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韓国は、「日本憎さ」の余りに、素材・部品の日本離れをして溜飲を下げている。まさに、「感情8割:理性2割」の民族と言われる理由だ。日本の素材や部品さらに設備が、これまで韓国産業を支えてきたのは、それなりの合理的な理由があってのこと。それを、「反日感情」に任せて「脱日本」を声高に叫んでいる。経済的合理性を否定するような動きである。

 

『中央日報』(8月6日付)は、「日本の『素材・部品・装備たたき』1年、独立の道はまだ遠い」と題するコラムを掲載した。筆者は、黄哲盛(ファン・チョルソン)/ソウル大材料工学部教授である。

 

日本政府が韓国に輸出する半導体・ディスプレー製造用のいくつかの核心物資に対する輸出規制を断行してから1年余りが過ぎた。筆者は昨年のこの時期、政府とメディアの多くの質問に答え、意見を陳述するのに忙しい時間を過ごした。当時に感じたことのうち最も記憶に残っているのは、韓国国民の半導体に対する関心が非常に大きいということだ。

(1)「日本という特殊性が国民感情を刺激したためだろうが、いくつかの理由で大学で半導体研究が活発でない状況を考慮すると非常に鼓舞された。国民的な関心を動力にした政界の積極的な努力も印象的だった。象徴的なのは、過去のフッ酸ガス漏出事故による制裁期限が終わったにもかかわらず地域住民の反対で事業を再開できなかったフッ酸製造中小企業がまた事業を始めたという事実だ」

 

「日本憎し」が、これまで再開できなかったフッ素製造業に事業再開のきっかけを与えたという。「反日感情」をテコにすれば、「死んだ子ども蘇る」という韓国だ。



(2)「深刻な対日貿易不均衡要因の一つである素材・部品・装備関連産業を発展させるために政府は過去20年以上にわたり各種育成政策に取り組んできた。しかし過去1年間の進展の方が大きい感じだ。もちろんこれを実際に成し遂げた主人公は、劣悪な状況の中で我々の産業の根幹を守るために努力した現場の技術者と経営陣であることは言うまでもない」

 

反日といえば、一致結束して努力する。凄い民族パワーである。問題は、継続性である。感情的な怒りは、長続きしないのだ。理性的な怒りにならなければダメだが、反日は、理性的な怒りになるはずがない。日本の恩恵は有形・無形で極めて大きいからだ。

(3)「こうした努力とは別に、冷静に現実を眺めることも必要だ。正確な診断は「まだ道は遠い」というものではないかと思う。最近、短期間に国産化を完了したとして注目されたフッ酸の例を挙げてみよう。韓国のフッ酸の年間使用量は約2000億ウォン(約180億円)分だ。大きな市場ではないが、これがなければ100兆ウォンの半導体産業に深刻な問題が生じるため非常に重要な素材といえる。フッ酸生産企業が2000億ウォン分を納品して得られる利益と生産に必要な投資規模を考えると、実際、国産化には大きな実益がない。このため確実な品質の製品を低価格で供給できる日本企業と取引をしてきた。それが経済外的な問題のため国産化するしかなくなった」

 

韓国で、フッ酸の国産化が可能でも、それで得られる利益はわずか。投資額に見合うものではないという。ならば、同じ金額を他分野に投資した方が韓国経済にとって利益になる。こういう合理的な計算を、反日感情が吹き飛ばしている。韓国国産化は、限定的な意味しか持ち得ないのだ。

 


(4)「それなら我々は本当にフッ酸の国産化に成功したのだろうか。フッ酸の原料は精製されていない「無水フッ酸」として中国から輸入する。すなわち完全な国産化のためには無水フッ酸を国産化する必要がある。無水フッ酸は鉱山で採掘する蛍石(CaF2)を硫酸(H2SO4)と反応させて得られる。蛍石の主な産地が中国であるうえ、無水フッ酸の製造は環境に非常に大きな負担を与える産業であり、国内でするのはかなり難しい」

 

フッ酸の原料は、精製されていない「無水フッ酸」である。韓国企業は、この「無水フッ酸」を中国から輸入しなければ、国産フッ酸を製造できないのだ。

(5)「筆者が本当に心配するシナリオはこうだ。この数年間、中国政府は自国のメモリー半導体産業発展に莫大な国力を投入した。現在、フラッシュメモリーは韓国と1ー2年、DRAMは3-5年ほどの差と評価される。質が落ちるとはいえ、市場に中国産製品が出始めたことを考慮すると、遅くとも5年以内に中国はある程度のメモリー半導体競争力を備えると予想される。この時、中国メモリー半導体企業の最も大きなライバルがサムスン電子とSKハイニックスになるだろう。もし中国が無水フッ酸の輸出を統制すれば、国内半導体企業に深刻な支障が生じるかもしれない」

 

中国は、韓国半導体と対抗するために将来、「無水フッ酸」の輸出を止めるという事態も想定する必要がある。中国のことだ。過去の例からも、何をしでかすか分からない相手である。WTOへ提訴しても間に合わないだろう。

(6)「過去の中国のレアアース(希土類)輸出規制やTHAAD(高高度防衛ミサイル)報復などを考えると、必ず対策を講じる必要がある。現在の状況は「狼」(日本)を避けて「虎」(中国)に出くわす格好のようで心配だ。半導体大企業の立場も考慮する必要がある。コスト競争力を確保するためには原材料供給先の多角化が必要だ。確実な供給先の日本を排除するのは良い戦略でない」

日本を毛嫌いして中国へ接近しても、さらに悪い結果が待っているのだ。ここは、冷静に日本との関係構築が必要と指摘している。こういう理性的な判断が、できるだろうか。できれば、今のような反日騒ぎは起こるはずがない。