣はメディアに対して、「開発企業はいまだに利用者数をどのように算出したのかを説明できていない」と不信感をあらわにした」

 

海底トンネルの費用便益比は、わずか0.45だった。費用1に対して、便益が0.45である。これは、中国式のインフラ投資の算式かも知れない。エストニアが、首を縦に振るはずがない。「中国の開発企業はいまだに利用者数をどのように算出したのかを説明できない」という、考えられない杜撰さであった。費用便益比は、1以上でなければ「事業」として成り立たないのだ。

 

(3)「このプロジェクトは中国資本や中国企業からの支援を受けている。フィンランド・エストニア・ベイエリア開発会社は昨年、中国のタッチストーン・キャピタルから150億ユーロ(約1兆8714億円)の建設資金を調達した。また、中国鉄道国際グループ、その親会社である中国鉄道、中国交通建設からも支援を受けている。アーブ行政大臣は、「エストニアとフィンランドの公的機関が支援する別のトンネルプロジェクトに賛成している。 国境を越えたトンネルの設置は、両国の共同事業とその共通の意志があってこそ可能になる」と述べた」

 

約1兆9961億円もかかる巨額な建設費用に対して、中国企業から約1兆8714億円の建設資金を調達した。ほとんど、中国丸抱えである。パキスタンでも、この方式で中国企業が受注した。その後、パキスタン側が工事費を再計算して、利息の二重計算や見積額にデタラメさが発覚して大問題になっている。多分、エストニアでもこれと同じインチキ計算がされていたに違いない。エストニアは、目ざとくそれを「発見」して、計画を白紙にして難を免れたのだ。