テイカカズラ
   

「医は仁術」とされるが、韓国では「医は算術」であり、医師のストライキが予告されている。8月14日に開業医を中心とする大韓医師協会のゼネストを行うというのだ。政府は先ごろ、2022学年度から医大の入学定員を一時的に増やし、10年で4000人の医師を追加で育成する方針を発表したことへの反発である。

 

韓国は、少子高齢化が急速に進んでいる。このため、患者が減っており診療医は、生活が圧迫される、というのである。今後10年間で医学部定員を年間400人増やせば、それが将来の医師収入を減らすことを理由にしている。

 

人口高齢化社会では、多数の医師や看護師、医療技術者などが「等比級数的」に必要となる。韓国のような就職難社会では、医師増員→看護師増員→医療技術者増員という需要急増で、雇用面で大いに潤うはずだ。就職難解消の手立てとしては、こういう医療充実政策に依存する部分が多いであろう。韓国の医師増員は本来、歓迎すべきことなのだ。

 


韓国の医師は、遠隔医療反対とからめて、医師の収入減を警戒している。医師という人間の生命を預かる職業として、余りにも利己的過ぎるのだ。臆面もなく、次のように主張している。

 

「(大病院は)遠隔医療が導入されれば金を儲けることができる。患者は遠隔医療が可能な大型病院に集中するだろうし、遠隔医療機器・資機材を製造する業者は多大な利益を得ることになるだろう。遠隔医療技術を活用したヘルスケア業者も乱立する可能性が大きい。反対に、町内の病院・医院は患者が減って廃業に追い込まれる恐れがあり、それによって国民の医療アクセスは困難になるだろう」(『ハンギョレ新聞』7月11日付)

 

ここにみられる医師の認識は、韓国民の健康増進(仁術)でなく、医師の経済的な利益をいかに守るかという「エゴ」(算術)優先である。医師はエリートである。その彼らが、あからさまに自己利益を前面に出していることに、改めて「国民性」の違いを感ぜざるを得ないのだ。こういう医師が、韓国にはウロウロしているのだろう。

 

『ハンギョレ新聞』(8月6日付)は、「医師団体、ストやめ地域医療の強化に知恵集めるべき」と題する社説を掲載した。

 

(1)「2022年からの10年間、医学部定員を4000人増員するという政府の方針に反発する大韓医師協会(医協)も14日の全面ストを宣言している。保健福祉部は5日、医師不足問題はこれ以上先送りできない緊急の課題だとして、医師団体の要求には一線を引きつつも、医協が要求した「(仮称)保健医療発展協議体」の設置を受け入れると発表した。にもかかわらず医協は、協議体を設置するより医学部定員拡大計画を撤回する方が先だと要求している

 

大韓医師協会は、医学部定員拡大計画を撤回すべきだと要求している。この辺りに、韓国社会が、自分の利益だけを考え国民の利益を置き去りにしている習性が見て取れる。労組は、最低賃金の大幅引上げを実現させた。市民団体は、原発を廃止させて太陽光発電で多額の補助金を懐へ入れている。それぞれ「大義」を言い募っているが、すべては自己保身に過ぎない。

 


(2)「国民の10人に6人が医学部の定員拡大に賛成している中で、医師たちが国民の健康を人質にしてストを強行したとしても、国民の共感は得られない。韓国の医師数は経済協力開発機構(OECD)の平均値に遠く及ばないだけでなく、慶尚北道や忠清南道などは人口1000人当たりの医師数が1.5人程度で、ソウルの半分に過ぎない。激しい地域格差を解決するためにも、医療人材の増員は避けられない」

 

超高齢社会に向かう韓国が、絶対に必要なのは医師を含めた医療従事者の拡充である。この分りきったことを理解しないで、自己の利益だけ計ろうとする姿は醜いものだ。

 

(3)「昨年、保健福祉部が実施した「保健医療人材実態調査」によると、医師の月平均収入は1342万ウォン(約119万円)で、一般労働者の5倍を超える。医療人材の拡大を頭ごなしに拒否する医師たちの主張は、国民の目には医療の公共性を放棄した「既得権擁護」にしか見えない。医師団体は、大義なきストの撤回を宣言し、公共医療の強化のために政府と膝を突き合わせて話し合ってほしい」

 

韓国医師の平均月収は約119万円。一般サラリーマンの5倍を得ているという。長い間の勉学や厳しい職場環境を考えれば、100万円以上の月収が妥当な線であろう。この程度の収入で満足し、国民全体の健康増進に協力する度量のない点は、エリートらしからぬところだ。