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新型コロナウイルスの原因究明に当っているWHO(世界保健機関)は、中国へ調査団の先遣隊2名を送ったが結局、現地の武漢市入りができなかった。中国が、承認しなかったのであろう。あくまでも現地での原因調査を阻み、「中国賠償責任論」を回避する積もりだ。

 

これが、国連の5大常任理事国の振る舞いである。不利なことは徹底的に回避して責任を取らないで逃げ切ろうという算段であろう。トランプ大統領の選挙公約では、中国にコロナウイルスの責任を完全に取らせると明記している。それだけに中国は、WHOの正式調査を何が何でも逃げおおしたいに違いあるまい。この国が、世界覇権を狙っているのだ。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(8月28日付)は、「WHOのコロナ調査チーム、武漢入りせず」と題する記事を掲載した。

 

世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの発生源の究明に向けて中国に派遣したチームが湖北省武漢市に入っていなかったことが明らかになった。中国政府の調査に対する姿勢に西側諸国の懸念が強まりそうだ。

 


(1)「先ごろ、WHO2人組のチームが3週間訪中したが、その間ふたりは2019年12月に新型コロナ感染が初めて確認された武漢には入らなかったとWHOが認めた。WHOは、このチームは本格的な国際調査団を派遣する準備をしただけとしているが、大型調査団が武漢入りするのかどうかは明言していない。「WHOの派遣チームは3週間、北京にとどまり、武漢の近くには行かなかった」と、ある米政府高官は、フィナンシャル・タイムズ(FT)紙に、「決定的証拠を見つける機会が失われた」と語った」

 

新型コロナウイルスの発生源特定は、時間が経てば経つほど困難になろう。中国は、それを狙っているのだ。これから起こるだろう中国への賠償責任追及を、法的に回避する道を探っているに違いない。それには、決定的な証拠を握られないこと。あくどいやり方である。

 

(2)「米政府高官は、(派遣チームが武漢に行かなかったことが)本当だとすれば、世界の公衆衛生を保全すべき立場にあるWHOの問題事例がまた1つ増える。この感染症流行の極めて重要な初期段階において、世界の保健という公益よりも一加盟国への政治的配慮を優先したことになる。我々は今、その政策の大きな代償を背負わされている」。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は当初、80万人を超える死者を出している感染症の発生源の調査を求める豪州や米国などの声にいらだちを示していたが、5月にはWHO主導の調査を支持する考えを示した。「この動物由来ウイルスの起源と人間への感染経路を特定する」とするWHOの決議は世界130カ国以上に支持された。しかしこの決議には、透明性とアクセスの点で懸念がつきまとっている」

 

世界130カ国以上に支持された、「この動物由来ウイルスの起源と人間への感染経路を特定する」とするWHO決議は、中国によって反古にされようとしている。しかし、世界は何もできない。これほど無力なWHO決議があるだろうか。中国に掣肘を加える方法はないのか。歯がゆい思いである。

 

(3)「この件について、WHOは先週、「WHO2人組のチームが先般、ウイルスの起源に関する調査の下準備のために中国で3週間の任務を終えた。本格的なミッションに先立つ役割であり、共有すべき『ミッションの成果』はない」とした。ヤンゾン・ファン米外交問題評議会シニアフェロー(グローバルヘルス担当)は、信頼度の高い調査結果を得るためには、調査チームは武漢や南西部の雲南省など中国各地でどこにでも自由に立ち入る必要があると指摘する」

 

WHO調査団は、自由に中国国内を調査する権限が与えられていないのだ。あくまでも、現地国の「政治的立場」に左右されるとすれば、WHOの権限を強化するほかないだろう。

 

(4)「ファン氏は、「調査が純粋に科学的な試みになることを期待するのは現実離れしている」と言う。中国の機嫌を取ると同時に公正な科学的調査の体裁を確保するために、WHOはウイルスの起源となった動物の特定に専念し、公衆衛生上の失策には立ち入らない可能性があると同氏は指摘する。WHOは今週、FTの取材に対し、先遣チームが武漢ウイルス研究所の上級研究者らとオンラインで対話したことを明らかにした。武漢の市場周辺と最初の集団感染について、数週間から数カ月のうちに予備的な疫学調査を実施することで中国側と合意したという

 

中国は、「数週間から数カ月のうちに予備的な疫学調査を実施することで合意したという。この予備的な疫学調査の期日を曖昧にしている理由は、コロナ発症の痕跡を消してしまうための時間であろう。

 


(5)「新型コロナの発生源となった動物を調べる研究者は、中国南西部に生息するキクガシラコウモリが発生源である可能性が高いとみている。このコウモリは、新型コロナの遺伝子配列と96%一致するウイルスを保有していたことがわかっている。しかし、それがどのような形で人間に感染したのか、解明はほとんど進んでいない。おそらく別の動物が中間宿主として媒介したと考えられている。「ゼロ号患者(最初の感染者)」についてもまだ答えは出ていない。中国国内でのいくつかの研究によると、最初期の患者には、感染源となった疑いのある武漢の市場と接点のなかった人たちも含まれている」

 

下線分が疫学的にもっとも重要な部分であろう。コウモリのウイルスが、どうやって人間に感染したか。そのもっとも大事な点の調査が、中国によって妨害されている。それが、解明されれば、中国責任論を補強できる。この肝心な点を調査させず、逃げ切りを狙っているのだろう。トランプ氏でないが、「中国に責任を取らせる」という気持ちは分るのだ。