あじさいのたまご
   

中国国家主席にとって、もう一つの頭痛の種が増えた。世界一の水力発電所を擁する三峡ダムに「決壊説」がつきまとっていることである。ダム建設中、北京大学の水利工学の権威者が、江沢民国家主席に対して、3度も建設中止を嘆願する文書を提出した、曰く付きのダムであることだ。全人代でも三峡ダム建設を巡って賛否が対立し、反対派の演説のマイク電源を切るまでして着工した経緯がある。環境保護派が、猛烈な反対運動が行なった点で当時、「中国の良心」ともいわれた。

 

この三峡ダムに決壊説が消えないのは、建設当初からの反対運動が尾を引いている面もある。だが、「決壊しない」と言い切れない弱味を抱えていることも事実なのだ。

 

『大紀元』(8月11日付)は、「三峡ダムの潜在的危機が中国共産党に打撃―米VOA」と題する記事を掲載した。

 

中国では6月から、南部を中心に大規模な洪水に見舞われている。国内外の一部の専門家は、中南部に流れる長江に位置する巨大水力発電ダム、三峡ダムの洪水抑制能力について疑問視し、長江上流での記録的な豪雨でダムの決壊の可能性を指摘した。米国の専門家は、三峡ダムが安全上に大きな問題が起きれば、統治の合法性を主張する中国共産党政権にとって、致命的な打撃を与えるとの見方を示した。米『ボイス・オフ・アメリカ』(VOA)が8月11日報じた。

 


(1)「中国当局は長年、三峡ダムが「万年に1度」、「千年に1度」の大洪水を防げると宣伝してきた。国営新華社通信は200361日に発表した評論記事では、三峡ダムが「万年に1度の洪水を抑制できる」と強調した。しかし今年に入ってから、中南部地域で数カ月深刻な水害に見舞われた後、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、三峡ダムの「(長江)中下流地域での豪雨に対応する洪水災害抑制能力が限られている」との見方を示し始めた。中国紙『経済日報』を含む一部の国内メディアは、三峡プロジェクトは長江流域での洪水防止システムの一部にすぎず、「万能ではない」と主張した」

 

中国メディアが、しだいに三峡ダムの堅固性について、自信が持てなくなってきた様子が分る。

 

(2)「三峡ダムの総貯水量は393億立法メートルで、洪水調節総容量が221.5億立方メートル。しかし、ダム上流の通年の入水量は4500億立方メートル。洪水調節総容量は、上流入水量の5%にも満たない。今年6月29日以降、三峡ダムは複数回、水門を開き放水を行った。米スタンフォード大学フーヴァー戦争・革命・平和研究所(以下はフーヴァー研究所)のマイケル・オースリン研究員は、VOAに対して、三峡ダムだけでは深刻な洪水を抑制できないと指摘した。豪雨が続き、長江上流地域にある古い小型ダムが故障すれば、「壊滅的な」事態が起きる

 

三峡ダムの洪水調節総容量は、上流入水量の5%にも満たないことが判明した。三峡ダムだけでは深刻な洪水を抑制できないわけで、長江上流地域にある古い小型ダムが決壊すれば、「壊滅的な」事態が起るという。そのリスクが、大きくなっているようだ。

 


(3)「長江流域の洪水問題を研究する米アラバマ大学のデイビット・シャンクマン地理学教授は同様に、三峡ダムは「今年のような大洪水に対応できない」とした。シャンクマン教授は、「三峡ダムの洪水抑制総能力は、ダム下流と長江中流地域の洪水抑制総能力のわずかな一部だ。一部の洪水を貯水できるが、今深刻な状況では役に立たない」と話した」

 

このパラグラフの結論は、(2)と同じである。

 

(4)「マイケル・オーリンス氏は、水害や三峡ダムに関して、中国当局の透明性が欠けているとの認識を示した。「中国当局が、三峡ダムのリスク、同ダム上流に位置する小型ダムのリスク、住民の避難措置、食糧や電力の保障について情報開示ができるか、透明性を持つことができるかが最大な問題だ」。三峡ダムの洪水抑制能力への疑問が強まるにつれ、同ダムの潜在的な危険についての懸念も拡大した。新華社通信は718日、同ダムに「変位、漏出、変形」が見られたと異例に報じた。報道は具体的な数値を示さなかったが、国内外では三峡ダムの決壊に関する危機感が一段と強まった」

 

中国政府は、「ウソ情報」ばかり流さず、具体的なリスク情報を示すべきである。その方が、「万一」の事態においてリスク軽減に役立つからだ。

 

(5)「人民日報傘下の「中国経済週刊」は、中国工程院の王浩・院士らの話を引用して、内外の疑念を払しょくしようとした。王院士は「洪水防止能力は、水に浸かれば浸かるほど、100年内にかえってますます頑丈になる」と話した。中国水力発電工程学会の張博庭・副事務局長は「仮に、原子爆弾が直接ダムに命中したとしても、せいぜい大きな穴を開けるくらいだ」と述べた」

 

下線部は、完全なウソ情報である。

 


(6)「米国の専門家は、王院士らの見方を否定した。カリフォルニア州にパシフィック・インスティテュート」の所長で水文気候学の専門家であるピーター・グリック氏は、「ダムは、時間の推移につれて頑丈になることがない。ダムが建設完了の時にその構造が決まった」と強調した。また、同氏は三峡ダムが原子力爆弾に攻撃されるのが「出まかせだ」と批判した。グリック氏は、「大型ダムによる環境への破壊を認識したため」、一部の国の政府が大型ダムの撤去工事を進めていると反論した」

 

ダムは、時間の推移につれて頑丈になることがない。ダム建設時に、その構造によって「寿命」が決まるという。中国の「非良心的」専門家は、中国指導部の顔色を見て、ウソ情報を流すから気を付けねばならない。世界では最近、大型ダムが環境破壊に大きな影響を与えていることから撤去されているという。三峡ダムは、前世紀の遺物に成り下がってきた。

 

(7)「オーリンス氏は、今年の大洪水は「文化大革命以来、中国共産党が直面した最大の課題だ」と指摘した。党と政府は、『三峡ダムが安全だ』と国民に強調しているが、治水が失敗し、ダムの安全性に問題が起きれば、党の統治の合法性に最も致命的な打撃を与える。これにより発生する経済損失や農業生産問題などで、中国で抗議活動や反体制デモが起きるからだ。三峡ダム問題は共産党政権が最も懸念している『ブラックスワン(めったに起こらないが、壊滅的被害をもたらす事象)』であろう」。

 

このパラグラフは、極めて重要である。三峡ダムの崩壊が起これば、中国共産党に致命的な打撃を与えるという。新華社通信はこのほど、8月中旬にも三峡ダム地域では少なくとも2回の大雨に見舞われると伝えた。長江流域における中国当局の治水能力が依然に問われているのだ。