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米国は1979年、台湾との断交後で最高位となる閣僚を派遣した。アザー米厚生長官が、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と8月10日会談したもの。米国は、台湾の新型コロナウイルス対策を称賛し、「民主主義」の優位を国際社会にアピールした形だ。

 

米中対立が先鋭化している中で、アザー米厚生長官が台湾を訪問して米台関係の密接ぶりを示した目的は、中国をけん制することにある。中国側は、これに鋭く反応し台湾海峡の中台中間線を中国空軍機が一時、超えるという事態まで引き起した。

 

台湾空軍によると、中国人民解放軍の戦闘機「殲10」と「殲11」が10日午前9時(日本時間午前10時)ごろ、一時、台湾海峡の中間線から台湾側に入った。台湾空軍は中国戦闘機の動向を追跡し「追い出した」という。台湾側の主張によると、中国軍機が台湾海峡の中間線を越えたのは2016年以降で3回目。『ロイター』(8月10付)伝えた。

 

米国は、「インド太平洋戦略」によって、中国軍の軍事的拡大路線に対峙する大方針を決めている。この戦略では、米国、日本、豪州、印度それに台湾が協力するという暗黙の防衛線が引かれている。台湾は、南シナ海と東シナ海の両方で睨みの効く地政学的に絶好の位置にある。米国が、台湾との関係強化に進むのは当然のことだ。

 


『ロイター』(8月10日付)は、「米厚生長官、台湾総統と会談、トランプ氏の『強い支持』を伝達」と題する記事を掲載した。

 

アザー米厚生長官は10日、訪問先の台湾で蔡英文総統と会談し、民主的な台湾に対するトランプ米大統領の強い支持を伝えた。また、台湾の新型コロナウイルス対応は世界で最も優れた例の1つと評価した。アザー長官は9日に現地に到着。1979年の断交以降で最高位の高官による台湾訪問となった。

 

(1)「総統府で行われた会談でアザー長官は、「トランプ大統領の台湾に対する強い支持と友好のメッセージを伝えに来ることができ、光栄に思う」と述べた。今回の訪台は、経済や公衆衛生の分野で台湾との協力を強化するとともに、新型コロナ対策での台湾の国際的な役割を支持することを目的としている」

 

アザー米厚生長官の訪台目的は2つあるように見える。

1)台湾が、新型コロナウイルスの防疫に民主的かつオープンな形で対応して成功した。それを世界にアピールすることだ。中国のような専制的でなくとも可能というひな形にしたこと。

2)米国が、台湾をいかに重視しているかを改めて中国に見せつけたこと。これは、「インド太平洋戦略」で共同防衛線を敷く日本、豪州、印度への「示唆行動」である。

 

以上のような二つの目的を持って行なわれた台湾訪問であろう。中国が、戦闘機で台湾海峡中間線を一時的にでも越える行動に出た背景はこれであろう。

 

(2)「アザー長官は、「台湾の新型コロナ対応は世界で最も成功した例の1つであり、オープンで透明性が高く民主的な台湾の社会・文化のたまものだ」と評価した。台湾は早期に効果的な感染対策を打ち出したことが奏功し、新型コロナ感染者数は480人、死者は7人と、他国より大幅に低い水準に抑え込んだ。米国は新型コロナを巡り、中国の透明性の欠如を繰り返し批判している」

 

中国は、新型コロナウイルスの感染者数や死亡者数を過少発表しているが、台湾の感染者数は480人、死者が7人とは驚異的な「超安全社会」であることを示している。中台のこの差は、政治体制の差とも言える。

 


(3)「蔡総統はアザー長官の訪問について、新型コロナ対策における双方の協力の「大きな前進」を意味するとし、ワクチンや治療薬の研究、生産などでの協力に言及した。世界保健機関(WHO)総会への台湾の参加を米国が支持したことにも謝意を示した。台湾は中国の反対によりWHOに加わっていない。蔡総統は「健康に対する権利に政治的な思惑が決して優先されるべきではないと改めて強調しておきたい。台湾のWHO総会を阻止するのは健康に対する普遍的権利の侵害だ」と述べた。

 

台湾は、中国によってWHO総会への出席を妨害されている。政治が、健康を守る権利を蹂躙しているもので許されることではない。

 

(4)「アザー長官はその後、記者団に、今回の台湾訪問は、米国と台湾の深い友情とパートナーシップの認識を表すものだと述べた。また、台湾は公衆衛生に関する透明かつ協調的な情報共有のモデルになってきたと指摘した」

 

アザー長官は今回の台湾訪問が、「米国と台湾の深い友情とパートナーシップの認識を表すものだと述べた」。これが、本音であろう。米中対立激化の中で、米国は台湾が一層、重要な役割を期待されている。