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世界で「投資の神様」とされる、ウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハザウェイは8月30日、日本の5大商社の株式をそれぞれ5%超取得したと発表した。バフェット氏はこれまで、なぜか日本株に関心を示さずにきた。その氏が、1年前から三井物産、三菱商事、伊藤忠商事、住友商事、丸紅などを買い集めてきたもの。将来、10%まで買い進む意向も発表した。

 

日本の5大商社が、揃って投資対象になったのは「バリュー株」(資産・収益に見合わない安値株)として、市場の人気圏外に置かれたからだ。バフェット氏の目から見れば、「宝物」が放置されている感じなのだろう。日本企業の内部蓄積が多いことも評価されたに違いない。

 

『ロイター』(8月31日付)は、「米バークシャー、日本の5大商社株約5%取得、市場に驚きの声」と題する記事を掲載した。

 

バークシャー傘下のナショナル・インデムニティが8月31日に財務省関東財務局に提出した大量保有報告書によると、伊藤忠商事株式の5.02%、丸紅5.06%、三菱商事5.04%、三井物産5.03%、住友商事を5.04%、それぞれ取得した。バークシャーの発表文によると、約1年間かけて取得したという。長期保有を意図しているとした上で、保有率を最大9.9%に引き上げる可能性があるとした。

 

 

(1)「8月30日に90歳の誕生日を迎えたバフェット氏は、「日本の未来にバークシャー・ハザウェイとして参加することは喜ばしい」と表明。「5大商社は世界各地に合弁事業が多数あり、今後さらに増やす公算が大きい。将来的に相互に有益な機会があることを望む」とした。三井物産の広報担当者は、バークシャーが長期保有を目的に同社株を取得したことは承知しているとした上で、「当社は常に、すべての株主のリターン改善を目指している」と述べたが、それ以上のコメントは控えた。丸紅の広報担当者は、特定の投資家の株式保有についてはコメントしないと述べる一方、「企業価値を高めるための経営努力を続ける」との方針を示した」

 

下線部が、バフェット氏の日本5大商社への投資理由である。商社ゆえに国際的な視野で多角的投資をしている。その投資先が今後、発展すれば膨大な利益が上げられるというのが、バフェット氏の読みであろう。世界のバフェットが、長期的視点で世界と日本を見定めていることは疑いない。

 


『ブルームバーグ』8月31日付)は、次のように指摘している。

 

「バークシャーが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の先に目を向け、世界の成長に賭けている可能性が高いことを示していると、アシンメトリック・アドバイザーズのシニアストラテジスト、アミール・アンバーザデ氏は指摘する」

 

「同氏は、「シクリカル(景気循環)的性質が非常に強い日本市場を考えると、バフェット氏は景気サイクルが底を打とうとしていると見込み、パンデミックの先を見据えていることを示していると思われる。「バリュー株がアウトパフォームし始めれば、(世界の)投資家は日本株に注目し始めるだろう。これはバフェット氏の投資以上の大きな変化となるだろう」と語った」

 

日本株に、世界のフットライトが当てられていることは間違いない。新しい時代の到来であろう。

 

(2)「今回の投資によってバークシャーは、米経済への依存度を低下させることになる。米国の第2・四半期の国内総生産(GDP)は、1947年の統計開始以来、最も大きな落ち込みとなった。バークシャー傘下の事業会社の多くは苦戦しており、今月発表した第2・四半期決算では、航空機部品メーカー、プレシジョン・キャストパーツに関連した評価損98億ドルを計上。傘下事業は鉄道や自動車保険など90以上に上る」

 

バフェット氏は、傘下に多くに事業会社を抱えている。これら事業と日本の5大商社とのコラボの夢を描いているのだろう。

 

(3)「このほか、投資目的で米アップルやクレジットカードのアメリカン・エクスプレス、バンク・オブ・アメリカ、コカ・コーラなどの株式を1250億ドル(6月末時点)相当保有する。傘下事業の大半は米国にあるが、イスラエルのIMCインターナショナル・メタルワーキングや独オートバイアクセサリー小売りのデトレフ・ルイスなど少数の外国企業も買収している。マネックス証券のチーフ・ストラテジスト、広木隆氏は、バークシャーのポートフォリオにアップル偏重の感が出ており、バフェット氏はアップルと真逆な投資先を探していたとの見方を示した

 

日本の5大商社は、多角的な投資先を抱えている。バフェット氏は、それらの投資先を組み合せれば、いかようにも事業計画が練り上げられるに違いない。奇想天外な計画を忍ばせているのだろう。

 

(4)「バフェット氏が投資したと発表されると、その株は上昇することが多い。8月31日の東京株式市場で丸紅と住友商事は9%超上昇、三菱商事と三井物産は7%超上昇し、伊藤忠は4.2%上昇し上場来高値を更新した。とは言っても年初来で上昇しているのは5社中、伊藤忠だけ。丸紅、三菱商事、住友商事は10%程度下落し、TOPIX(6%)よりきつい下げになっている。株価が簿価を上回っているのも伊藤忠のみ。その点でバフェット氏のようなバリュー投資家のお眼鏡にかなったともいえる。5社は潤沢な手元資金を持つ。リフィニティブのデータによると、三菱商事は1株当たりのフリーキャッシュフローが4年間増え続けている。商社は鉄鋼、海運、コモディティー(商品)などの分野を通じて実体経済に深く関与している。理解できない事業には投資しない主義のバフェット氏にとって、商社はわかりやすい投資先に映ったとみられる」

 

バフェット氏は、日本株に照明を当てた「大恩人」である。日本経済が、潜在的発展力を開花できる機会になれば、「絶好のチャンス」到来と言うべきだ。