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中国は、転んでもただで起きない逞しさを見せている。新型コロナウイルスでは、「マスク外交」を展開して、中国がいち早くコロナからの回復をアピールした。だが、粗雑なマスクを贈ってひんしゅくを買う場面も多かった。これに懲りず、今度は、「ワクチン外交」を始めた。最終治験を終わる前から、各国へ供給約束をし始めたのだ。これまでの約束を合計すると、生産能力をはるかに上回って35億人にもなるという。すでに、「ワクチン空手形」が話題に上っている。

 

『中央日報』(8月27日付)は、「ワクチン提供する、と世界に『空手形』飛ばす中国、生産能力は大きく不足」と題する記事を掲載した。

 

中国が「マスク外交」に続き「ワクチン外交」でも物議を醸している。中国は新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大した2月から各国にマスクと防護服など医療物資を送る「マスク外交」を積極的に展開した。

中国の「善意」にもかかわらず、この「マスク外交」は中国の医療製品の品質問題と、受恵国が中国に感謝を表明しなければならない負担感などが指摘され、むしろ中国に対する反感を育てる逆効果を生んだ。最近では中国が指導者を中心に各国に優先的にコロナワクチンを提供するという「ワクチン外交」を活発に展開している。だがこれが果たして中国の意図通りにできるのか疑問との指摘が出ている。

 

(1)「中国の李克強首相は24日に開かれた「瀾滄江・メコン川協力」第3回首脳テレビ会議で「中国がコロナワクチン開発を完成させ使うことになればメコン川流域諸国に優先的に提供するだろう」と宣言した。李首相はまた、中国主導で公衆保健専門基金を設立し、メコン川流域諸国に防疫物資と技術支援をすることとも約束した。これによると今後中国が約束を守る場合、恩恵を受けることになる国はカンボジア、タイ、ミャンマー、ラオス、ベトナムの5カ国に達する」

 

中国首脳は、海外で「挨拶代わり」にコロナワクチンの供給を約束して歩いている。優越気分に浸って、「お大尽様」になっているようだ。

 

(2)「香港紙『明報』は26日に、中国指導者によるワクチン提供の約束は李首相が初めてではないと報じた。6月には習近平国家主席が中国・アフリカ防疫団結テレビ会議で「中国がワクチンを開発すればアフリカ諸国に率先して恩恵が行くようにする」と話した。中国のワクチン提供の約束はこれだけではない。中国の同盟国であるパキスタンには早くから4000万回分のワクチンを供給すると確約した。また、王愚駐アフガニスタン中国大使は今月中旬にアフガニスタンのメディアに中国でワクチンが開発されればアフガニスタンにまず提供するとの意向を明らかにした」

 

習近平氏は、6月アフリカ諸国へのワクチン供給を確約した。

 

(3)「王毅国務委員兼外交部長は、7月に開催された中国、アフガニスタン、ネパール、パキスタン4カ国外相テレビ会議で会議参加国に対して、中国のワクチンが容易に提供されるようにすると話した。またフィリピンのドゥテルテ大統領は米中対立状況で米国に軍事基地を提供しないと発表した後、中国のワクチンがフィリピンに供給されることを望むとの意向を明らかにしており、これは中国の肯定的な反応を得てもいる。中国はこのほかにも中国のワクチン開発会社が第3相臨床試験を進めている国に対してもワクチンを優先提供しないわけにはいかない立場だ」。

 

王毅外相も負けない。アフガニスタン、ネパール、パキスタンの近隣国へワクチン供給を約束している。フィリピンでは、ワクチン欲しさに米軍との間に距離を置くとまで言い出す始末。ここまで、相手国をその気にさせてしまい、「実は、供給できません」と言えば、大変な外交問題になろう。中国は、そういう「空手形」になったときの反動を計算していないのだ。

 


(4)「『明報』は、このように中国がワクチン優先提供を約束している国の人口を、概算でアフリカが12億人、メコン川流域5カ国が2億6000万人、ブラジルとパキスタンが2億人、ここにメキシコとフィリピンなどの人口を加えると20億人に達するとした。そして中国の人口14億人を加えると中国がワクチンを優先的に提供しなくてはならない人口は35億人となり、世界の人口75億人のほぼ半分を占める。しかし中国のワクチン生産能力はせいぜい来年まで4億回分程度で極めて不足した状況になるという話」だ。中国が、ワクチンの独自開発が難しい国に「ワクチン優先提供」という空手形を飛ばしているのではないかとの指摘が出ている」

 

中国は、自国人口14億人を加えると、ワクチンを優先的に提供しなくてはならない人口が35億人となる。実に、世界人口75億人のほぼ半分を占める計算だ。どう見ても、実現不可能である。「空手形」は必至である。その時、どう弁解する?